喫煙歴のある気腫合併肺線維症(CPFE)の男性。左下葉腫瘤を区域切除し、腺扁平上皮癌( Stage IB)と診断された。術後経過は良好だったが、手術から3週間後に呼吸苦で受診。CTで左肺にスリガラス影、SARS-CoV-2抗原陽性、低酸素血症もありCOVID-19肺炎と診断し再入院。レムデシビル、抗菌薬、ステロイドパルス療法などを行うも、肺病変が進行しDICも合併し、各治療に反応せず入院14日目に死亡した。(※TNMのコードはICD-11ブラウザに収載されていないのでコード不要)
喫煙歴がある肺線維症(CPFE)の男性.左下葉の腫瘤影を指摘され、気管支鏡検査を実施するも確定診断が得られず,肺がんの可能性が否定できないため外科紹介. CPFE合併のため、VATSによる左下葉部分切除(区域切除)施行.経過は良好で退院となった.術後病理診断はpTNM:T2aN0M0 Stage IB (腺扁平上皮癌)であった. しかし約3週間後に呼吸苦を主訴に時間外受診した。CTで左肺にスリガラス影を認、SARS CoV 2抗原が陽性であり、低酸素血症もみられたことからCOVID 19肺炎と診断し入院となった。入院後はレムデシビルを開始したが、入院5日目に左肺に新たな浸潤影・網状影が出現し、セフトリアキソンを開始した。入院6日目には間質性肺炎の増悪がみられ、ステロイドパルス療法を導入するとともに抗菌薬をメロペネムへ変更した。入院8日目に呼吸不全が進行し、気管内挿管・人工呼吸器管理となった。COVID19が遷延している可能性があり,PCR検査も実施したがCt値は30以上でありSARS-CoV2ウイルス量は低下していたため感染は収束していた.生体反応として炎症が持続増悪し多臓器不全となった.呼吸不全はCPFEの急性増悪(間質性肺炎の悪化)が関与していると考えられた.入院10日目に血小板減少が出現し、血小板輸血およびリコモジュリン投与を行ったが、入院13日目には血小板が1万/µL台まで低下し貧血も進行したため、濃厚赤血球を輸血し、DICの改善が得られないためアコアランを追加した。各治療に反応なく全身状態は悪化し、入院14日目に永眠された。
CPFE(Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema:気腫合併肺線維症)は、気腫と肺線維症の合併疾患
COPD+IPF
間質性肺炎が進行して肺線維症になる (慢性肝炎から肝硬変のイメージ)
肺の上部に肺気腫(気腫性変化)があり、肺の下部に肺線維症(間質性肺炎)が合併している病態。
この病名は、主にCT画像所見に基づいて診断される症候群。
進展度
がんと診断された時点における病巣の広がりを、
上皮内がん(がんが表層にとどまり、他臓器へ浸潤・転移する可能性のないもの)、
限局(がんが原発臓器に限局しているもの)、
所属リンパ節転移(原発臓器の所属リンパ節への転移を伴うが、隣接臓器への浸潤がないもの)、
隣接臓器浸潤(隣接する臓器に直接浸潤しているが、遠隔転移がないもの)、
遠隔転移(遠隔臓器、遠隔リンパ節などに転移・浸潤があるもの)に分類。
参考)国立がん研究センター「がん情報サービス」の用語集
RA01.0/CA40.1Y&XB22&XK8G&XN109/3B20 / CB03.1/2C25 & XH7873 & XA2UD3 & XA7L34 & XS0E
ウイルス同定されたCOVID19 / ウイルス性肺炎 & 市中肺炎& 左側 & SARS-CoV-2 / DIC / CPFE / 肺癌&腺扁平上皮癌&左肺&下葉&限局
- 🫁COVID19肺炎のバリエーション
RA01.0/ CA40.1Y&XN109
RA01.0&XN109/CA40.1Z
ウイルス同定されたCOVID19/ウイルス性肺炎
RA01.0/CA40.1Y/QA00.C←抗原検査陽性
RA01.0/CA40.1Y/QC05.0←培養陽性
- 🫁肺癌のバリエーション
QC40.1&XA2UD3&XA7L34&XH7873&XS0E
肺切除後/左肺/下葉/腺扁平上皮癌/限局
肺癌の手術後3週間以内の呼吸苦であり,肺炎のみならず間質性陰影も増悪していることから基礎疾患のCPFEの急性増悪の関与も考えられる.また手術の入院から間もないため一連の病態として扱うかも考慮する. 疑義はできるだけ担当医に確認する.
🫁RA01.0&XN109/CA40.1Z&XB22&XK8G
RA01.0 COVID-19, virus identified
Infectious agent
XN109 SARS-CoV-2
Has manifestation
CA40.1Z Viral pneumonia, unspecified
Causality
XB22 Community acquired
Laterality
XK8G Left
ウイルス性肺炎 と 肺癌 と DIC と CPFE はそれぞれ別途検索が必要
中級コーディングルール 最も主要な病態のステムコードのブラウザからクラスターコーディングできる
上級コーディングルール サマリー内容を全てクラスターコーディングできる (マニュアルコーディングを含む)
国内コーディングルール 周術期やがん治療中のコーディングについてのルールがあると良い
①初回治療中のステムコードは肺癌にする(手術を実施した記録はICHIで表す)←→②肺切除後を表すステムコードを用いる
がん治療中のコーディングについて①,②のいずれにするか検討必要
プロポーザル RA01.0&XN109/CA40.1Y&XN109 → ブラウザの機能でいずれかのXN109が削除されると良い
プロポーザル DICのステムコードからも原因疾患がクラスターコーディングできると良い
プロポーザル TNM分類もコーディングできると良い?
手術や検査をICHIでコーディング可能
特に本症例では手術についてコーディングする意義は大きい.
「間質性陰影を持っている患者に肺癌の手術をすると急性増悪する可能性は〇%」というデータはがん患者と家族にとって非常に意義がある.
介入とその結果を記録することは重要である.
各ケースの臨床医による判断(手術と死亡の因果関係の有無の判断)ではなく,客観的事実を悉皆性をもって収集することが可能.
因果関係の有無に関わらず発生した事象が集計可能となる.