・千葉県以西の本州、四国、九州の低地からブナ帯まで広範囲に分布する。
・体長3.5~4.0mmで、林床の朽木や石下および落葉落枝中に生息する(鈴木,1986) 。
・背甲第2区にトゲのような構造を持ち(鈴木, 1973)、この構造には地理的変異がある。また、鋏角の大きさに二型性があり、大型の雄と小型の雄の比率も地理的に異なることが知られている(Tsurusaki and Fujikawa, 2004) 。
・本種のみでPseudobiantes属を形成する。
・触れると薬品臭のする乳液を出すが、塩素のような臭いで舐めると舌が痺れるような感覚があった。試しに小型のカエルに捕食させたところ、咥えた瞬間に吐き出していた。やはり防御としての機能と考えられる。しかしある程度サイズの大きいカエルだと一瞬でまる飲みにされてしまったため、小型の捕食生物に対しては有効なのかもしれない。
・鎌状の蝕肢により、小型の生物を積極的に捕食する。飼育下ではシロアリやアブラムシも捕食したが、別に鰹節でもドッグフードでも食べる。
ミズゴケに産みつけられた卵
2010.5.23撮影
2010.5.23撮影
2010.5.28撮影
生まれた幼体
体長は1㎜にも満たない
Kumekawa et al.,2014およびその後の調査で推測される系統と分布の簡略図。
隠岐諸島は未調査であるが、分布の状況から西日本型が分布している?
八丈島や伊豆大島も未調査である。
どこかの系統に含まれるのか新しい系統となるのか興味は尽きない。
・主に四国東部~中部に分布。
・眼丘上のトゲは東海型や九州型と比べて短く、背甲第2区に顆粒を持つものが多い。
・高知県東南部周辺にはトゲのように見える個体も出現する。
・西日本型とは四国中央部付近で同所的に分布する地点が存在するが、雑種個体が発見されなかったことから両系統間で生殖的隔離が成立している可能性がある。
・西日本型とは外部形態でほとんど差が見られない。
・主に近畿北部、中国地方、九州北部、四国西部~中部に分布。最も分布範囲が広い。
・眼丘上のトゲは東海型や九州型と比べて短く、背甲第2区は滑らかな個体が多い。
・眼丘上のトゲは他の遺伝子型と比べて短い個体も見られる。
・四国東部型とは四国中央部付近で同所的に分布する地点が存在するが、雑種個体が発見されなかったことから両系統間で生殖的隔離が成立している可能性がある。
・四国東部型とは外部形態でほとんど差が見られない。
・主に近畿・中部地方南部、東海地方南部に分布。
・眼丘上のトゲは西日本型や四国東部型と比べて長く、背甲第2区には明瞭なトゲを持つ。
・房総半島や伊豆諸島でも本種の分布が報告されているが、どの系統に属するかは不明。
・東に行くにつれて個体数が少なくなるように感じる。
・主に九州中部~南部に分布。
・眼丘上のトゲは西日本型や四国東部型と比べて長く、背甲第2区には顆粒を持つ。
・全体的に他の系統と比べて大型な傾向が見られる。
・系統的には四国東部型、西日本型、東海型のグループではなく、別属のオオアカザトウムシEpedanellus tuberculatus やシマアカザトウムシKilungius insulanus のグループに属する。
・九州中部で西日本型と分布が接しているが、系統的に近い四国東部型と西日本型で生殖的隔離が成立しているとなると、九州型と西日本型との間でも生殖的隔離が成立している可能性が高い。