高性能アンプを支える強力な独立電源ユニット
▲ 左から「L-08CPS」「L-08PS」「KA-1000PS」。3台の大きさは全く同じで、色・形などデザインは統一されている。1000PSだけ前面下段がガラス板で、赤いLEDパワーランプがガラス奥に置かれている。
高さ、幅、奥行き共に、L-08CPS,L-08PS,KA-1000PS(左から順に)はどれも全く同じ大きさである。
L-08CPS,L-08PSとKA-1000PSなどのプリメインアンプ電源との違い
L-08CPS,L-08PS,KA-1000PSの3台は、どれも電源トランスユニットが入っているのだが、L-08CPSはコントロールアンプ(プリアンプ)L-08Cのマルチ電源対応の強化電源トランスが複数内蔵、L-08PSは、モノラルパワーアンプL-08Mと同等の巨大トランスが1つ入っている。これら2台の目的はあくまで「強化電源」である。これが無くてもL-08C,L-08Mは単体で強力な電源を内蔵しているので稼働する。
L-08CPSはL-08C1台に1台を接続するのに対して、L-08PSは接続するL-08Mがモノラルパワーアンプなので、左右2台のL-08Mを強化する必要があるので、L-08PSも2台単位で増設することになる。さらに面白いのは、デイジーチェイン方式で同型のL-08PSを直列に増設できるように設計されているところだ。下段で写真にあるように、L-08PSの背面に増設端子があるのが特徴で、2台増設にさらに2台を増設(計4台)、さらに2台(計6台)、さらに…と電源を上乗せして強化できる。
最後のKAー1000PSだが、これはKA-1000本体のトランス電源部であり、左右独立した専用のトランスが2個入っている。デザインとしては同じケースのKA-1000PSであるが、L-08PSやL-08CPSのような「強化補助電源」とは異なる。KA-1000PSがKA-1000本体から分離した目的は、振動するトランスを微小信号を扱うKA-1000本体のアンプ回路から遠ざけるためである。
KA-1000PSのようにトランス電源部だけを分離するのは、トリオの高級プリメインアンプに前例がある。Lシリーズ最初のプリメインアンプ、L-01AとL-01APSである。ほかには、KA-1000の後に登場するL-02AとL-02APSだ。Lシリーズのプリメインアンプに用意された別個体のPSと付く電源トランス部は、あくまで本体とセットであり、PSがないとアンプ本体は稼働しない。同様なケースは、他のメーカーでもプリアンプの電源トランスを分離している例はある(SONY TA-ER1や、DENON PRA-S1、どちらも100万円超えの超高級プリアンプ )。いずれも本体とセットであり、08のPSシリーズのように本体に電源あって、さらにそれを強化する電源を用意するのは、非常に珍しいといえる。
L-08CPSの接続端子
端子数は20。マルチ電源を供給するためピン数も多めになっている。L-08C側には増設端子がないため、下のような増設端子が同梱されている
同梱の増設端子にはケーブルがハンダ付けされている。写真はL-08C側に増設する増設端子と同型端子。
▲ L-08CPSの背面
背面は右のL-08PSとほぼ同じだが、「ADDITONAL POWER SUPPLY」端子がない。型番の下には「POWER APPRATURE FOR L-08C(L-08C専用の電源装置)」と書いてある。
L-08PSの接続端子
端子数は8。L-08Cとは異なり、シンプルな電流段トランスの強化が目的。より強力に電流を供給できるようになる。L-08PSの大きな特徴に、PSをデイジーチェイン方式で何段も追加強化できる点だ。
▲ L-08PSの背面
左上にある「ADDITONAL POWER SUPPLY」端子を使って、デイジーチェイン方式でL-08PSをさらに上乗せ接続できる(L-08Mにも同じ端子があり、最初の1台目の08PSをつなげる)。理論上は無限に繋いでいける訳だが、パワー値には上限があり、3台の08PSで250Wまで出力アップができる(それ以上はつなげても出力はアップしない)。
左右で250W+250Wにするには、(L-08M+L-08PS×3)×2=8台構成になる。コンセントの数だけでも、パワーアンプだけで8個、これにL-08C+L-08CPSを繋げると、08アンプに必要なコンセント数は10にもなる!(プリメインアンプなら1つだから10倍!)ここまでコンセントが多くなると、電源アース対策をしてある「シグマ接続」は必須になるだろう。
KA-1000PSの接続端子
端子数は16。KA-1000側に凸ピンがある。左右2CH分なので、L-08PSの2倍のピン数となる。1000PSは強化電源ではなく、KA-1000本体の電源ユニットとして働く。よって、電源コンセントはKA-1000PSだけにあり、この端子で本体をつなぎ電源を供給する(KA-1000本体に電源ケーブルはない)。
これに対して、L-08C,L-08Mは本体にも電源ケーブルがあり単体で稼働できる。これらプリアンプとパワーアンプは単体でも十分余裕のある電源トランス(L-08Mは単体でもダブルトランス)を持っているからだ。
▲ KA-1000PSの背面
KA-1000PSはKA-1000の電源ユニットであるから、単体の装置ではない。よって、左の2台のようなシリアルナンバーがない(シリアルナンバーはKA-1000本体にある)。この中に左右独立した2つのトランスが入っている。また、電源コンセントは左の2台と異なり4つある(L-08系PSは一つずつ)。
L-08CPS,L-08PSの強化電源の問題点、接続端子の「弱さ」
CPS,PSといった08シリーズの強化電源は素晴らしい機器なのだが、この機器を実際に使用するにはリスクがあった。
そのリスクとは「接続コネクター」の弱さにある。シグマ接続端子はネジ式を採用する慎重さがありながら、PSシリーズの電源強化端子にネジ式を採用せずに、着脱が簡単なロック型コネクターを採用していたからだ。このコネクターはケーブルにそれなりの衝撃が加わると、端子がズレたり、外れたりすることがままある。接続コネクターの接続がゆるくなって、複数あるピン端子の接触があまくなると、大電流を扱う電源ユニットだけにトラブルになってしまう。
実際にL-08CにL-08CPSを接続して使用していたときに、この接続ミスによるトラブルがあった。大電流を扱う電源ユニット端子は、確実に固定できるネジ式であるべきだった。背面端子を確実にネジで固定させる方式であれば、実際に使用するユーザーとしては安心できただろう。