システム全体をΣ結線。単体性能がスピーカー入力端子で100%発揮される
L-08Mの影に隠れた銘機。TRIOの最高DF値をもつ、もう一台のパワーアンプ
シグマドライブの開発機であるL-06M。モノラルパワーアンプとして登場したL-08Mと同じDDAS型シグマドライブアンプである。DF(ダンピングファクター)20000という数値は、同シリーズL-08Mと同等。1台65,000円とはいえ超高級プリメインアンプ、L-02Aのスペック(10000)の2倍になり、TRIO-KENWOODのアンプで最高値。07シリーズのL-07Mに対してL-05Mと同じ下位互換機的な存在であるが、L-06Mは性能が高くコストパフォーマンスが優れた機器である。
形がから見ればL-06Mは、07シリーズのL-07MIIに近い。しかし、L-07MIIはケースにヒートシンク型のパーツを組み込み、そこにパワートランジスターを直付けして放熱対策をしている。これはケース全体が巨大なヒートシンクであるL-08Mと同じく、放熱対策がケースに施されている。L-06Mにもハニカム形状の放熱孔を組み込んでいるとはいえ、ケースにヒートシンク形状を採り入れていない。このあたりは06が、07シリーズの下位のパワーアンプL-05Mと近いといえる(事実、07のシリーズの05が、08シリーズの06だ)。
しかし、L-06Mのハニカムデザイン、単体のアンプ性能、08Mには及ばないにしても、TRIOのアンプの中で最大のDF=20000を誇るDDAS型シグマドライブ構成で組めるアンプであり、独自の魅力と性能を秘めている。
美しいハニカム構造を採り入れたデザイン
直方体のアルミニウムの箱に、ハニカムデザインの排熱口を上面前半部分に配置させたシンプルだがどこか未来的なデザインになっている。背面を除けばケースすべてが非磁性体で構成(底面はバーティクルボード)され、L-01Aから継承されているノンマグネティック理論に従って、徹底的に磁性体を用いない素材で構成されている。
ヒートシンクをデザインに採用していないとはいえ、排熱性とデザイン性を両立している。L-08Mのデザインは、従来にはない機能美を兼ね備えた挑戦的なデザインを採用したのに対して、L-06MはL-07MやL-07M2と同じく直方体をベースにしている。これだけならよくあるモノラルパワー・アンプであるのだが、各ハニカムの内側にもう一段、正六角形を組み込んでいる加工が美しい。構造美しさを最大限に表現したL-06M。コストとデザイン、そして性能が非常に良いバランスがとれたモノラル・パワー・アンプである。
写真左下にある「Σ senser」がシグマドライブをオンオフできるスイッチである
DF=20000のDDAS型シグマドライブ・モノラルパワーアンプ
TRIOのアンプの中にあって、最大のDF値=20000を誇っているのはL-08Mと、このL-06Mだけである。モノラルパワーアンプという特性を最大限に活かして、左右のSPに傍にパワーアンプを配置することで、SPケーブルを短くできる。これがDDAS(ダイレクト・ドライブ・アンプリファイア・システム、L-07世代から提唱された理論)型の最大の特徴である。
この接続には強力なプリアンプ出力(プリ出力のローインピーダンス化)が必要だが、L-08Cと純正シグマオーディオケーブルを使ったΣ接続で、通常結線の接続よりも、より高品質な信号伝送が可能となった。L-06MにはL-08Mと同様、純正Σオーディオケーブルとネジ接続できる「ネジ式金メッキ端子」が用意され、確実にΣ接続できるようになっている。
回路構成はL-08Mのように贅沢な回路と部品構成ではないし、L-08PSのような電源強化機能は省かれているが、DDAS型シグマドライブを構成できる貴重なパワーアンプである。設定価格がL-08Mの半分以下であったことからも、L-06Mのコストパフォーマンスは高い。
シグマドライブON/OFFスイッチ
L-06Mだけにある「シグマセンサーONOFFスイッチ」は、他のシグマドライブアンプにはない唯一のものだ。他のシグマドライブアンプ、例えばKA-1000やKA-900といったプリメインアンプでは、Aドライブがシグマドライブ固定、Bドライブが通常ドライブというふうに、2つのSPでのシグマドライブ機能のオンオフはあっても、L-06Mのような一系統のSPに対して、シグマドライブ機能をオンオフできるものはない。
-08M、L-06MはDDAS型モノラルパワーアンプなので、一系統のSPの近くにパワーアンプを設置するスタイルだ。つまり、DDAS型に二系統はありえない。07シリーズで始めたDDAS型を進化させたDDAS型シグマドライブ構成である以上、一系統のSPに対してシグマドライブをするか、しないか、しかない。
機能から見れば、ONOFF機能はあればシグマドライブの効果を比較できるので便利だ。一方で、音質上から見れば信号系路上に、スイッチなどの部品を入るのは避けるべきだ。フラップシップであったL-08Mでは音質を最優先させてこの機能は削除されている。一方で、下位のL-06Mではシグマドライブ停止スイッチを採用したところが、音質よりも機能を優先させている(L-08Mでもシグマセンサーケーブルを繋げなければ、通常のパワーアンプとして使用できる)。
L-08Mに引けを取らない性能
シグマセンサーONOFFスイッチがあるとはいえ、DDAS型シグマドライブを構成できるのは、L-06MとL-08Mしかない。DF=20000(SPケーブル3m先で15000)という数値はこの2機種だけである。
L-08Mと同じニュー・ハイスピード回路を採用し、オープンループゲインの最適化を図り、素直で歪みの少ない音を実現している。初段にカレントミラー回路、デュアルFETを採用し、周波数特性、ライズタイム、全高調歪率などの物理スペックだけをみれば、L-08Mに近い物理特性を持つアンプである。
L-08Mの説明でも述べたが、L-06Mはシグマドライブなしの通常結線接続でも、他のアンプに負けない音質を誇っている。Σドライブをオフにしても、基本性能が高いL-06Mの音質が劣ることはない(聴感上では大きく変わる)。
DDAS型シグマドライブ構成ができるモノラルパワーアンプ
シグマドライブでかつDDAS構成できるモノラルパワーアンプであるL-06M。できるなら、パワーアンプはチャンネルごとに分離できる方がいいので、L-06Mのようにモノラルパワー・アンプというのは電源から完全に独立しているので、コンセント数が増えることによる電源アース対策をとれば(L-08Cでは、シグマ接続と電源電流吸収回路で対策)、音質的に贅沢な構成である。ただし、アンプで3台構成(プリアンプ1、パワー・アンプ2)となるので、どうしてもコスト的には高くなってしまう。13万円のステレオパワーアンプと、6.5万円のモノラルパワーアンプ2台と比較した場合、前者の方がケースが共用でき、部品コストを上げることができる。
しかし、L-06Mは2台構成としつつ、SPの近くにパワー・アンプを設置する目的のためにDDASのスタイルにしつつ、CPを最大限に上げている。このパワーアンプを使うなら、L-08Cがベストであるが、L-07CIIのようにローインピーダンス出力をもつプリアンプとセットにして使用してもらい。L-06Mの魅力とCPの良さに驚くことになるだろう。