【景 観】小糸川河口部から富津岬までの,旧海岸線と埋立地の間にある横水路形式の人工水路である.富津付近は埋め立て時期が他の地域と比べて遅かったためか(1980年代),人工水路の川幅が非常に広く約70mある(写真1;他の人工水路は概ね10~20m程度).旧海岸線側は公園として整備されており(この公園も埋立地の可能性があり),護岸が1m程度と非常に低い(写真2).結果として,アカテガニが公園内の樹林地と行き来できる環境となっている(写真3).干潟面の底質は,護岸側は砂質であるが,河道に向かって泥質化していく.高潮帯の護岸に沿ってヨシ群落がある(写真4).環境省「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」として選定されている.
写真1 新富水路の景観
写真2 護岸は1 m 程度. 背後は富津市民ふれあい公園の緑地
写真3 新富水路に生息するアカテガニ
写真4 新富水路のヨシ群落
【ベントスの概要】ヨシ群落にはアカテガニ,アシハラガニが多くみられる.ただ,他の東京湾岸の人工水路のヨシ群落でみられる絶滅危惧種カニ類は確認できなかった.干潟面ではホソウミニナが無数に生息し,まれに絶滅危惧種ウミニナの姿もみられる(写真5).特筆すべきはウミニナ類の殻上に,絶滅危惧種のツボミガイ(写真6)が付着しているのをみかけたことである.ツボミガイは東京湾では現在,盤州干潟以外では確認されていない.干潟表面にはコメツキガニ,チゴガニ,ヤマトオサガニが生息し,干潟内にはアサリ,オオノガイなどに加えて,外来種ホンビノスガイの生息密度が非常に高かった.ベントス出現種の詳細は,柚原ら(2013),柚原ら(2016)を参考頂ければと思う(2008年~2012年の調査結果をまとめた).
写真5 新富水路に生息する絶滅危惧種巻貝のウミニナ
写真6 新富水路に生息する絶滅危惧種巻貝のツボミガイ
(ホソウミニナに付着している)
【交通・アクセス】徒歩の場合JR内房線青堀駅から約20分程度.自家用車では,富津市民ふれあい公園に無料駐車場があり,トイレ,水洗い場もある.