Igawa et al. (2015c): ネッタイツメガエルにおける系統間の遺伝的関係と近交度に関する論文が受理されました。

投稿日: Jul 10, 2015 1:49:15 AM

両生類におけるモデル動物、ネッタイツメガエル(Xenopus tropicalis)における系統間の遺伝的関係と近交度に関する論文がPLoS Oneに受理されました。3年前の2012年から卒業生の渡辺愛さんと一緒に取り組んだ仕事です。

X. tropicalisはこれまで長い間、発生学研究に用いられてきたアフリカツメガエル(X. laevis)に代わるモデル動物として注目されている生物ですが、その遺伝的背景についてはほとんど知られていませんでした。広島大学の両生類研究施設ではナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)・ネッタイツメガエルの中核機関に選定されていることもあり、施設で維持されている系統を中心にゲノム全体を網羅したマイクロサテライトマーカー60遺伝子座と、ミトコンドリア遺伝子で遺伝的関係と近交度(モデル動物では高い方が望ましい)を調べました。

当初は広島大にあった4系統から始まった仕事が、海外の系統も加えていくうちにどんどん増えて、最終的に12系統となり、ネッタイツメガエルの主だった系統はほぼ網羅した、非常に良い仕事になったと思います(その分、労力は大変なことになりましたが...)。広島大で維持されている系統の一部は、海外の系統とは遺伝的に異なっています。また、NBRP事業を推進されている先生方のご尽力で、近交度もかなり高くなっています。これらのことから、広島大のカエルは非常に有用なリソースであると言えると思います。

また、この論文はアフリカツメガエルの系統化の歴史についても俯瞰し、各系統がどのように分譲されたのか分かるチャート(Fig.1)と、名大の宇野さんのFISHマップ、ゲノムデータベース、マイクロサテライト遺伝子による染色体地図の三者の比較(Fig.2)も載せています。これらの情報も、非常に有用ではないかと思います。