約詞についての考察
1. 約詞主語が約詞客語の前提条件となる場合。
例:我之書 (pai2 a ak1) 訳:私の書
例:我心而行。(pai2 hia1 ua mok1) 訳:私は思い、そして行く。
2. 約詞構造が述語の存在範囲を示し、定詞的にはたらく場合。
例:我於家寝。(pai2 ie mut2 hok1) 訳:私は家で寝る。
ここではこれについてより詳細に考察する。
上に従って主な約詞を分類すると、このようになる。
1.
2.
1. / 2.
而即之亦
於行来同
加如別
この違いは文構造の自由性に差をもたらす。1.は約詞構造を約詞主語の前に置くことは出来ず、必ず約詞主語 - 約詞 - 約詞客語の構造を取る。一方2.は約詞構造を前だけでなく、述語の後に置くことが出来る。つまり、*我而行心は非文であるが、我寝於家は非文ではない。
これは約詞構造の性質の違いに起因する。「而」などの約詞は、動詞性が強く、(約詞の)主語と客語の語順への結合力が強い。これを崩せば主語と客語がいずれか不明瞭になってしまうため、定詞化して修飾構造とはなれない。一方、「於」などは、動詞性が弱く、むしろ述語の存在範囲を明示するという定詞性を持っている。となると、主語と客語が明瞭である必要性より、述語の意義調整を明示したいという目的のほうが勝る場合もあろう。故にこれらの約詞では修飾構造を取ることができると考えられる。