エイズに母子感染した乳児が治った

HIV母子感染の乳児、事実上初の「エイズの治癒」に成功!!

アメリカの医療チームが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV=通称:エイズウィルス)に感染した米ミシシッピ州の2歳の女児に、

出生直後から抗ウイルス薬を投与し、その結果、初めて「機能的な治癒」に成功したと

2013.3.3、アメリカのジョージア州アトランタで開催された

第20回『レトロウイルスと日和見感染症会議』で発表された。

日和見感染症会議(Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections、CROI)

HIV感染新生児の治癒

HIV感染の治癒に成功したのは、 米ジョンズ・ホプキンス小児センター(Johns Hopkins Children's Center)のチームだ。

同センターのデボラ・パサード(Deborah Persaud)氏は、 新生児に早い段階で抗ウイルス療法を行うことで、

体内からウイルスが除去され、潜伏しているウイルスの活動を防ぐことができると説明した。

女児の母親は出産の直前になって、HIVの陽性反応が確認されたために、母子感染を防ぐ治療は受けていなかった。

治療にあたったミシシッピ大学医療センターのHIV専門医ハナ・ゲイ医師は、

乳児への感染のリスクが高いと判断し、出生後約30時間で女児に抗ウイルス薬の投与を開始した。

治療には3種類の薬剤を使った。

女児は数日のうちに、HIV感染が確認されたが、治療の結果、女児の血中のウイルスは減少し続け、

治療開始から29日以内に、通常の血液検査では検出できないレベルにまで到達した。

抗ウイルス薬の投与は生後15カ月まで継続した。

その後、10ヶ月間、母親が何らかの理由で治療を中止したが、

その後の複数の血液検査でもHIV陽性の結果は出なかった。

「HIVに感染した乳児に一定期間の治療を行った後、 治療を中止してもウイルスが復活しないことが確認されたのはこれが初めて」

と、マサチューセッツ大学のキャサリン・ルズリアガ医師は語った。

エイズが治った原因

ゲイ医師は、今回の症例について、

「出生直後、まだHIVの陽性反応が確認されないうちから、抗ウイルス薬を投与したタイミングが重要だった」と解説し、

「さらに研究を進め、早期に効果的な治療を行うことによって、今後も一貫して同じ結果が出ることを実証したい」と話している。

ミシシッピ州の女児は定期的な検査を受けているが、 ゲイ医師によると、現時点でHIVは検出されていないという。

いままでの治療との違い

通常、新生児への抗レトロウイルス薬投与は、

生後6週間から実施可能な血液検査でHIV陽性の結果が出るまでは少量にとどめる。

つまり、これまでの治療では、母子感染の疑いのある乳児には、6週間の間は、治療薬ではなく、予防薬を投与し、

HIV感染が確認された時点で、エイズの治療を開始するのが一般的だった。

今回の快挙は、HIVの陽性反応が出る前からの、治療の開始により達成されたことになる。

結局、HIVは抗体が出来て、陽性反応が出るまでの約6週間の間も、徐々に血液内で増えているわけで、

HIVが増える前に叩くことが、大きな効果を生んだことになるのだろう。

これにより母子感染により、HIVを持って生まれた乳児たちへの治療向上が期待されるが、

チームは「完治」ではなく、あくまでも「機能的な治癒」としている。

これは、ウイルスが完全に消滅した訳ではなく、

通常の血液検査では検出されないレベル=通常の薬剤治療を行う必要がない程度まで下がっている状態だからだ。

いずれにしても、、ウイルスが完全に消滅したわけではないものの、今までのように、生涯にわたっての治療を受け続ける必要はなくなるという。