研究テーマ

植物とその共生相手は、生態系における重要な構成要素として繁栄を遂げています。根圏では、実に8割以上もの植物が、菌根菌に光合成産物を与える代わりに、窒素やリンを菌根菌から受け取るという相利共生系 (菌根共生系) を結んでいます。また、およそ9割の被子植物は、動物に花蜜や花粉などの報酬を与える代わりに、花粉の運搬を託す送粉共生系を結んでいます。しかしながらこうした相利共生系には、寄生者が普遍的に潜んでいます。菌根共生系の寄生者としては、他の植物が菌根菌への共生シグナルとして放出した物質を宿主探索に利用し、その植物の根に取り付いて養分を奪う根寄生植物 (Akiyama et al. 2005 Nature) と、自身の菌根菌から養分を奪うようになった菌従属栄養植物が存在します (Bidartondo et al. 2002 Nature)。また送粉共生系においては、花蜜や花粉などの報酬を与えることなく送粉者を騙して受粉させる植物が存在します。私たちは、さまざまな相利共生系とその相利共生系に潜む寄生者の「生き様」についての調査研究を行なっています。また相利共生系とそこに潜む寄生者が、どのように群集構造、生物多様性や生態系機能を形作っているのかを明らかにしています。以下では、現在取り組んでいる研究テーマをいくつか紹介します。

菌従属栄養植物と菌根菌との関係性の解明

キーワード: 菌従属栄養植物、菌根共生、宿主選好性、絶滅危惧種の保全

陸上植物の多くは菌根菌と共生しており (菌根共生)、土壌の無機塩類と光合成産物をお互いにやり取りする「相利共生」の関係を成立させています。一方、植物の中には、光合成をやめ、菌根菌を騙して養分を貢がせる菌従属栄養植物と呼ばれる特殊な植物が存在しています。私たちはこの菌従属栄養植物がどのような菌を利用しているのかを、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析、安定同位体解析や放射性同位体解析などを組み合わせ明らかにしています (e.g. Suetsugu et al. 2017 Mol. Ecol., Suetsugu et al. 2020 New Phytol.)。菌従属栄養植物がどのような菌を「食べている」のかという情報は、菌従属栄養植物の保護を考えるうえでも重要な情報で、我々の研究成果が実際に保全の現場でも活かされています。

最近では、菌根菌の種類を単に同定するに留まらず、オミクス解析を駆使しどのような仕組みで菌根菌を騙すことができるようになったのかというメカニズム (分子機構や化学シグナル) の解明にも取り組んでいます。例えば、複数ペアの菌従属栄養植物とその独立栄養性の近縁種の菌根部位についてトランスクリプトーム解析を行うことで、菌従属栄養植物で共通して発現量が上昇あるいは、減少している遺伝子群を明らかにしています。これまで菌寄生的な菌根共生の分子メカニズムは、一般的な菌根共生とは全く異なると考えられていましたが、我々の研究から、相利共生的な菌根共生との共通性も浮かび上がってきました (e.g. Suetsugu et al. 2017 Mol. Ecol.)。今後、さらに研究を進めることで、菌根菌を騙すのに必要な分子・ 化学シグナルを解明したいと考えています。

シロシャクジョウとヒナノシャクジョウの共生菌の分子系統樹

主要な関連業績

Suetsugu K, Haraguchi T, Tayasu I (2022) Novel mycorrhizal cheating in a green orchid: Cremastra appendiculata depends on carbon from deadwood through fungal associations. New Phytologist, 235: 333–343.

Suetsugu K, Matsubayashi J, Tayasu I (2020) Some mycoheterotrophic orchids depend on carbon from dead wood: Novel evidence from a radiocarbon approach. New Phytologist, 227: 1519–1529. 

Suetsugu K, Yamato M, Miura C, Yamaguchi K, Takahashi K, Ida Y, Shigenobu S, Kaminaka H (2017) Comparison of green and albino individuals of the partially mycoheterotrophic orchid Epipactis helleborine on molecular identities of mycorrhizal fungi, nutritional modes, and gene expression in mycorrhizal roots. Molecular Ecology, 26: 1652–1669.

日本の動植物のナチュラルヒストリー研究

キーワード: 自然史、共生、寄生、系統地理

光合成をやめた植物やラン科植物がラボのメイントピックではありますが、日本の生物多様性の豊かさを活かし、対象とする生物を制限することなく様々な動植物の生態の解明に取り組んでいることも研究室の特色です (e.g. Suetsugu & Sueyoshi 2018 Ecology, Suetsugu et al. 2018 Ecology)。そのような例の一つとしてナナフシの研究を紹介します。自ら移動することができない植物は、通常、種子散布の段階でしか生息域を広げることができません。このため植物は、様々な方法を用いて種子を遠くへ運び、生息域の拡大を図っています。その中でも多くの植物が、動物に食べられて運んでもらい、糞と共に種子を排出してもらう方法を採用しています。しかし、多くの鳥は果実だけでなく昆虫も主要な餌としています。そこで我々は、「昆虫が鳥に食べられた場合、排泄される場合があるのではないか」という仮説を立て、硬い卵殻をもつことで知られているナナフシに着目し鳥に食べさせたところ、一部の卵が無傷で排泄され、孵化するという結果を得ることができました。鳥に食べられても子孫を残す可能性を示すこの成果は、昆虫が鳥に捕食されると例外なく死に至るものだという常識を覆すものです。

そればかりかナナフシの多くは、翅をもたず能動的な分散能力が極めて低いため、鳥による捕食が、分布拡大や異なる個体群間での遺伝子交流に重要な役割を果たしている可能性があります。事実、ナナフシのなかには、一度も陸地と繋がったことがない海洋島に分布しているものも存在します。移動能力に乏しいと思われる生物がいかにして長距離移動を達成したのかは、古くはダーウィンをも悩ませたテーマでした。現在、ナナフシの全国的な遺伝構造を把握することで、鳥による捕食を介したナナフシの長距離分散が実際にどのくらいの頻度で、またどのくらいの距離スケールまで、起こっているのかという謎に取り組んでいます。

(a) 鳥類による種子散布と (b) 新たに提唱されたナナフシの散布様式

主要な関連業績

Suetsugu K, Nozaki T, Hirota KS, Funaki S, Ito K, Isagi Y, Suyama Y, Kaneko S (2023) Phylogeographical evidence for historical long-distance dispersal in the flightless stick insect Ramulus mikado. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 290: 20231708.

Suetsugu K, Funaki S, Takahashi A, Ito K, Yokoyama T (2018) Potential role of bird predation in the dispersal of otherwise flightless stick insects. Ecology, 99: 1504–1506.

Suetsugu K, Sueyoshi M (2018) Subterranean flowers of Aspidistra elatior are mainly pollinated by not terrestrial amphipods but fungus gnats. Ecology, 99: 244–246.

菌従属栄養植物における繁殖様式の変化

キーワード: 生活史戦略、送粉様式、種子散布様式

植物の中にはその最たる特徴である光合成をやめ、菌類に寄生して一方的に栄養を搾取するもの、すなわち菌従属栄養植物が存在します。菌従属栄養植物は、普通の光合成を行う植物が生息できない暗い林床での生存を可能にしました。しかし、暗い林床での生活は利点ばかりではありません。例えば、彼らが生息する暗い林床にはハナバチなどの花を訪れる昆虫がほとんど生息しませんが、そこで受粉を達成しなければなりません。そこで菌従属栄養植物の送粉様式を検討したところ、昆虫に受粉を頼らずに済む自動自家受粉を採用しているものや、通常主要な送粉者とはみなされないショウジョウバエなどの薄暗い環境に存在する昆虫に送粉を託すものが多数存在していることが明らかになりました (Suetsugu 2018 Ecology)。

さらに菌従属栄養植物は種子散布の面でも適応を遂げていました。彼らは、発芽直後から寄生生活を営むという特徴のため、その種子は胚乳などの養分を持たずその微細さから埃種子と呼ばれ、基本的に風が運ばれていると考えられてきました。しかし、彼らが生育する暗い林床は、障害物も多く風通しが悪くため、風散布には適していません。このため、菌従属栄養植物の中には、暗所に進出することで、動物に種子を運んでもらうよう進化したものが存在することが明らかになりました (Suetsugu et al. 2015 Nat. Pl.)。例えば、光合成機能を独立に喪失した遠縁の植物であるギンリョウソウ、ショウキランやキヨスミツボが、いずれもカマドウマの仲間に種子散布者を託していました (Suetsugu 2018 New. Phytol.)。このことは、光合成をやめるという進化(とそれに伴う種子の小型化や、風による種子散布が非効率的な暗い林床環境への進出)が、特殊な生態を獲得することにつながったことを示しています。このように、植物が光合成をやめるという進化は、一見関係なさそうに思える花粉や種子を運ぶ動物との関係性まで変化させる大胆な変革といえます。今後も植物が「光合成をやめる」という究極の選択をした過程で起こった変化を解明したいと考えています。

光合成も咲くこともやめたヌカヅキヤツシロラン(自動自家受粉で結実する)

光合成も咲くこともやめたヌカヅキヤツシロラン(専ら自動自家受粉で結実する)

ラン科で初めて動物に種子散布を依存することが明らかになったツチアケビ

ラン科で初めて動物に種子散布を依存することが明らかになったツチアケビ

ギンリョウソウの果実を食べるモリズミウマ

ギンリョウソウの果実を食べるモリズミウマ

主要な関連業績

Suetsugu K (2023) A novel nursery pollination system between a mycoheterotrophic orchid and mushroom-feeding flies. Ecology, 104: e4152.

Suetsugu K (2018) Independent recruitment of a novel seed dispersal system by camel crickets in achlorophyllous plants. New Phytologist, 217: 828–835.

Suetsugu K (2018) Achlorophyllous orchid can utilize fungi not only for nutritional demands but also pollinator attraction. Ecology, 99: 1498–1500. 

Suetsugu K, Kawakita A, Kato M (2015) Avian seed dispersal in a mycoheterotrophic orchid Cyrtosia septentrionalis. Nature Plants, 1: 15052.

菌従属栄養植物の新種記載

キーワード:菌従属栄養植物、未記載種、記載分類

菌従属栄養植物は、光合成を行う必要がないため、花期と果実期しか、地上に姿を現しません。さらに、菌従属栄養植物の花期は往々にして非常に短いのですが、光合成器官が退化しているため、分類形質が少ないので、花がなければ同定することも容易ではありません。このような特徴から、既知種についても、ほとんどの種において菌従属栄養植物の正確な分布情報は謎のままです。また未記載分類群もたくさん存在します.そこで私たちは、主に日本や東南アジアに分布する種群について、新種記載や分類学的整理を行っています。植物の調査研究が比較的進んでいる日本でも、特に琉球列島などの南西諸島の調査において、数多くの新種や日本初記録種の存在を明らかになりつつあります。今後も、引き続き調査を継続し、新種記載や分類学的整理を進めるとともに、植物側の分子系統解析と送粉様式や共生菌相といった生活史情報を蓄積することで、菌従属栄養植物がどのようなメカニズムで多様化したのかを明らかにしていきたいと考えています。

沖縄本島から初めて見いだされたナンゴクヤツシロラン

沖縄本島から初めて見いだされたナンゴクヤツシロラン

石垣島で発見された新種のホンゴウソウ科植物オモトソウ

石垣島で発見された新種のホンゴウソウ科植物オモトソウ

ボルネオ島で発見された新種のタヌキノショクダイの仲間

ボルネオ島で発見された新種のタヌキノショクダイの仲間

主要な関連業績

Suetsugu K, Kinoshita A (2020) Sciaphila kozushimensis (Triuridaceae), a new mycoheterotrophic plant from Kozu Island, Izu Islands, Japan, based on morphological and molecular data. Phytotaxa, 436: 157–166. 

Suetsugu K, Nakanishi O, Kobayashi T, Kurosaki N (2018) Thismia kobensis (Burmanniaceae), a new and presumably extinct species from Hyogo Prefecture, Japan. Phytotaxa, 369: 121–125. 

Suetsugu K, Nishioka T (2017) Sciaphila sugimotoi (Triuridaceae), a new mycoheterotrophic plant from Ishigaki Island, Japan. Phytotaxa, 314: 279–284.

根寄生植物の宿主範囲と宿主選好性の検討

キーワード: 根寄生植物、宿主範囲、宿主選好性、帰化植物

およそ6500種もの植物が、他の植物から養分を奪う植物寄生性の生活史を持っています。この植物寄生性の種の中には、他の植物の茎に寄生するヤドリギなどの茎寄生植物と、他の植物の根に寄生する根寄生植物に大別されます。これらの寄生植物のなかには、さまざまな農作物に寄生する種が存在します。例えば、根寄生植物であるストライガは、世界規模で見ると年間、数千億円もの損失を与えることがあります。しかしながら地下部を観察することが困難なことから、農作物に被害を及ぼす一部の種を除き、根寄生植物の生態については十分に調べられていません。そこで宿主に関する情報が最も乏しいビャクダン科に属するカナビキソウについて、実際に地下部を観察することで宿主を明らかにしました。その結果、カナビキソウはさまざまな科にまたがる広範囲な植物に寄生していましたが、とりわけイネ科の根に多くの吸器 (寄生を成立させる器官) を吸着させていました。この研究は、ビャクダン科では最初の宿主選好性の発見です (Suetsugu et al. 2008 Ann. Bot.)。

このような宿主選好性は、根寄生性の帰化植物が在来の自然植生に対してどのように影響を与えるのかを知る上でも重要です。例えば、ハマウツボ科の帰化植物であるセイヨウヒキヨモギは、特徴的な草地植生が残る河川敷や砂丘に侵入しており、日本の在来植生に影響を与えることが懸念されています。こうした環境には、セイヨウヒキヨモギと同じ原産地から持ち込まれた帰化植物も存在しますが、これらの植物と日本に在来の植物を区別することなく宿主として利用していることが分かりました。寄生者は、同じ場所に存在していた宿主に対して選好性を示す場合が多いのですが (Mutikainen et al. 2000 Evolution)、セイヨウヒキヨモギではこのような特殊化は起こっていないと考えられます。つまりセイヨウヒキヨモギは、宿主をそれほど選り好みしないため、日本の在来植生にとって大きな脅威となりうることがわかりました (Suetsugu et al. 2012 Bot. J. Linn. Soc.)。現在は複数の寄生植物を用いて,寄生植物の存在が実際に生態系にどのようなインパクトを与えるのかを解明しています。

宿主であるイネ科草本シナダレスズガヤに接着するカナビキソウ吸器

シナダレスズガヤに接着するカナビキソウ吸器の横断切片

主要な関連業績

Ichihashi Y, Kusano M, Kobayashi M, Suetsugu K, Yoshida S, Wakatake T, Kumaishi K, Shibata A, Saito K, Shirasu K (2018) Transcriptomic and metabolomic reprogramming from roots to haustoria in the parasitic plant, Thesium chinense. Plant and Cell Physiology, 59: 724–733. 

Suetsugu K, Takeuchi Y, Futai K, Kato M. (2012) Host selectivity, haustorial anatomy and impact of the invasive parasite Parentucellia viscosa on floodplain vegetative communities in Japan. Botanical Journal of the Linnean Society, 170: 69–78

Suetsugu K, Kawakita A, Kato M. (2008) Host range and selectivity of the hemiparasitic plant Thesium chinense (Santalaceae). Annals of Botany, 102 :49–56

ラン科植物の繁殖様式の解明

キーワード: ラン科植物、送粉様式、絶滅危惧種

現在、ラン科植物は、2万種以上が確認されており、キク科と共に被子植物の中で、最も種数の多いグループの1つです。またその独特な花形態は、多くの人々を魅了し、世界中で愛されてきました。ランの花の形態は花粉を媒介する昆虫の形態と密接な関係があるとされ、ラン科植物の著しい多様化は、送粉者の転換に伴うものであるという説が有力視されています。にもかかわらず、古くから栽培され高い知名度をもつ種類でも、ほとんどの場合どのような昆虫に花粉を運んでもらっているのかさえ、明らかになっていません。

ラン科植物はその人気ゆえ、乱獲などの影響により、個体数が激変しているものも少なくありません。日本に自生するランについては、実に70%以上が環境省から絶滅危惧種の指定を受け、その比率が最も高い分類群となっています。送粉者は、次世代に子孫を残すために必要な存在で、植物の生態の最も基本的な情報の1つです。特に個体数の減少している分類群では、遺伝的多様性を保つ種子繁殖が必要なため、送粉者が不足しない環境づくりが大切です。つまり、危機的状況にあるラン科植物を保全する上でも、繁殖様式の情報の価値は高いと言えます。私たちは、袋掛けなどの操作実験と送粉者や種子食害者の観察を行うことで、絶滅危惧種を中心に、ラン科植物の繁殖生態の解明に努めています。

お願い (ラン科植物に昆虫が訪れているシーンを観察された方へ)

ラン科植物は、昆虫の訪花頻度が低く、私たち自身で観察できる種数には限界があります。野外でラン科植物に花粉塊をつけた昆虫が訪れているシーンを観察された方は、訪れているシーンの写真とともに情報をご提供頂ければ幸いです。

クマガイソウから脱出しようとするコマルハナバチ

キンランを訪れるヒメハナバチの仲間

主要な関連業績

Suetsugu K (2019) Rain-triggered self-pollination in Liparis kumokiri, an orchid that blooms during the rainy season. Ecology 100: e02683. 

Suetsugu K, Tetsu S, Hiraiwa KM, Tsutsumi T (2019) Thrips as a supplementary pollinator in an orchid with granular pollinia: is this mutualism? Ecology 100: e02535. 

ビデオカメラ・ インターバル撮影による訪花昆虫調査

キーワード:送粉様式、訪花昆虫、インターバル撮影

本来、訪花昆虫相の調査は、目視による確認が望ましいもので、人がそばで観察した方がより良い情報が得られる可能性は大いにあります。しかし、昆虫の訪れる頻度の低いラン科植物の場合、訪花昆虫の行動を観察するには、長時間に渡る観察が必要となります。1日中観察しても、1株に対して送粉者が1匹も来ないことがよくあります。また日の当たり具合やこれまでの花粉の持ち去り率などを考慮し、時間帯毎に観察する株を変えるといった工夫も必要です。さらに、そもそも蜜をださない種では、花への滞在時間も非常に短いので、詳細な訪花行動を観察するには慣れや経験が必要となります。

その一方で、ラン科植の花粉は数万個にも及ぶ花粉粒が接着して、花粉塊を形成しているため、ビデオによる録画やデジタルカメラのインターバル機能を用いた撮影を行い、後から容易に確認できます。このような撮影による方法であれば、観察の熟練度に成果へ大きく影響することはありません (ただし、設置できるカメラの台数が少ない場合は、撮影する株の選び方が成果へ大きく影響することがあります)。特に高い木の上の着生ランなど、目視では観察が難しい種や、湿地など踏圧の影響を受けやすい場所でも、カメラを利用すれば調査が容易になるため、直接観察を補完する形で活用しています。

湿地に生育するミズトンボのインターバル撮影

高い木の上に着生するナゴランのインターバル撮影

主要な関連業績

Suetsugu K, Nakahama N, Ito A, Isagi Y (2017) Time-lapse photography reveals the occurrence of unexpected bee-pollination in Calanthe izuinsularis, an endangered orchid endemic to the Izu archipelago. Journal of Natural History, 51: 783–792. 

Suetsugu K, Hayamizu M (2014) Moth floral visitors of the three rewarding orchids Platanthera revealed by interval photography with a digital camera. Journal of Natural History, 48: 1103–1109.

Suetsugu K, Tanaka K (2013) Pollination of Sedirea japonica (Orchidaceae) by Bombus diversus diversus (Hymenoptera: Apidae). European Journal of Entomology, 110: 545–548.

絶滅危惧植物の保全のための教育普及活動

キーワード: 絶滅危惧植物、保全、保護活動、教育活動

私たちの研究対象の多くは、深い森に生息する稀な植物です。時に光合成をやめた植物の多くは、人間活動の拡大に伴う原生林の縮小の中で、絶滅の危機に瀕しています。私たちは、植物ならびに関わりあう幅広い生物間相互作用を研究している専門性を生かし、植物の保全のお手伝いも行っています。もちろん保全のためには現地の方々の活動に勝るものはありません。そこで私たちは、科学的な根拠に基づく保全方法について、地元の方々にわかりやすく伝え、実践できるよう努めています。また現場で経験則的に行われている保全活動は、科学的な視点から考えても合理的であり、私たちにとっても参考になる部分が多く存在します。こうした経験則に基づいて行われてきた「おそらく正しい」保全活動に対し、科学的な根拠を与え、保全活動に尽力されている方々の一助となれるよう努めています。北海道から沖縄に至る日本全国各地で保全活動に従事されている方々と共同で、学術調査や保全・ 教育普及活動を行っています。

オニノヤガラを手に菌従属栄養植物について語る末次

主要な関連業績

末次健司 屋久島の従属栄養植物の多様性 屋久島学ソサエティ第8 回大会「屋久島の植物多様性:最新の研究成果から」 オンライン 2020年12月 (招待講演) 

末次健司 光合成をやめた植物の不思議な生活 日本植物学会一般向け講演会「植物が好き! 植物科学が拓く新しい世界」 日本植物学会 東京 2018年12月 (招待講演) 

末次健司 屋久島の豊かな森に支えられた光合成をやめた不思議な植物 屋久島学ソサエティ第4回大会「屋久島低地照葉樹林の多様性とその保全ー新種発見が相次ぐ菌従属栄養植物が明らかにする世界ー」 屋久島 2016年11月 (招待講演) 

末次健司 ラン科植物の多様性~昆虫に受粉を頼るための様々な工夫 厚沢部町土橋自然観察教育林講座 北海道 2013年5月 (招待講演)