夫の愛読書、多田富雄著『免疫の意味論』を引き出して読んでみた。今世紀の、おそらく戦後最大の世界危機である新型コロナウィルスがなければ決して読むことがなかったであろう。感染に対する免疫への関心がなかったら、私にとってしち面倒くさい医学書など決して読むことがない書物なのである。
本書によると、人間は菅(チューブ)の集合体で成り立っていて、血管、リンパ管、心臓も、胃や腸も考えればチューブ、援用していけば、人間の身体自体チューブである。
チューブには口という入口と肛門という出口がある。チューブの内は外界、つまり外から入ってきたものが通過する道路のようなもの。チューブの外が、私が私であることの自己。自己を司るのは遺伝子の細胞が決める危うい命令。その命令が自己を認識させ、外から時には内からくる非自己を免疫作用によって排除すると。免疫をつくり出す場所も臓器も定かではないが、心臓の上部にくっついている胸腺や消化管らしいが、発展途上の領域だとか、免疫とは摩訶不思議な迷宮のようだ。
この書籍は、1993年に発行されていて、おそらく『言語の誕生』制作時に読まれれていた筈である。シリーズ『言語の誕生』は1992~1997年頃が精力的に多く制作された。言語の誕生の瞬間と絵を描く瞬間を一致させることがメインテーマであるが、人間の身体の内部をイメージして描いていると度々聞いた記憶がある。
以下の文章は1992年に執筆された、『造形言語の解析』である。