地域通貨流通メカニズムの解明

地域通貨は「コミュニティの手によって作られる,特定の地域でしか流通しない,利子のつかないお金」であるため,特定の地域内で当該通貨を用いた消費が促進され,地域経済の循環が達成されると言われています.また,地域通貨がボランティアや相互扶助的なサービスの対価として用いられることで,コミュニティにおける住民同士の助け合いを円滑にするという機能も有しています.しかし,地域通貨を導入しても,特定の箇所に滞留して広く流通せず,当初の目的を達せないまま終わってしまう事例が少なくありません.その理由として,地域通貨を運営するための補助金の打ち切りや地域通貨に参加する店舗が少ないこと等が挙げられています.

このような背景から,地域通貨の効果的な流通のためには,経済効率性だけでは測ることのできない住民の意識・価値観や慣習を含めた因果関係ネットワークの中にある,ポジティブとネガティブの両方のフィードバックループの複合を考慮しなくてはならないと考えています.なぜなら,地域通貨がボランティア等の非商業活動や相互扶助的なサービスを媒介するメディアとして機能しているからです.

本研究では,地域通貨の流通におけるポジティブ&ネガティブフィードバックを同定し,未だ明らかにされていない地域通貨の効果的な流通メカニズムを解明することを目的としています.具体的には地域を重視する価値観や地域通貨の使用慣習といった地域住民が有する内部ルールに着目し,それらが地域通貨を用いた購買行動にどのように影響するのかを,ゲーミングとコンピュータシミュレーションという2つの方法を統合することで研究を進めています.人々の価値観や行動慣習についてゲーミングで明らかにし,それらを売買行動・貨幣使用行動に影響するものとしてモデリングすることで,モデルの頑健性を高め,地域通貨の効果的な流通メカニズムついて探究しています.