サードプレイスを介したコミュニティ形成

サードプレイスとは,カフェやバーといった自宅や職場以外で,居心地が良く多様な利用者と交流のできる場所のことを指します.サードプレイスはインフォーマルな公共生活における地域交流の拠点として機能してきましたが,ライフスタイルの変化や若者を中心に「自分ひとりの時間を過ごせる」といったマイプレイス型のサードプレイスが求められているという社会的背景もあり,必ずしもサードプレイスが多世代の交流の拠点となっているわけではありません.こうした問題を解消するべく近年,「コミュニティカフェ」と言われる誰でも気軽に出入りし自由に交流ができるサードプレイスを地域住民自らが作る活動が盛んに行われています.

しかし,作られたコミュニティカフェの多くが赤字経営であったり,利用者の多様性が維持できなかったりと,カフェの運営や利用者ネットワーク形成の方法については,今なお試行錯誤の状態が続いています.本研究の目的は,居心地が良く,多世代が交流できるサードプレイスを創出・維持・拡大するための要件を明らかにし,それら要件に基づいた安価で持続可能なサードプレイス創出のモデルを構築することです.そのための方法として自治体と共同でサードプレイスを作る社会実験を行い,その利用者に対するアンケート調査・分析を実施しています.さらに,サードプレイスが時間経過と共に地域社会にどのような影響を与えるのかについて利用者間の交流に着目したサードプレイス形成過程のエージェントベースモデルを構築し,コンピュータシミュレーションによる分析も行っています.