現代の社会・経済システムは長らく経済成長を前提に構築されてきました。しかし、環境変動の深刻化や価値観の多様化が進むいま、その前提は大きく揺らぎつつあります。これからの社会のあり方や個々人の幸福を考える上で重要になるのは、ミクロな生活世界とマクロな制度・政策をつなぐ循環構造をどのようにデザインし直すかという問いです。
私は、この循環構造がどのように生まれ、どのように変化し、どのように機能しているのかを、複雑系科学・進化経済学・社会システム論といった学際的な視点から明らかにしようとしています。特に近年は、トップダウンにつくられる制度ではなく、「自分たちの暮らしを自分たちでつくる」ボトムアップ型の仕組みや実践に焦点を当てています。現場で生まれる創発的な知や関係性が、どのように社会制度や地域の持続性につながっていくのか――そのプロセスを丁寧に捉えることが私の研究の中心です。
下記は現在までの研究テーマです。これらの研究に共通するのは、「人々の創造性や関係性が社会を変える力になる」という視点です。制度や政策を「与えられるもの」としてではなく、「ともにつくるもの」として捉え直し、ミクロとマクロをつなぐ新しい循環のかたちを描き出すことを目指しています。
廃止措置中の原子炉施設における技術者のジェネラティビティと知識創造の関係の解明
日本原子力研究開発機構 敦賀廃止措置実証部門,橋本 敬 教授(北陸先端科学技術大学院大学)との共同研究(科研費(基盤研究C))
藤原正幸 助教(公立小松大学)との共同開発
AI技術×ポジティヴヘルス増進による高齢者の社会的つながり創発モデルの実証的研究
科研費(基盤研究A) による研究プロジェクト(代表:中島秀之 学長)
特別支援教育で活用可能な性教育教材の開発と有用性の評価ーアクティブラーニングを取り入れた新しい性教育の提案ー
博報堂教育財団 第19回児童教育実践についての研究助成 (代表:市戸優人 准教授)
フレイル予防のためのアナログゲーム開発と実践
アナログGISを用いた避難行動ワークショップの開発と実践
経済・法教育のためのゲーミング研究(JASAG研究部会)
D✕Nによる理想の病院デザイン
札幌市立大学の教員による研究プロジェクト(代表:中島秀之 学長)
リスク・レジリエンスに関する理論的研究(批判的実在論を中心とする理論研究)
リスク・レジリエンス研究会(代表:市原あかね 教授,金沢大学)における共同研究
電子地域通貨Tarcaを用いたヒト・モノ・カネの地域内循環の包括的研究
2019-2020年度サントリー文化財団助成(代表:江頭 進 副学長,小樽商科大学)における共同研究
デジタル決済がもたらす人間と貨幣の主客に関する技術哲学的検討
赤池 敬 氏(元:北陸先端科学技術大学院大学,日本大学大学院研究員),橋本 敬 教授(北陸先端科学技術大学院大学)との共同研究
世界各地のお金に関する意識調査
サードプレイス(コミュニティカフェ)を介したコミュニティ形成
山田広明 氏(現:富士通研究所)との共同研究
橋本 敬 教授(北陸先端科学技術大学院大学)との共同研究
本研究室では、主に構成的手法――コンピュータ・シミュレーションやゲーミング・シミュレーションといった、社会の動態を「つくりながら理解する」アプローチ――を中心に進めています。これらの手法を用いることで、制度やコミュニティの中で生まれる創発的な現象や、ミクロとマクロをつなぐ循環構造を可視化し、理論と実践の双方から検証しています。
同時に、制度設計に携わる行政職員や、地域づくりの現場で活動する実践者へのヒアリング、アンケート調査、フィールドワークにも積極的に取り組んでいます。現場の知恵や経験を丁寧にすくい上げることで、シミュレーションで得られた知見と実社会の動きを往復させ、より実効性の高い制度・仕組みのデザインにつなげています。
こうした研究成果は、行政、地域団体、NPOとの協働プロジェクトにも活かされ、地域通貨の設計、コミュニティの居場所づくり、災害時の意思決定支援、金融教育の実践など、具体的な社会的取り組みとして展開されています。研究と実践が相互に影響し合う循環をつくることが、本研究室の大きな特徴です。
Keywords:
地域通貨/マイクロファイナンス/サードプレイス/コミュニティカフェ/地域の居場所/サーキットブレーカー/株式市場/貨幣意識/金融教育/シビックテック/オープンデータ/オープンガバメント/地域循環/トランジションタウン/パーマカルチャー/ミクロ・マクロ・ループ/マルチエージェントシミュレーション