長崎大学文教キャンパスの池について
採集および放逐禁止の看板
長崎大学文教キャンパスには5つの池があります。
正門前、水産学部・環境科学部の間、環境科学部・教育学部の間(旧教養池)、おもやい広場(教育学部中庭)、教育学部前ロータリーの池(噴水池)。
市街地に位置する池ですが、様々なトンボ類、魚類、両生類などが生息しています(詳細は日隈・大庭 2014、日隈ら 2015、大庭 2015、大庭・本木 2018)。当研究室では、主に噴水池と旧教養池(図1)で調査や教育活動、維持管理(図2)を行っていますので、この2つの池について紹介します。
植生豊かな噴水池(上)と旧 教養池での実習(下)
小学生ボランティアによる水草除去
定期的に水草を除去しなければ競争に強い水草だらけになってしまい、溜池の生物多様性は下がってしまう。
特定外来生物・カダヤシの存在
カダヤシは北米原産の小型の淡水魚で、肉食性向が強くメダカ類の減少や淡水生態系への影響が大きいため、環境省で特定外来生物に指定されています。そのため、許可なく生きたままの運搬や飼養を行うことができません。ところが、どのようには生息するようになったのかは不明ですが、旧 教養池でみられるほとんどの小型の淡水魚はカダヤシです。それを知らずに、メダカと思って近隣住民が採集される姿が休日などに見られます。私が気付いた時にはお声掛けして、採集しないように呼びかけをしていますが、そのほとんどがメダカと思って採集に来ているケースばかりです。また、近隣の保育園がメダカだと思って持ち帰り、飼育していたというケースもありました(大庭ら 2019)。これらはすべて違法行為となりますので、採集は厳につつしんでください。また、2018年には噴水池でもカダヤシが見られ、研究室のメンバーで駆除しました。おそらく、教養池で採集したものを誰かがリリースしたものと推測されます。これを受けて、2018年より教養池には採集禁止の看板が立てられました(図3)。この池はまだ多くのミナミメダカが確認され、教材池としても良好な池です。カダヤシが増えるとこれらもいなくなってしまいますので、定期的にカダヤシがいないかモニタリングしています。
”カダヤシ釣り”の実施
毎年オープンキャンパスなどで教養池でカダヤシ釣りを実施しています(図4)。これによりカダヤシの存在やその問題を高校生に知ってもらうのが主な目的です(田中ら 2016)が、1日実施すると、200頭以上が捕獲できます(※)。
カダヤシ釣り(2017年7月)
要注意外来生物・ホテイソウの投棄
ホテイソウは園芸店などで売られている浮き草です。野外の池に放たれると爆発的に増え、水面を完全に覆ってしまうケースもあり、各地で問題視されています。2020年12月、このホテイソウが噴水池に数株捨てられているのを発見しました(図5)。驚くとともに、非常に残念な気持ちになりました。今は取り除きましたが、どういった考えで捨ててしまうのか、外来種問題を一般の方に広く周知することの難しさを感じています。
投棄されていたホテイアオイ
放っておくと池の全面を覆うほど繁茂するため、速やかに除去した。
※これらのカダヤシは捕獲許可を受けた実験室で維持し、講義や実験などに活用しています。
引用文献
日隈徳子・大庭伸也 (2014) 長崎大学文教キャンパスにおけるニホンヒキガエルの繁殖行動と越冬場所.長崎県生物学会誌 (74): 7-11.
日隈徳子・大庭伸也・古賀雅夫 (2015) 長崎市の人工池周辺におけるツチガエル(Rana rugosa)とニホンヒキガエル(Bufo japonicus japonicus)の食性.環動昆 26: 17-28.
大庭伸也・本木和幸・山本賢・田中颯真・松田彩葉・松本弥優 (2019) 長崎大学教育学部周辺における外来種・カダヤシの拡散とその認知度.長崎大学教育学部紀要 5: 125-131.
大庭伸也・本木和幸 (2018) 長崎大学教育学部周辺で確認されたトンボ類.長崎大学教育学部紀要 4: 19-26.
大庭伸也 (2015) 長崎大学教育学部の噴水池で確認されたトンボ類.長崎大学教育学部紀要 1: 43-49.
田中颯真・山本 賢・大庭伸也 (2016) カダヤシの除去法としての釣りの効果.環動昆 27: 89-91.
2020年12月30日 掲載
文責 長崎大学人文社会科学域(教育学系) 大庭伸也