『鎮魂(ぬちしずめ)第70回 ⽩梅之塔 慰霊祭の記録』(新里勝彦監督、白梅同窓会・協力会制作、50分)

投稿日: 2017/10/12 13:31:27

文 名嘉山リサ

沖縄戦で看護隊として動員された女子学徒隊の一つ、白梅学徒隊の同窓会が、1947年から毎年行っている慰霊祭の第70回目の節目の回を初めて記録映画として制作した。監督は本研究会会員の新里勝彦さん。

映画は大きく3部構成になっている。「プロローグ」は県立第二高等女学校についての説明、「第1章 第70回 ⽩梅之塔慰霊祭」は、第70回慰霊祭の一連の記録だが、その前に、白梅同窓会のこれまでの活動、白梅の塔の清掃を長年行ってきたガールスカウト団、沖縄尚学高校地域研究部なども紹介されている。「第2章 白梅を支えた人たち」では慰霊祭会場で行われた、協力団体や協力者などへのインタビューが紹介され、「エピローグ 継承 次世代へ」では、元学徒で現同窓会会長の中山きくさんが高校生に思いを託し、また、元学徒で同窓会副会長の武村豊さんも体験談を若者に語る。映画は武村さんの手記からの引用で締めくくられる。最後に、第70回慰霊祭運営委員会の様子を映したしーぶん(おまけ)映像もある。

本作の冒頭から随所に出てくる、白梅学徒隊やそのほかの女子学徒隊の犠牲者数などについての解説や、1フィートの会提供の沖縄戦記録映像などのアーカイブ映像を用いた解説等も、背景を知らない視聴者にはありがたく、若い世代や沖縄戦をよく知らない人たちを意識したつくりとなっている。またそれとは対照的に、沖縄のわらべ歌や芭蕉布の独唱、静かなピアノの音色など、劇中で使用される様々な音楽や自然の音は、鎮魂のための重要な要素をなしているようにきこえる。

会長の中山さんをはじめとする同窓生の方々の、平和を希求し次世代に継承したいという強い意志と凛とした姿が印象的だ。それに応えるように戦争体験者の話に真摯に耳を傾け、白梅同窓生の思いを受け継ごうとする学生たちの姿もたくましい。

戦後70年以上も行われてきたこの「ぬちしずめ」の「儀式」。それを映像を通して覗いてみると、何年たっても生き残った人々の悲しみは消えないということが改めてわかる。慰霊祭会場をひらひらと静かに舞う、「亡くなったみんなの心」を象徴するという印象的な黒い蝶も、同窓生たちの活動を影ながら応援し彼女たちを突き動かす「白梅を支えたひとたち」として存在感を発揮している。

本作DVDは一般発売はされていない。