2023年度に提案した3つの地域ストーリーおよび10のアクションプログラムをベースに、新たに歴史、産業、空間の観点から基礎調査を行い、また関係者と議論を深め、実現にむけての社会実験「歴史・建物・生業が織りなす日暮里繊維街の風景」を2025年2月24日から28日に実施した(東京都立大と東京日暮里繊維卸協同組合の共催)。来訪者にとって「買って帰る(Buy to Back home:B to B)」から「買ってまちを巡る(Buy to Circulate town:B to C)」への転換を促すことを目的に、期間中に、仮設案内掲示板の設置、拠点施設ふらっとにっぽりでの展示、回遊性向上のためのスタンプラリーの実施を行い、その効果を検証した。
大田区は世界に負けない技術を誇るモノづくりと豊かで楽しい暮らしが重なり合うまちである。地域自ら持続的に価値を育む「クリエイティブタウン」という将来像実現に向けて、大学(東京都立大学、横浜国立大学)や地元工業者等が中心となり2017年4月に(一社)おおたクリエイティブタウンセンターを設立した。これをプラットフォームとして各種プロジェクトを展開している。具体的には、期間限定で工場を一斉公開する「おおたオープンファクトリー」の企画や多様な地域活動の拠点として空工場をリノベーションした「くりらぼ多摩川」の運営を行っている。これらに加え、さらに、クリエイティブネットワーク、モノづくりマッチング、モノづくり観光、モノづくりのまちづくりなど、新規事業を企画している。
「散策路事業(=散策路の整備・設定や、まち歩きイベントの開催)」が、健康、レクリエーション、モビリティ等、散策する市民のライフスタイルの変化から生み出されるプッシュ要因と、郊外・行楽地開発、自然・文化資源の保全活用、コミュニティ形成等、来訪者を受け入れる地域側が期待する環境形成につながるプル要因から成り立つという仮説のもと、第一に、「散策路事業」の通史研究(時代区分と各時代の特徴解明)、第二に、特定地域における散策路事業の事例研究、第三に、「暮らし体験型散策路」の計画提案・実践・評価に取り組んでいる。
茅ヶ崎市北西部に位置する「下寺尾官衙遺跡群」は、約1300年前の郡役所、寺院、祭祀場、川津(港)の痕跡が確認されている貴重な遺跡である。これを対象に、アーバンデザインセンター・茅ヶ崎の一員として遺跡まちづくりの調査研究を進め、1)遺跡周辺での暮らしやなりわい、記憶、そして遺跡を生かしたまちづくりについて地域の方々へのインタビュー調査、2)「地形」「人々の営み」「遺跡群」の視点から景観調査を実施した。2019年度には、2017年秋頃からの活動成果をまとめた「茅ヶ崎遺跡まちづくりBOOK2020」を編集・発行した。
近年、多くの花柳界では、地域の観光振興や伝統文化の継承等を目的に、料亭や茶屋等が集積する花街空間内外を問わず、イベントや祭事への出演といった「お座敷外活動」を積極的に取り入れている。一方、地域コミュニティの構成員として、地域における祭礼においては、まちなかの巡行や舞台等での舞踊の披露など、芸妓の出演が行われてきた。本調査では、浅草、八王子、新潟、京都、長崎、福岡の祭礼時を研究対象として、花柳界の出演シーンの形態的、空間的特徴から、神事のなかでの役割の遂行、地域コミュニティとの紐帯、伝統芸能の継承といった花柳界の動機を見出すことができた。
近年、国や自治体は、地域再生や地域振興を進めるための観光まちづくりに大きな期待を寄せているが、その手法は未だ模索段階である。そこで、本研究は、計画の目的設定から実現手段としての規制・誘導や事業といった手法や手続きが、政策や制度・主体と強く関係づけられて進められてきた「都市計画やまちづくりの分野の計画技術」に、観光事業として培われてきた多様な手法 を融合させて、「観光まちづくり」を進めるための政策から現場 の手法までを結びつける計画技術として体系化することを目的としている。日本建築学会都市計画委員会傘下に「持続可能な観光地形成小委員会」を設置し、共同研究を行っている(前「地域観光プランニング小委員会」)。
近年、都市やまちを「ひらく」ことへの関心が高まっている。目的は、観光や交流の促進、公共空間や地域資源の有効活用、地域コミュニティの活性化など様々。その実験的、仮設的、広告宣伝的な取り組みとして、建築物、庭、工場、スタジオ、文化遺産等の各種資源を一斉公開する取り組みが、全国各地で行われている。これらを「オープンシティ・プログラム」と呼び、イベントとしての企画運営の手法から、そこに内在するまちづくりの方法論に至るまでを明らにした。研究成果として、『まちをひらく技術 ─建物・暮らし・なりわい─ 地域資源の一斉公開』(オープンシティ研究会・岡村祐・野原卓・田中暁子編著、学芸出版社、2017年)を刊行した。