予言者の名は歌に乗って
─青木昆陽と『Le Tombeau de Nostradamus』の文化翻訳
予言者の名は歌に乗って
─青木昆陽と『Le Tombeau de Nostradamus』の文化翻訳
2025/06/25
Hayato Takubo
本稿は、江戸時代中期の蘭学者・青木昆陽(1698–1769)が1745年にオランダ商館長らから学んだとされる「勧酒歌」が、18世紀フランスの軽演劇『Le Théâtre de la Foire』(1721–1737)に収録された作品『Le Tombeau de Nostradamus』の劇中歌が含まれていた可能性を提示し、その文化的・言語的意味を検討するものである。特に、「Vive Michel Nostradamus」という句が反復的に歌われる構造に注目し、このフレーズが固有名詞として青木の耳に残ったことにより、日本におけるノストラダムス受容の最初期事例となった可能性を指摘する。青木が重視した音声的語学習得法、および当該劇のオペラ・コミック的構成、ヴォードヴィルの旋律構造を詳細に分析し、「ノストラダムス」という名前が言語の意味を介さず、音声記憶として先行的に流入した事例として論証する。従来、20世紀の翻訳書や予言書に限定されてきた日本におけるノストラダムス受容史に対して、新たな「音としての伝播」という文化翻訳の回路を提示し、異文化名の予兆的伝来の一形態を明示することが本稿の主たる目的である。
§1. 研究の背景と意義
§2. 青木昆陽の言語研究と『勧酒歌』
§3. Le Théâtre de la Foire と『ノストラダムスの墓』の演劇的背景と構成
§4. 歌詞と旋律:証拠としての“Vive Michel Nostradamus”
§5. 結論──音声としての「ノストラダムス」の伝来とその意義
参考文献
re_L0015 2025/06/25
編纂・発行:Hayato Takubo(ノストラダムス研究室 / OFFICE SURPLACE)
発行日:2025年6月25日
発行形態:PDF逐次更新版/非営利公開(CC BY-NC-SA 4.0)
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