1557年リヨン版『予言集』におけるユトレヒト標本の書誌的意義:
ブダペスト標本との比較を通して
1557年リヨン版『予言集』におけるユトレヒト標本の書誌的意義:
ブダペスト標本との比較を通して
2005/03/22
2025/06/18
Hayato Takubo
1557年にリヨンで刊行された『ノストラダムスの予言集(Les Prophéties)』には、現在までに少なくとも二つの異なる印刷標本の現存が確認されている。一つは、従来から知られていたブダペスト国立図書館所蔵本であり、もう一つは、オランダのユトレヒト大学図書館でウーター・ヴァイラントによって再発見された標本である。後者は刊記の日付から見て、ブダペスト標本よりも早期に出版された可能性が指摘されているが、これまでその詳細な構成や印刷特性についてはほとんど研究がなされてこなかった。
本稿では、このユトレヒト標本の書誌的特徴および印刷構成を精査し、ブダペスト標本との比較を通じて両者の系譜的関係性を検討する。その際、視覚的構造の定量比較手法として、SSIM(構造的類似度指数)およびHOG特徴に基づく主成分分析(PCA)などを導入し、印刷工や活字母型の共通性・独立性を数値的に評価した。その結果、両標本は外見上の差が大きく、活字や装飾の特徴においても中程度の一致率にとどまり、同一工房による直接的な複製ではない可能性が高いことが示された。一方で、完全な別制作と断定するには一部に強い共通性も見られ、両者は「無関係な海賊版」とは異なる、兄弟工房や同系統内の印刷成果としての「技術的パラレル」という新たな位置づけが導き出された。
1557年版『予言集』に関するこれら二異本の定量分析は、おそらく本研究が初めての試みであり、従来の文献的理解に対して慎重ながらも重要な再検討の契機を与えるものである。
1. 書誌情報
2. 1557年ローヌ版の発見
3. ユトレヒト標本の特徴
4. 二つの標本の定量解析
おわりに
文献目録
re_L005_rev01 2025/06/18
Sheshatプロジェクトとして、『1557年リヨン版ユトレヒト標本』の20年ぶりの改訂。二つの1557年ローヌ版の定量分析評価を加えた。
編纂・発行:Hayato Takubo(ノストラダムス研究室 / OFFICE SURPLACE)
発行日:2025年3月22日|2025年5月29日(Ver. 0.2)
発行形態:PDF逐次更新版/非営利公開(CC BY-NC-SA 4.0)
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