対談 リームアハマドさんに聞く

投稿日: Mar 18, 2013 7:58:37 AM

「日本でムスリムとして生きてみて」

アッサラーム アライクム!

読者のみなさま、こんにちは!

 

第1回対談と題しまして、NHKアラビア語講座でも大活躍だったエジプト人のリームアハマドさんに、私さあらがインタビューさせていただきました!

 

エジプトから来日した当初から結婚した今、彼女が日本でのムスリム生活において、いったいどんなことを感じてきたのでしょうか??

そこには、日本ならではの良さもあったようです。彼女の豊富な経験から新しく入信した方へ、またサポートする私たちにもとっても励みになるアドバイスもいただきました♪

 

☆★☆*…*…*…*…*…*…*…*…*…**…*…*…*…*…*…*…*…*…*★☆★

リームさん(R):アッサラームアライクム ワラフマトゥッラーヒ ワバラカートゥフ

さあら(S):ワアライクムッサラーム ワラフマトゥッラーヒ ワバラカートゥフ

R:さあらちゃん元気ですか?

S:アルハムドリッラー、リームちゃんは?

R:アルハムドリッラー、元気です!

S:アルハムドリッラー。では今日はどうぞよろしくお願いします!

   まずはリームちゃんのことを聞かせてもらいたいんですが。

日本に来るきっかけはなんだったんでしょう?

 

R:初めて日本に来たのは、エジプトのカイロ大学日本語学科に在籍中に2003年に交換留学で1年間 

   ほど来た時です。本格的に日本に来たのは2008年です。アルハムドゥリッラーカイロ大学を首席で  

   卒業して助手になったのですが、助手になると5年以内に修士をとらなくてはいけないんです。それで  日本を選びました。

S:マーシャーアッラーフ ラークッワタ イッラー ビッラー、素晴らしいですね!

 

R:アルハムドリッラー。でも日本語を勉強し始めたきっかけはまた別にあります。

エジプトでは小さい頃日本の「おしん」が流れていて、みんなの人気番組でした。

私のお母さんはおしんを見て、「おしんみたいにお掃除しなさい」って言うこともあったくらい!(笑)

S:ええ!!(笑)でもほんとエジプト人の方はおしんが大好きですよね!

あれが日本のイメージなのかな(笑)

R:そうそう!日本人らしき女性を見ると、「あ、おしんが来てるよ」と言っていたくらい(笑)

それで、その時の日本語字幕が縦に書いてあったのが初めて見た日本語で、

その縦書きの文字にとっても興味がわきました。

S:縦書きに興味が!(笑)それで初めて行った日本のモスクはどこでしたか?

R:大阪の外語大学に交換留学生で来た時に、神戸モスクに行きました。

当時は大阪にはモスクはなかったので神戸まで行っていました。

S:神戸まで遠いですよね?

R:そうですね・・。なのでだいたい2週間に1回は行っていました。

S:最初の日本の印象はどうでした?

R:う~ん・・・。大阪の田舎に行ったので、これが日本なのかな?と教科書で見た都会の

イメージと違いすぎてびっくりしました(笑)

後もう一つ!日本は東に位置している保守的な国とのイメージだったんだけども、実際来日したら、

ずいぶん開放的なところどころがあってびっくりしました。

例えば、結婚していない恋人同士が同棲しても平気で、場合によって親が子供に「恋人作った方が

いいよ」と勧めたり!こういうところは残念やら不思議やら!非常に思いました。

S:あら~(笑)その時は日本人のムスリムに会ったことはありましたか?

R:当時神戸マスジドのエジプトのイマーム(指導者)の奥さんが毎週勉強会をしていたので、

日本人に会うこともありました。ムスリムもいたしムスリムでない方もいました。

イマームさんが日本語を話せなかったので、私のかたことの日本語で通訳をしたりしていましたね。

S:マーシャーアッラー。その時から通訳を(笑)

新しく入信する人に立ち会ったことはありましたか?

R:ああ、ありましたね。モスクは2階建ての建物で、女性が2階にいて男性が1階で信していました。

上から見ていましたね。

S:エジプトでは立ち会ったことはありましたか?

R:う~ん。アズハルで見たことはありましたが、彼らはもうすでにどこかで入信していて、証明書を

   もらいにもう一度入信式をしている感じでした。なので、初めて入信する人を見たのは日本が初めて 

   だったと思います。とっても感動したことをよく覚えています。

 

S:日本に来てムスリムとして困ったことはありましたか?

R:そうですね、食べ物は少し困りましたね。

当時私は19歳でエジプトではすべてお母さんにやってもらっていたんですよ。

自分で料理ができないまま日本に来たので、友達と外で食べたりとか、食べ物を買って家で食べたり

とか。でもハラールのモノを探すのがとても大変で、最初の頃はストレスがたまりました!

 

S:そのストレスはどうやって解決したのですか?

R:う~ん。食べ物の解決はとても大変でした。だからマスジドによく行きました。

マスジドで出る食事はハラールだから安心でしたしね。

 

S:日本に来てすぐにムスリムであることや、食べ物のことを伝えました?

R:ええ。伝えましたが、始めの頃はいろいろな言い方をしていました。

「私はお肉を食べないの」とか「せっかくお魚のおいしい日本に来たのだから、お魚を食べたいの」とか。

多分私のことを「菜食主義」の人だと思っていた人もいたんじゃないかなと思います。

S:何か伝えることに不安はありましたか?

R:当時は「イスラームとテロ」のような表現が盛り上がっていて、イスラームのイメージがよくありませんで

した。だから、最初から食べ物のこととか厳しいという悪いイメージがつかないように、どうやって伝え

ようかと考えていました。それよりもイスラームの美しさとか素晴らしさを伝えたいと考えていました。

 

S:ヒジャーブ(スカーフ)をしていて辛い視線とかはありましたか?

R:いや、それはなかったですね。ただ、始めはみなさんあなたの肌色が白いですね~。

フランスの人ですか?と西洋の国から来たと思われることが多かったです。

それで、それはあなたの国の民族衣装ですか?とか聞かれることが多くて、逆にイスラームのことを

説明するきっかけになったことが多かったです。

あ。でも東京に来てからは、ヒジャーブを見て、「中東の方ですか?」と聞かれることもあるようになり

ました。

他には例えば「豚だっけ牛だっけ?食べれないのは」と言ってくださる方もいて、少なからず

イスラームの知識があるように思いました。

S:東京の方が都会だったってことかしら?(笑)

R:はははは。確かにね。それもあるかもしれません。

でも昔よりイスラームの知識がみなさん高くなったと感じますね。

 

S:日本でムスリムとして生活していてよかったと思うことはなんでしょう?

R:よかったと思うというか、日本に来てから、自分がムスリムであるというアイデンティティーが高まった

気がします。ラマダーンや礼拝の時にも世界中のムスリムが集まって、食事会したり集団礼拝したりし

ますよね?すごくウンマ(共同体)を感じます。

 

S:でもエジプトのラマダーンもすごく大きいでしょう?

R:エジプトのラマダーンもとても好きで特別ですが、同じエジプト人同士同じアラビア語だし、家族や

なかなか会えない友達と過ごすという感じです。日本では世界中の人たちが集まってのラマダーンなの

で、また違った意味のウンマを感じますし、日本のラマダーンは国際的だと思います!

S:国際的!!マーシャーアッラー。それはすごいですね!これは大発見!

 

S:ところでリームちゃんは昨年結婚しましたね!日本人の旦那さんと!

R:(笑)ええ。おかげさまで。

S:私にとっても、とっても嬉しいニュースでした!日本に永住は考えていますか?

R:う~ん。エジプトの大学に務めているので、エジプトに帰らないといけないとは思いますが、家庭も

大事にしたいですしね。今はそのことはアッラーにお任せしています。

 

S:ご主人のご家族とは結婚の際に問題などありましたか?

( *ご主人のご家族はみなさんムスリムではありません )

R:お互いの家族にとって大変でしたね。特に私のお母さんはずっと反対していましたし・・・。私は長女で妹

もいるのですが、妹がお母さんのそばにいると言ってもやはりさみしいみたいです。

S:それはリームちゃん、かわいいもの(笑)心配なんでしょうね。

私も千葉からいきなり福岡に結婚して引っ越ししてしまって、とってもさみしがっていましたよ。私のママ

は飛行機が嫌いだったのだけど、新幹線で福岡まで来てくれて、どういうところに住んでいて、 どんな

物を食べてるのかとか、どんなお友達がいるのかとかわかると安心するみたいです。

R:あぁそうね。それはありますね。

でも、彼がエジプトに来てもらった時に、うちの母が彼と実際会ったら、アルハムドゥリッラー彼のことは

真面目でしっかりしていると思ってくれて、安心してくれました。

S:スカイプなども使ってちょくちょく夫婦が仲のよいところを見せるのもとっても安心するみたいですよ。

私はよくやっています(笑)

R:あ、なるほどね(笑)

 

S:日本で日本のお葬式などに出たことはありますか?

R:はい。去年彼のおばあさんが亡くなってしまい、二人でお葬式に参加しました。

S:それは残念でしたね・・。でも二人でそうやって参加してくれたのはとても喜ばれたでしょうね。

R:はい。お葬式の時は一緒に座っているだけでしたし、みなさんが仏教式にお祈りする時に私たち夫婦は

ドゥアー(※下記参照)をしました。人が亡くなると天使がその人を囲みますよね。その時にアッラーに一緒に

祈ってあげられるのはきっと私たち二人だけだったと思うんです。

だから行くことはとても良いことだったと思っています。

S:そうですね。私もできるだけそうした家族の集まりには参加したいと思っています。

まずは家族と宗教による壁をつくらないことが第一優先ではないかと思っています。

その集まりに参加することで、何かお酒を飲みたくなってしまうとかそういった自分の信仰がぶれるよう

であれば別ですが、そうでなければぜひ参加してもらいたいなぁと思っています。

R:先日エジプトでもコプトの方で一番偉い方が亡くなりましたが、その時にムスリムの有名なシャイフたち

が彼の葬儀に参加しました。そこにはただ「人が亡くなった」という事実があり、その悲しみをわかちあう

姿がありました。共に祈れることも心強いですよね。

S:そうですね。でも中には法事やお墓参りなどには参加しない方もいますね。

どうしても行けない方は、日を改めてお食事会などを作ったりするのもいいですよね。

イスラーム教徒だから行きません!!みたいだとちょっとね・・・(笑)なので、先日はお葬式行けなくてす

みません・・とかそういう感じで、亡くなられた方の思い出話をしたり、ご家族の方をいたわる気持ちから

ぜひいろいろな形で関わっていけたらいいですよね。

R:そうですね。そういう気持ちがいいですね。そして、参加する場合には、何のニヤ(意図)を持つかにもよ

りますね。正しいニヤを持って参加できるといいですね。

S:そうですね。ニヤ!大事ですね!そこに行くことで亡くなられた方へのドゥアーももちろんですが、

ムスリムでない家族が私たちが行くことによって、イスラームへ導かれるきっかけになれたらいいですよ

ね。

R:そうそう!そうですよね!

 

S:リームちゃんは今後もしお子さんができたりしたら、旦那さんのご両親もお宮参りとか七五三などもした

いと希望されるかもしれませんよね。でも孫に着物やああいう衣装って着せたいって思うのも親御さんた

ちの気持ちでもあるので、そういう時は衣装を着て写真を撮ったりして楽しめたらいいのでは?と思いま

すね。私もリームちゃんの着物姿みたいですね(笑)

R:そうですね、インシャーアッラー(笑)

 

S:新しく入信した方に何かメッセージやアドバイスはありますか?

R:そうですね・・・。入信したばかりの方は悩むこと、迷うことがいっぱいあると思います。

女性ならヒジャーブのこととか男性だと会社の付き合いのこととか。なので、お勧めは、できるだけ多く

のムスリムの友達を作ること。それによって孤独感がなくなると思いますし、先輩のムスリリムの方たち

も同じような悩みや迷いがあったと思うので、どのように解決したのかどうしたらいいかなど、ぜひ相談

してほしいですね。

 

S:例えばどんな風にお友達を作ったらいいと思いますか?

R:そうですね、まずは近くのマスジドなどを調べてそこを訪ねてみたり。

食事会やキャンプなどに参加してみるのもいいですよね。

 

S:ちょっとシャイな方やお友達を・・というのが苦手な方はどうしましょう・・?

R:そうですね。でも積極的になってほしいです。

これは本当に大切なことなんです。イスラームは本を読んだりすることも大切ですが、実践することがと

ても重要です。その実践の部分はやはり見ないことにはわからないことも多いですよね。なので、外に

出て積極的に参加してもらいたいです。

S:実は私は今でこそこんなにお友達がたくさんいますが、入信して最初の半年くらいは怖くてマスジドに行

けませんでしたね・・。当時は英語も話せませんでしたし。でもいつも、よい出会いがあるように、マスジ

ドに行けるようにドゥアーしていましたね。だから、始めちょっと行けないなぁと思う方も、そうやって願う

気持ちは持っていてほしいですね。

そうしたら私もそうでしたが、アッラーがちゃんといい人たちを用意してくれていて、アルハムドリッラー、

日本人の素晴らしい人たちに最初から会えましたからね。

R:そうですね。きっかけをつかめれば早いですよね。

もしムスリムとしてマスジドに行くことが恥ずかしとか何かあるようだったら、見学に行くという気持ちで客

観的に見ることから始めるのがいいと思います。彼らの生活リズムとか実践内容とかを見学するつもり

でいけば難しくないかもしれません。

S:客観的に・・いいですね!マスジド行って別にムスリムって言わなくてもいいんですからね

(笑)ちょっと見学に来てみたんですがぁ・・・と行くのはいいですね!

R:ええ。ぜひ!

 

S:こうして新しく入信した方を迎える側としてはどういったことをするのがいいでしょうか?

R:スブハーナッラー。この活動のように、人を集めたりするのってとってもいいことですよね!

   そしてとにかく「一緒に楽しむこと」ですね!

S:ああ!いいですね~!楽しむ!(笑)具体的にはどんな風にするといいでしょうか?

R:例えばブログを紹介したり食事を一緒に楽しんだり。もしイスラームのお話ができるようでしたら、初めは

物語りから入るといいでしょうね。クルアーンの中にはいろいろな決まりごとなどの部分もありますが、

物語りのところは子供の頃聞くのがとても好きでした。

預言者(彼にアッラーの祝福と平安がありますように)のお話などいいですね!

S:そうですね!物語りからなら入りやすいかもしれませんね!

今日は本当にありがとうございました!ジャザーキッラーフハイラン!

R:こちらこそとっても楽しかったです!

 

S:ではまたお会いしましょう!

アッサラームアライクム ワラフマトゥッラーヒ ワバラカートゥフ!

R:ワアライクムッサラーム ワラフマトゥッラーヒ ワバラカートゥフ!

 

(※)ドゥアー:アッラーへ祈願すること。亡くなったムスリムでない方へのドゥアーは、

「すべてをご存知で、最も慈悲深いアッラーに、彼をお任せしました」というドゥアーです。