マウス白血球の生体イメージング
生きたマウスの白血球の中で分子活性を可視化することに
世界で初めて成功
~非ステロイド性抗炎症薬は白血球を活性化する~
倒立型多光子顕微鏡 FV1000MPE-IX83使用
貼り付け元 <http://www.fret.lif.kyoto-u.ac.jp/rab/mizuno.html>
白血球の運動や炎症反応を制御する細胞外シグナル制御キナーゼとプロテインキナーゼAいうタンパク質の酵素活性を生きたマウスの白血球で観察することに世界で初めて成功しました。 さらにこのマウスを使って、インドメサシンなどの非ステロイド性抗炎症薬が白血球を活性化させ、炎症を憎悪させることを見出しました。
この研究は米国科学雑誌「Journal of Experimental Medicine(実験医学雑誌)」誌に発表されました。
Mizuno R, Kamioka Y, Kabashima K, Imajo M, Sumiyama K, Nakasho E, Ito T, Hamazaki Y, Okuchi Y, Sakai Y, Kiyokawa E, Matsuda M.
In vivo imaging reveals PKA regulation of ERK activity during neutrophil recruitment to inflamed intestines.
実験手法。麻酔下のマウスの腸管を二光子顕微鏡にて観察する。左下図は、小腸の細胞外シグナル制御キナーゼの活性地図の3D画像
本研究では、炎症を起こした小腸粘膜下の血管から、白血球(好中球)が出てくる過程において、細胞外シグナル制御キナーゼとプロテインキナーゼAがいつどこで活性化されるかを観察しました。 その結果、細胞外シグナル制御キナーゼは白血球(好中球)が血管に強く付着したあとに活性化され、その後、血管内皮細胞の間を通り抜けて、血管外へ出ていくことがわかりました。 そして、その後、活性は高いままでした(図2)。一方、プロテインキナーゼAは白血球(好中球)が血管から出てくる過程で徐々に高くなりますが、血管外では、活性が高くなるとむしろ白血球(好中球)の動きを止めることがわかりました。 さまざまな薬を使った実験から、細胞外シグナル制御キナーゼとプロテインキナーゼAは白血球(好中球)の反対に制御していることがわかりました。
図2: EISUKEマウスの小腸血管で、白血球(好中球)が血管外に出る様子の一部。 白血球(好中球)が血管内皮に強く結合すると細胞外シグナル制御キナーゼの活性が上昇することがわかる。