ポートからの中域漏れは音を汚す。
ポートの位置で中域漏れが抑えられれば望ましい。
箱内の定在波を予測し、その影響を検討してみる。
箱の中に発生する定在波について
定在波と言うと、左図の赤線を思い浮かべる。
詳細は文献で確認してほしいが、剛体壁面での反射で考えれば、粒子速度分布は赤線になる。
一方で、音圧は剛体壁面で最大となり、青線のような赤に対して裏返しの分布となる。
従って、0.5次(単純に考えれば尤も低い周波数)で発生する定在波での音圧分布で考えれば、箱の中央が節となり音圧は低くなる。
(その次数ではポート配置として最良点だが、1次では音圧の腹となり高い音圧の発生が想定される)
音源からの反射を考慮した音圧の干渉は単純には見出せないので、その用途に向いたソフトウエアを利用する。
ここで利用したのはスピーカーを入れた部屋の定在波を検討するソフト StndWave2 である。
目的外の使い方なので上手く出来るとは限らないが、何らかの情報が得られれば良い。
定在波をより際立せて観察するため、壁面反射は剛体壁(フローリング並みの反射を想定)として0.9を使用
スピーカーの中には低域ユニットが一つなので、R/Lを同じ位置とした。低域音源位置は底板から150㎜。
スピーカーの位置は低域ユニットの位置とした(音源位置は感で決めた)。
音源の位置を前後させても変化するが、高さの方が支配的である。
聴取位置をポートの開口部と考える。
定在波の影響が小さい位置にポートが配置できれば、それは望ましい方向と考える。
ポート高さを低域ユニットと同じとすると、300Hzの上でピークが出来る。
内部距離が468㎜ 音速:340m/sとすれば、0.5次で363Hz。 この周波数が出てきているか?
ポート位置を左右方向へずらしもピークは残る。
ポート位置を下げる方向には良いポイントは無い。
基本はこれでよいと思うのだが、波の干渉で元の周波数より低い波が合成される。
ここで扱っているのは500Hzまでなので、このままではそれより高い周波数の波の干渉が扱えない。
相似則で考え、箱寸法を10倍すれば10倍高い周波数 5,000Hzまでが扱えるようになる。
元々がこの寸法での計算を意図したソフトなので、寸法上の制約は無いと思う。
これまで363Hzのピークのみに着目してきが、600Hz付近 700Hz弱 1103Hzあたりに大きなピークが出来る。 特に1103Hzのピークは+24dB近い。
この1000Hzより上の周波数帯を上手く処理できると良い。
ポート位置を240㎜とすると低域の363Hzの上にあったピークが消える。
この位置は上下方向ではほぼ中間。
たが、補強を考えるとこの位置にはポートを配置できない可能性がある。
5,000Hzまでの計算では363(368)Hz / 部屋寸法の都合で少し数字が動く / は同じ様に消えているが、595Hz 特に735Hzのピークが大きく+20dBとなっている。
735Hzのピークを除けば、Try 1 よりは音圧が2dB程度低くなる。
ポート位置を更に上に上げて、370㎜とすると最初の検討と同じピークが生じる。ピークはユニットと同じ高さにポートを配置した場合より若干高い。
200~300Hzの間もディップとならず、広い周波数でポート漏れ音がでる可能性がある。
ポートはあまり上方に上げて設置しない方が良い。
5,000Hzまでの計算でも実寸で検討した363Hzは+24dB出ており、やはり音圧は高い。
その上の帯域では最大+12dB程度に抑えられており、これまでの検討Try 1,2より低い。
特定の周波数を許容すれば、他の周波数帯を抑える事が出来るか?
ただ、300Hz付近だとボーボー鳴るか。
現実的なポート位置 下から310㎜位置とした。
300Hzの上に出来るピークは40dB程度で、370㎜位置と比べれば4dB程度低い。
しかし、240㎜位置に比べて25dB程度音圧が高い。
これは微妙な結果。
補強との兼ね合いはあるが、位置を下げた方が良いように思えるが・・。
これは今一つ。
1100Hzに+22dB強のピークが出る。
上の帯域も音圧が高い。
中域漏れが五月蝿いかも!?
ポート位置は補強の下にした方が良さそう。
ポート位置210㎜。
これなら成立する。
この検討結果から言える事は、ポート位置は長手方向の検討をすればよい。
箱内部で尤も広いスパンの中で一番低い定在波は発生する。
その中点付近は音圧分布の節となるので、音圧変動の影響を受けにくくなる。
これは実寸法での検討結果。 取り扱っている帯域が不足したので、この様な結論となったが、5,000Hzまで拡大して検討をしてみるとまた違ったものが見えてくる。
今一つスッキリした検討結果とならない。
700Hz付近のピークが+20dB弱 その他のピークが+16dB前後。
もっとスッキリしたポート配置は無いか。
いろいろ弄ったが、この箱寸法ではTry 5がベスト。
この先は箱寸法変更が必要。
奥行き方向を変更したトライは行ったが、これはと言う検討結果/知見は得られていない。
これらの検討から言えるのは、
1)箱の上下に接する位置は最悪。
壁は定在波の音圧が最大となる場所。
2)低域ユニットと同一高さは望ましくない。
加震源と同一位相となるからか。
3)良さそうなのは箱長手中央より若干ユニット寄りの位置。
ここまではパラメータースタディとしてポートの長さ、配置の成立性を考慮してこなかった。
相似則を使い、箱寸法は10倍 周波数も10倍で検討
ユニットの位置が箱外形からとなっていたので、板厚分を考慮。
背面ポートで検討
ポートは100㎜が基準 2本入れる。
中央からオフセットしてこれぐらいの位置。
フロントなら中央からのオフセットを多くしてみる。
背面ポートで再度検討しなおし。
高さを262㎜へ上げてみる。
同じ背面ポートでもポート位置を上方に上げることで1,100Hzはほぼ同じ(若干音圧が上る)で、1,300Hzのピークを下げることが出来る。
この方が少し良さそう。
ポート開口位置を17㎜内側(ポートは長くしたくないので、口元をフレアー上にして)にすれば更に少し良い。
またポート位置は下がってきた(206㎜)。
壁面反射率 : 0.8
壁面反射率 : 0.6
ポート漏れが起きる条件は? ポート高さ56㎜では
壁面反射率 : 0.8
500Hzあたりでポート漏れが出るとすれば、壁反射:0.8で計算すれば良いか。
ポート漏れを避けた条件との比では+8dBの差が出る
壁面反射率 : 0.6
流石に壁反射率:0.6では吸収のしすぎか。
これでは定在波の影響が見えてこない。
ポート漏れの音圧差が4dBなので、もうすこしはっきりした影響が出た方が判り易い。