23i52_3way_Eigen
箱補強の検討 / 固有値解析
固有値解析に使用するソフトは、フリーCAE解析ソフト開発研究所(仮)で開発している
FEM-BLOCK 使用したバージョンは ”Ver2.05” 最新版はVer2.07が近日公開
別項でVer2.05とVer2.06の比較を行っている。
●Ver01 「一番簡単な箱の変形形態を確認する」
箱の部材 : MDF 21㎜
FEMモデルvolデータ・iput file・計算結果は、下に添付ファイルとして掲載。
面積の大きなサイド部とユニット取り付けにより切り欠かれたフロントバッフルに大きな変形が出る。
●Ver02 「最弱部となっている中・低域ユニット間に補強を入れる」
これでサイドの太鼓鳴りとフロントバッフルのユニット間ブリッジ部の強度は向上した。
固有値は412.03Hz→507.06Hzであり、固有値が2割向上。
この補強はこのままでは箱を分割するので、強度低下を最小限に抑える形で抜き穴を開ける事を検討する。
抜き穴でどの程度固有値は低下するか? Ver03で検討する。
●Ver03 「内部に入れた補強の肉抜きを設定」
補強の幅は50㎜ フィレットR30㎜で抜き穴を設定。
Ver02では箱の上部が大幅強度が向上し、低域ユニット部分の変形が支配的となった。
内部補強に抜き穴を設けることで補強部の強度が下がるが、Mode7の固有値低下は大きくはない。
見比べれば解かるが、この補強は良いバランス!!
●Ver03_01 「Ver03に対してフロントバッフルを2重化」
いろいろ弄ったが思った結果が得られないので、Ver03に戻りそこから変更。
比較が簡単な様にVer03の後ろに検討結果を挿入。
フロントバッフル2重化で固有値/Mode2は486.41Hz→552.48Hzと15%程度向上する。
Mode11は箱後ろの剛性支配なので、フロントバッフル2重化は剛性向上にさほど影響しない。
Mode2よりは効果が少なく、10%以下の向上効果となる。
●Ver04 「内部補強を変更」
左右の補強幅 50㎜→30㎜
背面補強 50㎜→30㎜
フロントバッフル裏側 50㎜→60㎜
フィレットR30㎜(そのまま)
左右・裏側にあたる補強の幅を下げると、剛性はぐっと下がってくる。
ベースの箱に幅30㎜程度の補強だと、ポイントを押さえた位置に入れないと固有値向上には効いてこない。
この補強例だと、Ver01より何れのModeでも固有値周波数が低下した。
補強は中々難しい。
これは、感覚で補強を入れても良い成果は得にくい。
●Ver05 「低域ユニット裏に補強を追加」
フロント補強に内側にサブバッフルを配置。
フロントバッフルとサブバッフルの間は30㎜。
上部角の変形が出てきた。
このラインで強度を上げるためには・・・・・
Mode8の変形からみると、水平方向に入れた補強は効果的な補強となっていない。 Ver03の解析結果と比べて見ると良い。
さて、バランス的にはフロントバッフルの強度を上げたい(板厚を増やしたい)が、今回は簡易箱という前提なので、あまり凝ったことはしたくない。
実はこれが一番難しい。
●Ver06 「低域ユニット裏の補強位置変更 奥側へ20㎜移動」
フロントバッフルとサブバッフルの間は50㎜。
*Netgen4.9.13でstlデータからのメッシュ作成時に不具合が発生。
形状を少し変更することで回避した。(stlデータの生成条件を変えても回避できると思うが・・)
天板を平行に入っている補強を天板側に5㎜移動。
変形形態から見ても、Ver05に対してサブバッフルを奥側へ移動は取り分が無い。
同じ補強の配置なら、フロントバッフルを二重とした方が良いか。
この条件はVer08で試した。
左側はデフォルト
最大誤差の距離を修正
●Ver06.1 STLデータを調整することで、メッシュ作成・固有値計算を行った(元々の設計形状)
変形の状況を比較すると、天板と平行な補強は少し上へ移動させても良いかもしれない。
●Ver07 「低域ユニット裏に補強位置変更 手前側へ20㎜移動」
フロントバッフルとサブバッフルの間は10㎜。
サイドの補強幅を30㎜→50㎜へ強化。
バッフル・サブバッフル間を狭くしてもフロントバッフル部の剛性はあまり高くならない。
Mode11の固有値が若干高くなるのは、サイドの補強幅を増した影響と考えられる。
この状態から考えると、バッフル厚さを2倍としても大きな取り分は出ないか?
●Ver08 「Ver04に対してフロントバッフルを二重化」
Ver04に対して、フロントバッフル厚さを2倍としてみた。
箱上側の剛性は上がったが、低域ユニット下角の状況は変わらない。
(想定通り)
変形がフロントバッフルに平行なので、補強の位置が変わっても断面二次モーメントは大きくは変わらない。
Ver07と比べるとVer08はMode7の固有値が低い。
Ver07のサイド補強変更が効いていると推定できる。
Ver05~07に対して、若干固有値が低いのは、補強部ユニット逃がし径の違いによる。
Ver08はVer05~07に対して逃がし径が大きい。
箱下角の変形を抑えるには、更に別なアイディアが必要。
箱幅を若干広げるという手もあるか?
●Ver09 「Ver03に対して側板を左右10㎜外側へ移動」
Ver03に対して、左右の側板をそれぞれ10㎜広げた。
これでもVer03に対して幅方向を広げることで若干剛性が上がる。
低域ユニットの取り付け穴径がフロントバッフルの剛性・特にバッフル面と平行方向の剛性に与える影響は大きい。
Mode8は側面下側の太鼓変位は天板と平行な内部補強を強化するか、別補強が必要。
さらに補強を加えてみる。
●Ver10 「Ver09をベースに補強用サブバッフル設置」
Ver09をベースにVer05と同じ位置に補強用サブバッフルを設置。
上部角の変位が大きそうである。
箱上部の補強が必要か?
Mode7の固有値が600Hz近くなったので相当に向上したとは思うが、中々良いバランスが見当たらない。
もう一度前に戻って、Ver08をベースに補強を考えてみる。
Ver10.1として、Ver10のフロントバッフルを21㎜→30㎜へ厚さを変更をしてみる
●Ver10.10 「Ver10をベースに寸法を微調整」
板厚 : 21㎜
幅 : 290㎜
高さ : 510㎜
奥行き : 332㎜
(幅290㎜板に21㎜厚のフロント・リアが足される)
これで縦方向に長い一番大きな板は、4枚とも同じ寸法となる。
特定周波数での共鳴を避けるためには寸法をずらした方がよいが、剛性は同じとならないので、前後左右の板が同じ周波数の固有値を持つことは無い。
Mode8の固有値が若干低下するが、他の周波数に与える影響は大きくは無い。
●Ver10.1 「Ver10をベースにフロントバッフルの板厚を変更」
フロントバッフルの板厚変更がどの程度影響するかを検討する。
フロントバッフル : 21㎜→30㎜
Mode7の固有値が600Hzを超えた。
落としどころとしては悪くない(高級バージョンならこれか)。
色々弄って、補強なしから5割増しまで来た。
●Ver10.2 「Ver10.1をベースに内部補強の板厚を変更」
天板に平行な内部補強の板厚を変更 21㎜→30㎜
これでフロントバッフルと今回変更した補強部が板厚30㎜となった。
Mode7の固有値は上昇するが、Mode11ではあまり効果がない。
この変形を抑えるには裏蓋の肉厚を増す必要がある。
Mode8/11には天板の変形が大きく出ているので、この部分は別な補強が必要。
●Ver10.3 「Ver10.2をベースに補強追加・背面板厚を変更」
背面(裏蓋)の板厚 : 21㎜→24㎜
天板と底板の内側に斜め(高さ50㎜)の補強を入れたが、思ったほど補強の効果が出てきていない。
Mode7からそれぞれのModeで固有値が低下していので、補強により剛性が向上している以上に重量が増しており、効果的な補強となっていないと考えられる。
●Ver11 「Ver08をベースに補強用サブバッフル設置」
Ver08(フロントバッフル2重)に補強用サブバッフルを加える。
天板と平行な前後を結合する補強は30㎜幅。
Ver08が519.41Hz → 603.63Hz
微妙です。
●Ver12 「Ver11をベースに内部補強用幅変更30㎜→50㎜」
側板の変形を抑える効果はあるが、フロントバッフル下角の変位を抑える効果は低い。
目標がないといつまでも終わらない。
比較対象の箱は右側 Accuton_3Way が市販箱ベース:MD20で628.76Hzなので、これは越えたい。
今回の箱とMD20を使った3Wayを比べると、今回の箱の方が一回り大きい。
低域が18cm →23cmに拡大しているので、箱幅も大きい。
それでも、もう一ひねりしたい。
●Ver13 「Ver08に対して側板を左右10㎜外側へ移動」
Ver08 Mode7 : 532.32Hz
→Ver13 Mode7 : 575.10Hz
内側の抜き穴は変更していないので、幅方向の補強は30㎜→40㎜へ増えている。
フロントバッフル シングルのVer09 Mode7 : 507.61Hzなので、フロントバッフルはシングルで上手く処理できればその方が良いか。
●Ver14 「Ver13に対して内部補強を追加・変更」
内部補強厚さは21㎜×2。
フロント下部は合計84㎜でもこの程度。
根本的に見直した方が良いか。
こうなると、同じ板厚で頑張っても解がない。
●Ver15 「これまでの足かせを全て外して」
板厚を増加 基準板厚は24ミリ。
フロントバッフル 30㎜×2
地板 30㎜
幅 : 298㎜
高さ : 510㎜
奥行き : 346㎜
箱部材容積 : 20L ( 比重:0.8として 16kg / 塗装等をいれても、この程度で収まる見込み / ユニットを除く) ベース(Ver09)よりは2割り増し。
(ない容積はほぼ30Lを確保)
ずいぶん強度を上げたと思ったのだが、変形のでる最小次数で比較して取り分が出せていない。
Ver10 Mode7 : 593.77Hz Mode11 : 819.61Hz
Ver15 Mode7 : 574.52Hz Mode11 : 908.68Hz
重く、大きくなっている割には微妙な結果。