設立趣旨

医療の目的はこれまで“命を救うこと”に重点が置かれ、診断・治療中心の医師主導型の時代が長く続いてきました。しかし医療の進歩や超高齢化社会の到来と共に、治療できる疾患が増えた一方、治らない“共存”すべき疾患や障害も明らかになってきました。

そして20世紀後半から、“患者満足度・QOLの向上”がキーワードとして強調され、医療者主導の「してあげる医療」から、“安心・選択”といった「患者の希望に沿える求められる医療」が重要な視点となって参りました。

さらに21世紀に入って、医療者と患者のパートナーシップが強調され、医療に限らず生活全般にわたる支援が目的とされるように,大きく変わってきました。そのため医療の連携範囲は保健・福祉 さらに地域生活全般へと広がり、地域包括ケア時代として、医療がまさに生活資源として大きく見直されることとなりました。

また近年の医療制度改革により、「患者主役の医療」と「医療費抑制」という一見矛盾するような命題の実現が求められ、「施設完結型から地域完結型へ」のスローガンのもと、医療機関間の連携にとどまらず、医療機関が地域特性を踏まえた上で、多くの地域資源と連携して、患者の真のニーズを実現するために“協働”することが強調されるようになりました。

このような背景のもと、全国の国立大学医学部に地域医療連携や患者相談支援などを行う部門が設置され機能強化が図られ、この約10年の間に着実に発展して参りました。特に2005年、「医療連携・退院支援関連部門連絡協議会」(以後連絡協議会)が発足し、その活動の充実強化へリーダーシップを発揮してきております。

この数年間の連絡協議会の取り組みにより、当該部門の活動は充実強化され、院内外で評価されるに至り、大学間のバラツキは見られるものの、概ね創生期・第一ステージは終盤を向かえ、いよいよ発展期・第二ステージの段階に入ったと考えています。

そこで連絡協議会との連携のもと、互いの情報交換の推進や連携強化を進め、当該領域の全国的な充実強化に寄与することは当然として、当該領域に関する共同調査・研究などを推進し、アカデミックな観点からも充実を図ることを狙いとしています。さらに、高いマネジメント能力が求められることから、当該領域を担う人材を育成するための教育支援を行い、あわせて地域医療・福祉関係者および住民への生涯教育のサポート等にも取り組んで行かなければならないと痛感しております。

以上のように、当該部門の第二ステージとしての活動を実現・充実させるために、「日本医療連携研究会」の設立に至りました。

本研究会の発足を契機に当該部門の活動が充実し、より広く理解され活用・評価されることは、地域の保健・医療・福祉における公衆衛生の向上と増進に寄与することとなり、“医療崩壊”といわれるこの厳しい時代を切り抜け、そして地域包括ケア時代に向けたパラダイムシフトへの大きな原動力となると考えています。

是非、この趣旨にご賛同いただき、本研究会への理解と協力をお願いしたいと思います。

 

日本医療連携研究会 理事長