5. ショウジョウバエを用いたアンチエイジング物質の探索法の開発と作用メカニズムの遺伝学的解析
ショウジョウバエを用いたアンチエイジング
物質の探索法の開発と作用メカニズムの遺伝学的解析
研究の背景
食品添加物や農薬の中には、種々の疾患や生体老化の原因とされる活性酸素を産生させるものがあります。このような物質の検知には個体によるアッセイ法が必須ですが、マウス等を使うと時間と費用がかかるという問題があります。その代わりに遺伝子改変した昆虫を用いれば、多数の個体による迅速かつ高感度なアッセイが期待できます。
研究の目的
活性酸素の除去に必要な酵素群が欠損したショウジョウバエの突然変異体を用いて、 食物中の残留農薬パラコートを高感度で検知できる実験系の構築をおこなっています。同じ方法が抗酸化物質の探索にも応用できます。抗酸化物質の中には老化抑制作用も示すものもあるので、この実験系を抗老化物質の探索にも応用することを試みています。
研究の結果
■活性酸素の除去に必要な酵素群(Cu/Zn-SOD、Mn-SOD、チオレドキシン還元酵素など)が欠損したショウジョウバエの突然変異体は、いずれもパラコート農薬に高感受性になります。
■これら変異体の成虫は、低濃度パラコート(25microM以下)を摂食した場合でも致死率の上昇が認められます。現行の分析法を超える高感度なバイオアッセイ法の構築が期待できます。
■上記の突然変異体は、抗酸化物質の探索にも使用できます。
■これらの突然変異体は早期に老化し、成虫寿命の短縮が認められます。これに対して抗老化効果を示す化学物質、天然物を探索しています。
■昆虫個体とマウスを用いた比較研究により、天然物より抗老化物質の同定をめざします。
研究の応用
■食品添加物や残留農薬などの酸化ストレス物質が生体に与える影響を高感度かつ迅速に検出できるバイオアッセイ系の開発。
■マウスより寿命が短い昆虫を用いることにより、より速く抗老化物質の候補を絞り込むことが可能です。
将来展望
■疾患や生体老化の原因になる酸化ストレス物質を迅速、低コスト、高効率に検知できる昆虫バイオアッセイシステムの開発。食の安全性確保に役立てます。
■昆虫モデルとマウスを用いて選別した抗老化物資の候補の中から、老化予防の健康食品などの開発を目指します。
共同研究者
佐藤健司教授 京都大学大学院農学研究科
松田修 教授 京都府立医科大学大学院医学研究科