病原体の感染から発症に至るまでには、宿主が病原体に応答して遺伝子やタンパクの発現が変化します。これらの情報を調べることで、愛玩鳥での感染症と宿主応答との相互作用による病態機序を解明します。
愛玩鳥でのトリボルナウイルス感染症を主体として、鳥の脳の初代培養細胞や生体を用いての病原体の動態と細胞の応答、病原体の遺伝子レベルでの変異の解析を行なっています。
日本の野生化した飼い鳥の病原体の野外調査や、日本に輸入される愛玩鳥の繁殖地であるフィリピンなど海外での病原体の野外調査を通じ、愛玩鳥や愛玩鳥を取り巻く環境および人の健康の向上を 目指します。
トリボルナウイルス、嘴羽毛病ウイルス、トリ白血病ウイルス
オウム病クラミジア、サルモネラ、クリプトコッカス
現在は愛玩鳥の感染症を中心に研究を進めていますが、動物感染症の病態解明と公衆衛生の向上を上位目標としており、犬・猫などの伴侶動物や牛・豚などの家畜の感染症も研究対象です。
愛玩鳥の容姿の華々しさとは反対に、愛玩鳥を標的とした研究はとても地味で、根気が必要です。
愛玩鳥を標的として作製された抗体や培養細胞などの研究材料はほぼなく、愛玩鳥の遺伝子情報でさえ多くありません。遺伝的背景や感染症が管理された実験動物としての愛玩鳥も存在しません。ネズミやヒトを対象とした研究とは難易度が大きく異なります。しかしながら、困難が多いが故に、小さな研究成果であっても成し遂げた時の喜びは非常に大きく、言い尽くせない感動があります。
地味な一歩というのはとても大切で、一歩一歩積み重ねていけば、必ず前進します。困難に負けない精神力、原理原則の理解に基づく発想力、創意工夫をこらす遊び心、など研究を通じて得られるものは数多くあります。
誰もやっていないことをやるのは、大変だけれど実はとても楽しいのです。
今年度からようやく学生さんも所属し、毎日楽しくなってきました。若者の力を推進力にして、研究を推し進めたいと思います。
2022年11月3日
東京農工大学
農学研究院動物生命科学部門
准教授
オブライエン悠木子