分子遺伝学
Molecular Genetics
Molecular Genetics
生命のしくみを理解するために生体分子のはたらきを研究しようとするとき、その生体分子を細胞から取り出してさえしまえば、試験管内で様々な分析を行えます。しかし同時に、その生体分子を取り巻く環境を細胞内とは大きく変えることになってしまいます。分子遺伝学は、生きた細胞のなかの環境で生体分子 — 特に遺伝子産物であるタンパク質分子 — のはたらきを分子レベルで検証しようとする数少ない研究アプローチです。
細胞内の環境にある生体分子に実験操作を加えるために、その生き物のその遺伝子を操作することができます。タンパク質分子のはたらきを検証するのであれば、タンパク質の一部分を除去するため該当する DNA 配列を欠失させたり、タンパク質のあるアミノ酸を別のアミノ酸に置換するため該当する DNA 配列に変異を導入したりすることができます。このように改変したタンパク質を細胞内の環境に送り出すことによって、そのタンパク質のどの部分のどのアミノ酸残基(のどのような特徴)が、細胞内ではたらくうえで重要な役割を果たしているのか検証できます。
タンパク質は数百から数千残基のアミノ酸が連結したポリマーです。本来とは異なるアミノ酸に置換することを考えると、アミノ酸残基ひとつにつき 19 種類の変異体が構築できます。タンパク質全体では膨大な数の変異体を構築でき、それらを実験的に検証するのは非現実的です。そこで、ひとつのタンパク質あたり平均 1 箇所の変異をランダムに導入し、多数の変異体が含まれる変異タンパク質ライブラリを作成して探索的な実験を実施します。このような探索実験によって、そのタンパク質のなかで重要な役割を果たす部位や官能基の傾向を網羅的に検証することができます。
私たち生命分子遺伝学分野では、「細胞内でタンパク質が合成される仕組み」を中心に、細胞内で起こっている現象を「生体分子のはたらき」として理解するための最も効果的な実験アプローチとして、このような特徴を持った分子遺伝学の観点から研究に取り組んでいます。
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