反福祉論―新時代のセーフティーネットを求めて
高福祉が財政上期待できず、ニートや派遣切りを当たり前のように聞く時代に突入しました。いわゆる非正規雇用の拡大でいつ私たちが社会の外側に放り出されるかわからない状況が続いています。そのなかで、理想や福祉制度の拡充を求めるのではなく、現場の最先端の工夫や実践に学ばない手はない。
普通は障害や老人、児童といった対象別・領域別に行う縦割り行政の支援だが、要介護、認知症、原発避難者、知的障害など“あらゆる人々”を受け入れているサポートセンターとは何か?
災害で生活に困窮した人々を救い出すのは、その地に外から新たに産業を興すやり方ではなく、100人で一歩前に進むことができ、一人の困窮者も出さずにみんなで立ち上がる自前の仕組みであった。
本書は、不法占拠者や生活困窮者、災害被災者、ホームレスなど、福祉の制度から漏れてきた人びと(現代の「忘れられた日本人」)が、公助に頼らず自助・共助によって展開する生き生きとした暮らしを考え、制度に替わるセーフティーネットの仕掛けを発達させてきた彼らの生き方に学び、「反福祉」の考え方を提唱する。制度にがんじがらめになっている福祉の現状に警鐘を鳴らし、誰もが生きやすい社会を構想しました。
《目次》
はじめに―いまなぜ反・福祉論が必要か
第1部 現代の「忘れられた日本人」-制度外の人びとによる生活保障
第1章 「飛行場」に住まう在日コリアン
第2章 福祉版「シンドラーのリスト」
第3章 大津波における「ノアの箱舟」
第4章 ドヤガイのスピリチュアル・ケア
第2部 福祉制度に替わるセーフティーネット
第5章 ホームレスとしてのイエス・キリスト
第6章 福祉に挑むドン・キホーテ
第7章 生きられた法
おわりに 制度から実践へ
あとがき