2020/02/26

Post date: Feb 26, 2020 8:25:03 AM

論文が3報出ました。

Hirose M., Gordon D.P. and d’Hondt J-L. (2020)

New seriated Amathia species in Japan, with a redescription of A. acervata Lamouroux, 1824 (Bryozoa: Ctenostomata).

Zootaxa, 4742(2): 311–331.

ツブナリコケムシの仲間4種(3新種を含む)の記載論文です。

これまで日本で得られるものは海外でも報告のある既知種とされていましたが,

観察したところそのほとんどが新種となりました。

よく牡蠣小屋で火炙りになっているコケムシも新種だったことが判明しました。

また,昭和天皇が採集された標本からも新種を発見・記載しました。

さらに,フランスの国立自然史博物館の海藻コレクション中から発見された,

1804年採集の乾燥状態のタイプ標本についても,

リン酸ナトリウム溶液に浸して乾燥状態から復元したものを観察・再記載しました。

Hirose M., Ide A. and Shirai K. (2020)

The growth of Celleporina attenuata estimated based onthe oxygen isotopic compositions

and microfocus X-ray CT imaging analysis.

In:K. Zagorsek and P.W. Jackson (eds) Bryozoan Studies 2019, 69–82.

コケムシ群体の卓上microCT観察と同位体比分析に基づく成長履歴解析の論文です。

岩手県大槌湾の湾口部水深70 m付近に生息しているサンゴ状のコケムシ(コブコケムシ科の一種)は,

年間4~5 mmほど成長し,夏季に成長線を形成していると考えられます。

また,異なる枝であっても,同時期の成長量はほぼ同じであることがわかりました。

Orr RJS, Haugen MN, Berning B, Bock P, Cumming RL, Florence WK, Hirose M, Di Martino E, Ramsfjell MH, Sannum MM, Smith AM, Vieira LM, Waeschenbach A, Liow LH. (2019)

A genome-skimmed phylogeny of a widespread bryozoan family, Adeonidae. BMC Evolutionary Biology 19: 235.

https://doi.org/10.1186/s12862-019-1563-4

ツノコケムシ科内の系統関係に関する研究です。

これまで調節嚢孔が一つ孔のものをAdeona 属,複数の孔から成るものをAdeonellopsis 属としてきましたが,

日本で得られるツノコケムシがAdeona とAdeonellopsis の間に位置することがわかりました。

じつはツノコケムシの調節嚢孔は,常個虫は1~2個,生殖個虫は複数個なので、

まさにAdeona Adeonellopsis の中間的な形質をもっているといえます。

この論文では,ツノコケムシの属をAdeona 属とすることで決着しました。