紙の原料

紙は何を原料に作られているのだろうか?

紙の百貨店 因州屋『和紙なんでもQ&A』を参考にまとめました。

日本には、北は北海道から南は沖縄に至るまでで350種類に及ぶ和紙があります。和紙には、大きく3つの原料による紙の種類があります。

① 楮(こうぞ)紙類

コウゾは、クワ科の落葉低木で毎年株から出る枝を切り取り皮を剥いで原料とします。

コウゾの繊維は太くて長く(10ミリ~15ミリ)非常に強靭で繊維が絡み合う性質があるため強度を要求する和紙の代表的な原料です。全国各地でコウゾは栽培されていますが、最近、タイ国を中心にした外国産コウゾがかなり輸入されています。

楮紙は用途別大きく2つに分けることができます。

① 記録用紙として、西の内紙(茨城)、程村紙(栃木)、細川紙(埼玉)、小国紙(新潟)、内山台帳用紙(長野)、本美濃紙(岐阜)、黒谷和紙(京都)、杉原紙(兵庫)、石州半紙(島根)、生漉奉書紙(福井)

障子紙として内山障子紙(長野)、美濃書院紙(岐阜)、土佐障子紙(高知)

② 表具用として宇陀紙・美栖紙(奈良)、楮紙(埼玉、京都、高知)薄美濃紙(岐阜)、石州楮紙(島根)、大唐紙(高知)、美栖紙・肌裏紙(福岡)

など、全国和紙生産地の特色を生かした紙が産出されています。

●三椏(みつまた)紙類

ミツマタは、ジンチョウゲ科の落葉低木で、繊維は細く短く(4~5ミリ)光沢があり、緻密で平滑な印刷特性に富んだ和紙ができ、代表的な紙として紙幣用紙、金紙銀糸用紙、箔合紙があげられます。

三椏紙には、鳥の子紙・流雲(福井)、三椏半紙(鳥取)、石州三椏紙(島根)、津山箔合紙(岡山)、改良半紙(愛媛)、清光箋(高知)など、書道用・絵画用紙を中心に特殊な用途にミツマタが使われています。

●雁皮(がんぴ)紙類

ガンピは、ジンチョウゲ科の落葉低木で、繊維はミツマタに似て細く短く、半透明で粘りがあり光沢のある紙が出来ます。

代表的な和紙として箔打紙、古くは写経用紙、謄写版原紙用紙、記録用紙などがあげられます。

現在の雁皮紙には、鳥の子紙(福井)、加賀雁皮紙(石川)、近江鳥の子紙(滋賀)、箔下間似合紙・金下地紙(兵庫)、出雲雁皮紙(島根)、薄様雁皮紙(高知)、雁皮紙(埼玉、島根、福岡)などで絵画、版画、高級表装用紙として使われています。

しかし、最近民芸用として名刺、はがき、便箋、書道用紙の中にフィリピンガンピ(サラゴ)が使われていることがあります。

ここまで、和紙の三大原料による紙の種類を説明してきましたが、用途によって和紙は一種類のみの原料で作られているのではなく、数種類の原料を配合してつくられます。

●書道用紙類

書道用紙は、墨のにじみ具合、墨色、かすれ筆の抵抗感など書道家からの要求に応えるため非常に非常に短い繊維をいろいろ配合し紙の特色を出すように配慮しています。

原料としてミツマタ、コウゾ、ガンピ、イネ藁、タケ、マニラアサ、パルプ、故紙、ワタ、イグサ、リュウズソウなどが用いられ、書道半紙(山梨、鳥取、愛媛)、画仙紙(山梨、鳥取、福井、高知)、二双紙(山梨)、かな料紙(長野)、三椏半紙・唐紙(鳥取)改良半紙(愛媛)などがあげられます。

●美術工芸用紙類

和紙の持つ柔らかさ、暖かみ、色相、また和紙を破ることによる繊維の毛足の面白みなどを利用して、紙画や紙人形・押し絵・ペーパーフラワー・ラッピング用などに和紙は欠かせない素材として広く利用されています。その他美術装丁用や民芸用紙としても使われています。

原料としては、コウゾ、ミツマタ、マニラアサを初め変わった原料としてササ、革、スギ皮、イトバショウ、イグサ、ガラス、

パルプ、レーヨンなどで、笹紙(北海道)、CSペーパー(埼玉)、麻紙(福井、高知)、金和紙(高知)、芭蕉紙(沖縄)があります。

●その他の紙類

 限られた和紙産地で伝統ある技術・技法で生産される和紙で、タイマ、チョマを主原料とした日本画用の紙として麻紙、雲肌麻紙、M.O紙(福井)、土佐麻紙、白麻紙(高知)が作られています。

また、パルプを主原料とする和紙では名刺、はがきなどもあります。