墨の原料

墨の原料は、何だろう?

『墨運堂』ホームページを参考にまとめてみました。

固形墨の原料は、(すす)・ 膠(にかわ)・香料です。

夏場は気温が高く湿気の多いため膠が腐りやすく、 墨造りに適しません。墨造りは毎年十月中旬から 翌年四月末位までの寒期に行います。

膠(にかわ)

 牛や鹿の皮から作る動物性のたんぱく質で、本来水には溶け ない煤を包み込み、 水の中で安定させるのが役割です。また、紙の上に置かれた煤を定着させる接着剤としての役割も持ちます。

紀元前1470年のエジプト王の墓所の壁に、膠の製造工程が 図解されており、 その墓の副葬品の椅子や机の接着には膠が使われ ていたということです。 皮を煮て、一番にとれる膠がもっとも良く後になるほど質が落ちます。

膠の特性

①ゲル化する・・・水温が18℃以下になると急激に増粘し、ついにはゼリー状に固まります。ゲル化温度は膠により異なります。

②加水分解する・・蛋白質なので、水中では急激に膠の高分子の鎖が切断され粘度低下を起こし、酸化作用により炭酸ガスと水に変化します。

③腐敗する・・・・・動物性蛋白質ですから細菌の最高の食料であり、非常に腐敗し易いです。

香料

膠の匂いを消すために用いられましたが、 使う人の気持ちを落ち着かせるという副次的な作用もあります。 墨に使用する香料は刺激的な香りではなく、側に置いておくと、 そこはかとなく香りが漂ってくるという 「幽香」です。

香料には、昔は天然香料の麝香(じゃこう)竜脳(りゅうのう)・ 白檀(びゃくだん)・甘松末・梅花などが使われていました。

今では、合成香料の梅花・麝香等多種普及しています。

墨の箱を明けた時に漂う香りは、 振香(ふりか)といって 包装時に箱に入れる香料の香りです。

麝香(じゃこう)は、麝香鹿(じゃこうじか)の香嚢です。この中に香料が入っています。