会社でおこなう労務手続きについてご説明します。
健康保険と厚生年金を合わせて社会保険といいます。
健康保険
被保険者(従業員)やその家族が病気やケガをした場合に、一定の負担だけで治療や療養を受けられる制度です。
健康保険が使えないと、被保険者やその家族は治療などにかかった費用の全額を支払わなければなりません。
厚生年金保険
従業員の将来や障害などに備える公的年金制度です。
保険料を納めることで、退職後や障害になった場合に年金を受給できます。
会社側の社会保険加入要件は以下のとおりです。
強制適用事業所:従業員が常時5人以上いる事業所
任意適用事業所:強制適用事業所以外で一定要件に当てはまる事業所
強制適用事業所は加入義務があり、未加入のままでいると罰則もあります。
それ以外の事業所は、一定の要件のもと、任意適用事業所として社会保険に加入することが可能です。
役員と従業員について、以下の要件を満たす場合は、社会保険に加入できます。
役員:役員報酬の支給があること
従業員:正社員であること、または、一定条件を満たす従業員であること
・週の所定労働時間が20時間以上
・2ヶ月超の雇用見込みあり など
会社設立後、社会保険の適用を受ける場合は、以下の手続きが必要です。
<新規適用届>
提出先:年金事務所
期限:会社設立から5日以内
不備や提出漏れに伴うリスク
・将来の従業員の年金額への影響
・不適切加入による従業員とのトラブル
<被保険資格取得届>
提出先:年金事務所
期限:被保険者資格を取得してから5日以内
不備や提出漏れに伴うリスク
・将来の従業員の年金額への影響
・不適切加入による従業員とのトラブル
<任意適用申請書>
任意適用の場合は新規適用届と一緒に作成します。
なお、上記の各種手続きは社会保険労務士の管轄業務になります。
カイポケ税理士サービスでは手続きの相談や代行は承れませんのでご了承ください。
下記のような場合は、会社側で社会保険の手続きが必要になります。
被保険者の資格に変更があった場合(従業員の入退社や契約変更など)
被保険者の扶養家族に変更があった場合
<加入要件を満たすようになったとき>
手続名:被保険者資格取得届
ケース:従業員の入社時や契約変更時
「被扶養者(異動)届」
被保険者となる従業員に扶養している家族・親族がいる場合に作成します。
<加入要件を満たさなくなったとき>
手続名:被保険者資格喪失届
ケース:従業員の退職時や契約変更時
<その他>
手続名:被扶養者(異動)届
ケース:従業員の入社時や被扶養者の異動があったとき
要件:被保険者となる従業員に扶養している家族・親族がいる場合に作成
被扶養者(異動)届を提出するタイミングは、下記のとおりです。
・被保険者の資格取得時に被保険者資格取得届と一緒に提出
・資格取得後に、被扶養者の追加・削除や氏名変更等があった場合に単体で提出
会社が定期的に行う社会保険の手続きとして「算定基礎届」があります。
その年の9月から1年間の社会保険料を決定するため、毎年提出する書類です。
4月から6月の従業員の報酬金額を申告し、社会保険料の計算の基本となる「標準報酬月額」が決定されます。
手続きの概要は下記です。
手続名:算定基礎届(定時決定)
提出先:日本年金機構
期限:毎年7月10日
対象:7月1日時点で在職中であり、社会保険の被保険者の全ての従業員及び70歳以上の被用者
対象となる人
下記に当てはまる人も対象になります。
・育児休業中、介護休業中、病気療養中の人
・2ヶ所以上の事業所に勤務している人
・出向中で給与を支払われている人
一方、下記のいずれかに当てはまる人は算定基礎届の対象外です。
・6月1日以降に社会保険に加入した人
・6月30日以前に退職した人
・7月の随時改定で月額変更届を提出する人
・8月または9月に随時改定の予定があると申し出ている人
なお、上記の各種手続きは社会保険労務士の管轄業務になります。
カイポケ税理士サービスでは手続きの相談や代行は承れませんのでご了承ください。
労災保険と雇用保険を合わせて労働保険といいます。
労災保険
労働者が仕事や通勤が原因下記に当てはまった場合に、被災労働者や遺族保護のために給付などを行います。
・負傷した場合
・病気になった場合
・亡くなった場合
労災保険の保険料は全額会社負担となります。
雇用保険
労働者が下記に当てはまる場合に、生活・雇用の安定と就職促進を図るための給付などを行います。
・失業した場合
・働き続けることが困難になった場合
・自ら教育訓練を受けた場合
雇用保険の保険料は、従業員と会社で負担率が決まっており、それぞれ負担します。
会社側の労働保険の加入義務要件は以下のとおりです。
労働者を1人でも雇っている事業所
※労働者の雇用形態にかかわらない
役員と従業員について、労働保険の加入要件は以下のとおりです。
役員:対象外
従業員:
・労災保険:雇用形態に関わらず全員が対象となる
・雇用保険:一定条件を満たすこと
・週の所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用見込みあり など
会社設立後、労働保険の加入要件に該当する場合は、以下の手続きが必要です。
<労災保険>
手続名:労働保険関係成立届
提出先:所轄の労働基準監督署・公共職業安定所
期限:保険関係成立日の翌日から10日以内
手続名:労働保険 概算保険料申告書
提出先:所轄の労働基準監督署・公共職業安定所
期限:保険関係の成立した日から50日以内
備考:申告書の提出と同時に保険料1年分の納付が必要
<雇用保険>
手続名:雇用保険 適用事業所設置届
提出先:所轄の公共職業安定所
期限:事業所設置日の翌日から10日以内
手続名:雇用保険 被保険者資格取得届
提出先:所轄の公共職業安定所
期限:事業所設置日の翌日から10日以内
下記のような場合は、会社側で社会保険の手続きが必要になります。
被保険者の資格に変更があった場合(従業員の入退社や契約変更など)
<加入要件を満たすようになったとき>
手続名:雇用保険 被保険者資格取得届
ケース:従業員の入社時や契約変更時
<加入要件を満たさなくなったとき>
手続名:雇用保険 被保険者資格喪失届
ケース:従業員の退職時や契約変更時
会社が定期的に行う労働保険の手続きとして「労働保険年度更新」があります。
労働保険料はその年の賃金総額の見込額をもとに保険料を前払いするため、年に1度の申告で精算や納付をおこないます。
手続きの概要は下記です。
手続名:労働保険年度更新
期限: 毎年7月10日
必須/任意:必須
申告・納付方法:電子申請・金融機関・都道府県労働局・労働基準監督署のいずれか
※申告書の提出のみなら社会保険・労働保険徴収事務センターでも可
実施事項:
・確定保険料(前年度に納めた労働保険料)を申告し精算する
・新年度の概算保険料を申告し納付をおこなう
不備や提出漏れに伴うリスク:
・業務上の事故が発生した際の補償が全額会社負担になる
・失業時の補償が受けらない
・不適切加入による従業員とのトラブル
下記の書類については、労働基準法にて事業所での備え付け義務が定められています。
不備のある場合は、罰金や懲役などの罰則があります。
備え付け義務のある書類と、その保管期限をご紹介します。
法定3帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿):5年間
労働条件通知書:3年間
就業規則:3年間
36協定:3年間
※いずれも原本での保管が義務
各書類の書式は任意で、厚生労働省のホームページからもダウンロードが可能です。