How to Write Your Thesis
卒業論文の書き方について
(初心者向け)
卒業論文のフォーマットと、書き方についてのTipsをこのページに掲載します。
着任当初は指導する4年生が1人しかいなかったので、研究の内容はもちろん、一文一文確認しつつ、一つ一つの言葉や段落構成まできめ細かく指導していたのですが、近年指導する学生さんもそれ以外の仕事も増えてきているので、一人ひとりに細かい指導ができなくなりました。そこで、うちのゼミ生が適宜確認できるように、そして私も色々忘れないように、卒論の書き方についてこのページで公表します。ゼミ生には、卒論執筆時に困ったときは、適宜読み直してもらえればと思います。
まず、論理的な文章を書く上で常に念頭に置くべき大前提は、「読みやすい文章を書くよう心がけること」、「そのために、自分で書いた文章を何度も読み直して推敲すること」です。卒論に限らず、皆さんが書いて提出する重要な文章は、誰かが何かの目的で読むものです。卒論やレポートであれば教員が学生さんを評価するために読みます。就職活動のエントリーシートであれば、採用担当者が志望者を評価するために確認します。仕事で作成する文書は、上司や同僚、部下、取引先などが使います。このとき、もし作成された文章が理解し難いものであれば、読むこと自体、とても苦痛なものになってしまいます。評価が下がる可能性もあるでしょう。せっかく皆さんが素晴らしい知識や経験を積み重ねたのに、それが読者に上手く伝わらずに評価が下がってしまうのは、とてももったいないことです。皆さん自身のためにも、早い段階で「読みやすい文章にするには、どのように書けば良いだろうか」と考えて書くようになってもらいたいと思います。
とはいえ、全くとっかかりがない状態で始めるのも大変だと思いますので、論文執筆初心者の方向けに汎用性の高い卒業論文の書き方、いわば基本の「型」をお伝えします。スポーツと同じく「型」に倣うことで得られるものは多いはずです。卒業論文やレポートの執筆時に活用することで、わかりやすく説得力のある文章を書く力を養ってくれることを願っています。
ちなみに、体系的にレポートや論文、ビジネスでの書類の書き方を学びたい方は、「『論理が伝わる世界標準の「書く技術」』,倉島保美著,講談社,2012年。」をお読みください。紆余曲折した末に私がたどり着いた書き方に近いことが、とてもわかりやすく書かれています。学部生のときに出会いたかった本です。
※気まぐれな吉永が気が向いたときにアップデートしますので、内容は予告なく変更される可能性があります。
※上記のファイルはMicrosoft Wordでの使用を前提としています。Google ドキュメント等、他のソフトウェアを使用するとフォント等が崩れる可能性が高いので、ファイルのダウンロード後はMicrosoft Wordでのみ編集することを強くおすすめします。
吉永ゼミ卒論フォーマット 更新履歴
2022/11/30:目次にある要旨のページ番号がずれてしまっていたため、目次に要旨とそのページ番号が表示されないように修正しました。
卒業論文の基本と進め方
卒論論文とは?
卒業論文は本学経済学部を卒業し、学士の学位を取得するために提出する必要があるものです。卒業論文は自身の研究を通じて得られた知見を記す学術論文の1種なので、それ相応の質が求められます。うちのゼミでは4月から12月の期日までに執筆して頂き、提出できるよう指導します。
なんで卒論論文を書くの?
そういうルールだからというのも正しいと思いますが、以下、卒論を通じて得られるであろう能力について、以下一例を挙げておきます。
論理的思考力
論文は、客観的な論拠に基づいて自身の主張を提示する文章です。こうした文章を書くことで養われる論理的思考力は、他者との建設的な議論や、説得、交渉に役立ちます。
情報収集力
客観的な論拠に基づいて自身の主張を提示する論文を書くためには、論拠となる客観的なデータや十分に認められた先行研究の証拠等が必要になります。必要な情報を収集して解釈する力があれば、卒業後も新しい情報を自分で収集して学ぶことで、変化に対応できるようになると思います。
文章力
東北大学経済学部の卒論は12,000字程度という、「そこそこ」の文量で執筆することになっており、文量が多いほど、全体の構成を考えつつ執筆することが重要になります。そのため、卒論の執筆を通じて高度な内容を順序立てて上手く伝える文章力を養えることでしょう。
問題解決能力
卒論では、自身の関心に基づくテーマについて、先行研究で判明している内容を調査し、問題意識や論文の目的を設定し、目的を果たすための手段となる分析方法を考えて分析を行い、その結果を解釈し、文章にまとめる必要があります。これらの手順をきちんと踏んで卒論を執筆できれば、卒業後に何か解決すべき問題に直面したときに対応できる可能性が高まると思います。こうした総合的な問題解決能力を養うことが、卒論をゼミで指導する理由です。
研究とは?
「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて 研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書(要旨)」には、下記のように記されています。
『研究活動とは,先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で,観察や実験等によって知り得た事実やデータを素材としつつ,自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し,知の体系を構築していく行為である。』
すなわち、人類にとっての知の体系の改善や構築に務める活動が研究です。自分にとっての理解を深めることを目的とする勉強とは異なることに注意が必要です。自分は理解できていないので調べたいと思っていても、既に先行研究で十分に明らかになっていれば、それは研究にならないからです。
卒業論文で指導している学術論文の種類は?
論文には様々な種類がありますが、私は卒業論文指導時に下記2種類を念頭においています。
仮説検証論文
検証すべき仮説を提示し、それを適切な手法で検証し、結論をまとめるもの。
レビュー論文
二十本以上の先行研究をまとめることで、何らかのテーマについてこれまでに明らかになった内容をまとめ、今後さらに検討すべき内容を明らかにするもの。
卒業論文(4年ゼミ)のスケジュールは?
前期
初回で卒論の概要を説明し、卒論で取り組むテーマを考えてもらいながら、簡単なテキストを元に論文がどういうものか理解を深めるようにします。
①テーマ出しと②文献と実態調査を主に行ってください。その中で、③研究課題の導出を完了するのが前期の目標です。
夏休み
自分のペースで進めてください。何かあれば対応します。
後期
各自研究を進め、11月末には初稿を吉永に提出してください。コメントを付けて返却します。眼精疲労を患っていますので、力をかけてしっかりコメントするのは、このときの1回だけです。
12月の期限までに卒論を教務係に提出してください。
1月には、下級生に向けて卒論報告会、就活報告会を実施します。
卒業論文はどうやって進めれば良い?
卒論の進め方は人によりますし、前のプロセスに戻ることもよくありますが、仮説検証論文の場合、概ね以下のプロセスで進めるのが理想的です。
テーマ出し
実態調査と文献調査
研究課題の設定
仮説の設定
分析手法の立案
分析の実施と結果の解釈
論文執筆
レビュー論文の場合、4~5のプロセスの代わりに、ひたすら文献調査と整理を行い、それぞれの文献から得られる知見をとりまとめて議論することに心血を注ぎます。
卒業論文の進め方 ①テーマ出し
最初は、漠然と自分の研究テーマについて、「〇〇について研究したい」などと考えてみてください。これまでの大学生活で興味関心を持った内容でも構いませんし、いくつか書籍や論文、ニュースなどを読む中で興味を持ったものがあれば、それを取り上げても構いません。
テーマ出しでは、具体的な研究目的などを決められていなくても構いません。目的や研究すべき内容は、先行研究や実態調査の中で見つかるものです。
テーマが見つからない時は、「〇〇が最近気になったなあ。」、「〇〇が好きだなあ」、「〇〇が面白いと感じるなあ」、「〇〇が嫌だなあ」など、好きなことや嫌いなこと、面白いことや楽しいことなど、感情が少しでも動いたことについて箇条書きで書いてみて、その中で会計・ファイナンスに関連させて研究を進められないか、と考えると良いと思います。
最初は本命1つに絞らずに2、3個持って来てゼミで報告してもらって構いません。私も皆さんと一緒に、出されたテーマを会計・ファイナンスに関連させられないか考えます。
卒業論文の進め方 ②実態と文献の調査
テーマが決まれば、論文、書籍、記事などで情報収集してみてください。徐々に研究の方向性が決まってくるはずです。
方向性が決まれば、以下のことに注目してまとめてみてください。
研究に関連する現実の状況や、先行研究の内容を整理する。自身の研究テーマの重要性と意義を示せる内容がないかどうかについて調査する。
既に先行研究で何が判明している内容をまとめる。
卒業論文の進め方 ③研究課題の導出
実態と文献調査が進めば、まだ先行研究で判明していないものの、検証すべきと考えられる内容がわかってくると思います。これが自分が追究すべき研究課題となります。
卒業論文の進め方 ④仮説の導出
研究課題について、ここまで調査した内容に基づいて自分で仮説を考えてください。ここで提示する仮説は、科学的な手法で検証可能である必要があります。基本的には、以下のパターンで仮説を作ると検証しやすいです。
①(条件Aのとき)XはYに正/負の影響を及ぼす。
②(条件Aのとき)XはYを予測するのに役立つ。
③(条件Aのとき)Xは正/負である。
卒業論文の進め方 ⑤分析手法の立案
構築した仮説によって、使用される統計分析の手法は変わります。以下に挙げるものは、データがあれば全てエクセルで可能です。
仮説が①のパターン:回帰分析で係数の有意性を調べます。
仮説が②のパターン:回帰分析で決定係数を調べます。
仮説が③のパターン:平均値の差の検定(t検定)などを行います。
ただし、信頼できる先行研究(論文)を参考に分析するのが、オーソドックスで有効な方法です。これまでに調査した論文の中で、参考になる論文があるかどうか、調べてみてください。
その後、仮説を検証するために必要なデータが取得可能かどうか調べます。もし統計分析できるほどのデータを取得できないものであれば、ケーススタディという手法を用いていくつかの事例から一般的な内容を帰納的に導く手法を使います。
卒業論文の進め方 ⑥分析の実施と解釈
結果がうまくでない場合もありますが、その際にはなぜ結果が出なかったのか、考察してください。サンプルを絞ったり、追加分析をすることで仮説に整合的な結果が得られることもあります。
卒業論文の進め方 ⑦論文の執筆
ここまでくれば、あとは文章にまとめるだけです。分かりやすく書くことを念頭において、執筆に励んでください。
卒業論文のフォーマット
卒論論文のフォーマットは?
このページの上にに、吉永ゼミの卒論のフォーマット(docxファイル)をダウンロードできるようにしています。(「吉永ゼミ卒論フォーマット」で検索(Ctrl+F)するとヒットします)レイアウトは自由ですが、適宜、ご利用ください。
また、東北大学経済学部では、卒業論文に規定の表紙をつけるよう指定があります。上のフォーマットには吉永の方で表紙をつけていますが、表紙が最新のものでない可能性があります。提出前に教務係掲示板で表紙のフォーマットが最新のものであるかについて、詳細を確認するようお願いします。
卒論はどのような構成で書けばいい?
卒業論文では、本文の前にタイトル・要旨・目次を作成してください。本文の構成は、基本的に以下のように節に分けます。ちなみに、本学の卒業論文程度の文量で「章」を作るのは大げさです。「章」は100ページ以上の文量で執筆する修士論文や博士論文、書籍などの執筆時に作るものです。
はじめに
先行研究
研究課題と仮説構築
リサーチ・デザイン
分析結果
追加分析・頑健性分析
議論・考察
おわりに
参考文献
論理的な文章をわかりやすく書くにはどうすればいい?
大前提として、書いた文章を読み直すことが大事です。一度文章を書いた後に読み返しておかしなところがないか確認し、余裕があれば数日空けて少し内容を忘れた頃にもう一度読み直して理解できるかどうか確認する、という手順を取るのが良いでしょう。
論理的な文章の基本としては、論拠と主張を1セットにすることが挙げられます。論拠だけでは何が言いたいかわからないですし、主張だけでは感想文になってしまいます。論拠を示してから主張を書く、主張を書いてからその論拠を書く、といった流れで書くと説得的な文章になるでしょう。
論文の中で日常生活で使わない単語を使うときには、その単語の定義を記述するとわかりやすくなります。特に、論文のキーワードについては「はじめに」で定義を書いておくと、読者の頭に内容が入りやすくなります。定義を記述すべきかどうかの判断基準としては、ゼミの3年生がその単語を見て理解できるかどうかで良いはずです。迷ったらご相談ください。
なお、ゼミではフォーマットをある程度指定した上でゼミ生同士で原稿を共有していますので、共有された他のゼミ生の卒論原稿を読んで比較してみてください。なんとなく読みやすい論文と読みにくい論文があると思います。ここで、読みやすい理由や読みにくい理由について考えれば、どのように書けばわかりやすいか、あるいはどのように書くとダメなのかが、自ずと理解できるようになるはずです。
それでも文章力に心配があれば、日本語の作文技術に関する本を1,2冊、パパッと読んでみてください。漠然とした不安は、具体的な行動でもって解決するのです。
卒論の要旨には何をどれくらい書けばいい?
要旨の文量は、200~400字程度です。要旨だけで論文の概要をつかめるように、研究の背景、問題意識、目的、仮説、分析方法、分析結果、結論を手短に書くようにしてください。なお、要旨では段落を分ける必要はありません。1つの段落で文章を記述してください。
「はじめに」では何を書けばいい?
やや直感に反すると思いますが、学術論文の「はじめに」は、サマリーとしての位置づけが強いです。この部分だけで論文の全体像をつかめるように書いてください。つまり、「はじめに」では一般に、下記の内容の概要が記される場合が多いです。
研究の目的と背景。
検証する仮説。
分析結果と解釈の概要。
論文の意義や新規性。
「先行研究」では何を書けばいい?
ここでは、自分の研究に関係する先行研究をまとめることで、自身の研究の位置づけと重要性を明らかにしつつ、仮説を構築するための情報の整理を行います。次の節の内容、仮説構築にうまくつながるように考えつつまとめてください。淡々と先行研究の内容や分析結果を羅列するのはNGです。なぜその内容を取り上げているのかが読者に伝わるようにまとめてください。基本的には、以下の流れをとるとわかりやすいと思います。
研究に関連する現実の状況や、先行研究の内容を整理することで、自身の研究の重要性と意義を示す。
既に先行研究で何が判明しているのかを記す。
まだ判明していないものの、検証すべきと考えられる内容を記す。
次の節である仮説構築につなげる。
なお、卒業論文では先行研究として、最低5本、きちんとした論文を参考文献として選んで記述するようにお願いします。
先行研究の調査方法は?
先行研究の調査方法は色々あると思いますが、私なら2つの方法を組み合わせて芋づる式に調査します。
新しい論文から過去の論文に遡及する方法
興味のあるテーマについて、できるだけ新しい論文を見つける。ここで参照する論文は日本語のものでも構いませんが、参考文献リストを見て英語文献が複数挙げられている文献の方が、その後の作業を考えると望ましいです。
取得した論文の内で引用・参考されている論文のうち、自分のテーマに関係する論文を参考文献リストを元に取得する。ここで取得した論文について、またその論文の参考文献リストを確認しつつ、関係する論文を取得する。これを延々と繰り返す。
古い論文から新しい論文を探す方法
興味のあるテーマについて、Google Scholorで被引用数が多い重要な論文を見つける。
Google Scholorで「引用元」をクリックし、その論文が参考文献として使われている論文を検索する。引用文献数が極めて多い場合など、場合によっては「引用している記事内を検索」をクリックし、自分のテーマに関連するキーワードを検索窓に打ち込んでヒットする論文数を絞る。
ヒットした論文のうち、信頼できるジャーナルに掲載されている論文を確認していく。
調査すべき主なジャーナルは?
下記に一例を記載します。日本語のジャーナルも載せていますが、文献調査では主に英語の査読付きジャーナルを対象にしてください。参考にすべきジャーナルの一例として下記にトップジャーナルのリンクを記載しますが、Scimago Journal & Country Rankに分野別に参考にすべきジャーナルが多数掲載されています。なお、英語ジャーナルは概ね、学内アクセスかMylibraryへのログインが必須となっていますのでご注意ください。
ファイナンス系英文トップジャーナル
会計系英文トップジャーナル
The Accounting Review(Mylibraryより要アクセス)
日本語のジャーナル
証券アナリストジャーナル(冊子体のみ)
会計プログレス(冊子体のみ)
「仮説構築」では何を書けばいい?
ここでは、前節の先行研究で言及した内容や、場合によっては追加的に論文等に言及しつつ、卒業論文で検証する仮説や研究課題を提示します。ここで提示した仮説や研究課題を分析する具体的な方法を、次の節のリサーチ・デザインで記述するのです。
「リサーチ・デザイン」では何を書けばいい?
前節の「仮説構築」で記載した仮説を検証するための具体的な方法をここで記述します。統計的なデータ分析を行う場合には、以下の内容を記述することが一般的です。
分析モデルと使用する変数
使用するデータとサンプル抽出方法
記述統計量と相関マトリクス。
卒論に使えるデータベースはない?
経済学部ではいくつかデータベースを契約しています。経済学部図書室のページを御覧ください。日経NEEDSやeolなどは研究に利用しやすいかと思います。その他、吉永が個人的に購入しているデータの中には、指導学生に限って使用を許可して頂いているものがあります。データの外部流出禁止などを承認して頂いた上であれば、卒論での利用を許可します。下記のデータの利用希望者はお申し出ください。
CSRデータ(雇用人材活用編)2010~2022年分
「分析結果」では何を書けばいい?
「仮説構築」で提示した仮説を「リサーチ・デザイン」で記述した方法に基づいて分析した結果を記述します。分析結果の全体を表すために結果を表に記載した上で、特に重要な箇所について説明することで、仮説が支持されたか棄却されたか、ここで判断します。
「追加分析・頑健性分析」では何を書けばいい?
「仮説構築」で検証するための仮説として提示していなかった内容について、「分析結果」の内容を踏まえて理解を深めるために追加的に行う分析が「追加分析」に該当します。「頑健性分析」は、「分析結果」とは異なる方法で同じ仮説を検証することで、検証結果の頑健性を確認するものです。
「議論・考察」では何を書けばいい?
プロの研究者になるために執筆する修士論文や博士論文はともかく、卒業論文レベルであれば仮説と整合的な分析結果が得られていなくても構いません。その代わり、仮説を支持する結果が得られなかった場合には、なぜ仮説と整合的な分析結果が観察されなかったのかについて、この節で様々な情報を踏まえながら自分の頭で考えるようにしてください。
「おわりに」では何を書けばいい?
論文全体のまとめです。「はじめに」と内容が被ることが多いのですが、「おわりに」では下記の点に特に注目します。
研究の背景と目的の概要
分析内容と結果の解釈の概要
分析結果を踏まえた考察
研究の限界
将来の展望
参考文献関連
参考文献の本文中での書き方は?
文献の種類によって、適切な書き方は異なります。
書籍や論文を引用・参考にする場合
書籍や論文のタイトルを何度も記述するとそれだけで紙幅が膨れ上がってしまいますので、佐藤(2007)、田中・鈴木(2010)、田中他(2007)、Tom and Jerry (1940)、Moomin et al. (1945)のように、著者名(発行年)と書くのが通例です。著者が3、4人以上になる場合には、日本語文献なら第一著者の後に「他」、英語文献なら「et al.」と表記して省略してください。
本文中の書き方の例:「Moomin et al. (1945)は、家族愛が人生の満足度を有意に高めることを示している。」、「TomがJerryを捕まえられる可能性は統計的に0と有意に異ならない(Tom and Jerry 1940)。」
書籍や論文を参考にした場合、論文の末尾に「参考文献」と題したリストを作成するのが通例です。
Webサイトを引用・参考する場合
Webサイトを参考に作成した文章や図表に脚注を就け、脚注の中で「出所:〇〇」などと記載しつつ、そのURLとアクセス日を記入する。
新聞を引用・参考する場合
引用した箇所に脚注をつけ、記事タイトル、新聞名、朝刊夕刊電子版の別、ページを記載する。
参考文献リストの書き方は?
論文の末尾では、「参考文献」と題して論文中で言及した書籍や論文を「必ず」リストアップしてください。逆に、論文中で言及していない書籍や論文は、参考文献リストに「絶対に」掲載してはいけません。例えば、論文執筆時に参考にしたものの、本文中ではその文献について全く触れていなければ、これは参考文献リストに含めてはいけません。もし参考にしているので参考文献リストに含めたいということであれば、脚注でも構いませんので、必ず論文中で言及するようにしてください。
参考文献リストでは、読者が調べやすいように著者名のあいうえお順、ABC順で並べ、「ぶら下げ」でインデントをするのがセオリーです。参考文献リストの書き方はジャーナルごとに色々とありますが、代表的な記述方法を以下のページで例示します。(Google Siteの機能では限界があるため。)
参考文献リストに記す書誌情報を簡単に取れる方法はない?
ソフトウェアを使わないのであれば、Google Scholorを利用するのが早いと思います。検索窓に論文のタイトルを打ち込み、ヒットした論文の下にある「❞」マークをクリックすると、参考文献リストにコピペするための論文の書誌情報が出てくるので、これを参考文献リストにコピペするのが楽です。投稿論文執筆時にはジャーナルの方針に合わせますが、Working Paperを作る場合には私も以下の手順を取っています。
「APA」の書誌情報をコピーする。
フォント等を変更しないようにWordの参考文献リストにテキスト貼り付けする。
Alt→E→S→「形式を選択して貼り付け」で「テキスト」を選択して「OK」をクリックする。
ジャーナル名を斜体(Ctrl+I)に変える。
論文タイトルの前後にダブルクオテーションマーク(")をつけて完成。
ちなみに、日本語の論文や書籍はGoogle Scholorでほとんどヒットしません。自分で書誌情報を調べて手入力する必要があります。
他の文献の内容は、出典を明記せずに引用・参考にして良い?
他の文献の文章や図表をあたかも自分の考えであるかのように記述するのは、学術的に重罪です。参考文献にする場合や、引用して自身の論理の説得力を高めたい場合には、出所を明確に書くことが必要です。
自分の研究に関連している文献はただ紹介するだけでいいの?
必要性がなければ、他の文献を引用してはいけません。特に、字数稼ぎのためだけの引用・参考はNGです。そもそも引用や参考は、先行研究の成果を提示することで自身の論理を補強するためや、自身の研究の位置付けを明らかにするためなど、何か理由があって行うものです。もし先行研究の内容を書き連ねるだけであれば、引用・参考の必要性はありません。もちろん、全く先行研究に言及していないならば今度は先行研究調査不足の懸念が高まりますが、自分の研究や論理のどこにどのように関係しているのか、なぜ引用・参考にするのかを考え、必要十分な量を提示するようにしてください。
Wikipediaは引用、参考にしていいの?どういう情報に基づけば良いの?
私の指導下における論文およびレポートの執筆にあたっては、Wikipediaを始めとする誰でも編集可能なWeb上の百科事典の引用および参考文献としての起用を原則として禁止します。もちろん、ざっくりと情報を仕入れる用途や、情報源を調べる方法として用いる用途として、Wikipediaは有用だと思います。しかし、Wikipediaの情報は誰でも編集可能であり、情報の信頼性には諸説あります。信頼性に疑問のある情報を参考にするより、まずは1次情報である統計資料や論文における分析結果、政府、企業、業界団体等の開示資料等を確認し、次いで信頼できる2次情報として記名式の論文や書籍、雑誌の記述等を参照するという手順にしてください。
語調・体裁
卒論は「だ・である」調と「です・ます」調、どっちで書く?
エントリーシートでは「です・ます」調で書く場合もありますが、卒業論文では「だ・である」調で書いてください。
論文の時制は現在形?過去形?
論文を書くときは原則として、「おわりに」で自身の分析結果を記述する時だけは過去形、それ以外は現在形で書くようにしてください。先行研究の内容を説明する際も、過去形ではなく現在形で記述するのが一般的です。過去形で記述してしまうと、「(昔は)〇〇という結果が得られた(が、今は違う)」というニュアンスを出してしまうからです。逆に、「おわりに」で自身の分析結果を過去形で記述するのは、前の節で既に分析結果を提示しているからです。
親近感を持たせるために口語を使っても良い?
確かに、敢えて話し言葉を使うことで、読み手に親近感を与える手法もあるにはあります。しかし、将来社会人として資料をまとめるときのことを考え、うちのゼミの卒業論文では口語(話し言葉)ではなく文語(書き言葉)で文章を綴るようにお願いします。例えば、ら抜き言葉、「ちょっと」、「だけど」、「なので」、「マジで」、「まじ卍」、「どんだけ~」といった言葉を論文で使うのは望ましくありません。
一文の長さは短い方が良い?長い方が良い?
基本的に、文章は簡潔明瞭に短く書く方が良いでしょう。長い専門用語を使うことで文章が長くなってしまうこともありますが、一文で4行以上続けるのは望ましくありません。特に、字数を稼ぐために意味もなく長い文章を書くのは、読み手の時間を無駄に奪うだけなので論外です。文が長いと思ったら、区切るようにしましょう。
接続詞は使うべき?
接続詞は積極的に使ってください。接続詞は文と文の関係を示す「標識」のようなものです。接続詞を使うことで、読者は文と文のつながり方をひと目で理解でき、スムーズに読めるようになります。
ただし、何事もやりすぎは良くありません。同じ接続詞を何度も連続して使用すると、幼稚な印象を与えます。また、「1段落に逆接の接続詞は1つまで」と心がけてください。逆接の接続詞はそれまでの論理の流れをひっくり返すことで、読み手に伝えたい重要な内容を強調するものです。そのため、一つの段落の中に逆接の接続詞が何度も出てくると、著者が重点を置きたいことが何かわかりづらくなり、読者は混乱します。
なお、接続詞の後には「、」をつけるようにお願いします。接続詞の存在が際立つので、論理の流れが読者に伝わりやすくなるからです。接続詞の直後以外で文中の読点が多い場合や会話文など、読点をつけない場合もありますが、文章の執筆に慣れていないときは判断が難しいと思いますので、取り敢えずつけておくことをオススメします。
「・」(中点)の使い方は?
細かい点ですが、「・」(中点)は、前後の単語をつなぐことで一続きの用語にしたい場合に使ってください。わかりやすい例として、「ドナルド、トランプ」と「ドナルド・トランプ」があります。読点で区切った前者は、「ドナルド」と「トランプ」を並列した別のモノ(人)として扱っています。その一方で、中点で区切った後者では、「ドナルド・トランプ」で1つの単語として扱っています。このように、区切る前後のモノを別々の概念として並列したい場合には「、」、合わせて一つの用語にしたい場合には「・」で区切るのが望ましいです。
段落はどう分けるべき?
まず、アタリマエのことですが、日本語であれば初めに全角1文字分スペースを空け、英語であれば初めにTab1~2回分スペースを空けて段落を書き始めてください。段落が分かれている場所をわかりやすくすることで、読み手がパラグラフ・リーディングを行いやすくなるからです。
そして、パラグラフ・ライティング、つまり、1つの段落で1つの重要な内容を書くようにしてください。もう少し詳しく言えば、各段落の重要な一文を読み進めるだけで、その節の論理の骨子を大まかに理解できるように書くよう心がけてください。このように心がけて文章を書いていれば、そうした意識をしない文章より、読みやすさが上がるはずです。
もちろん、論理の骨子が重要だと言っても、トピックセンテンスとなる一文だけで段落を構成すれば良いというわけではありません。その場合、普通は説明不足になります。そこで、順を追って説明したり、例を挙げたり、言い換えたりして「肉付け」を行い、自分の論理をわかりやすく説明するのです。
このパラグラフ・ライティングができていれば、段落の長さに制限はありません。とはいえ、一段落に一文しかない場合や、1ページまるごと1段落という場合、読みにくい文章である可能性が高いので段落構成を再考すべきですが。。
主語と述語の対応に気をつけてと言われたけど、どういうこと?
一言で説明するのは難しいのですが、主語を考えると明らかにおかしい述語を使ってしまうことです。例えば、「彼らは」で始まっているのに「ことである。」で終わらせることが挙げられます。この主語と述語の非対応は、長い文章になるほど注意すべきです。文章が長いと主語と述語が離れてしまい、両者の対応がとれなくなる可能性が高まるからです。そのため、文章を書くことに慣れていない人であればあるほど、短い文を書くことをオススメしています。
ちなみに、体言止めという裏技もありますが、論文はポエムではないので基本的には使わないようにお願いします。
主語や述語はどこまで省略して良いの?
「言わぬが花」という諺のとおり、わかりきった主語や目的語などは積極的に省略し、テンポの良い会話を楽しむのが仲の良い友達同士での日常会話の特徴です。もし聞き手が理解できなければ即座に「それ、どういうこと?」と聞き返せるので、日常会話で省略を多用することに何も問題はありません。
しかし、書き言葉の場合、読み手は書き手に自由なタイミングで質問できません。そのため、省略しすぎると書き手の意図が伝わらなくなる場合があります。そこで、論文を書く場合、日常会話の逆を心がけるようにしてください。すなわち、文を書くときには基本的に主語や述語、目的語などを明記するようにし、省略しないと冗長になる場合のみ省略するのです。
誤字脱字や表記ゆれが気になるけど、何か使える方法はない?
Wordの「校閲」タブ内、左側にある「エディター」を利用してください。「てにをは」や表記ゆれ等、少しだけ助けてくれます。しかし、この機能も完璧ではないので、最終的には自分で読み直してチェックしなければいけません。AI等で上手く判別できるようになると楽なのですが、今の所はこれくらいしか私も知らないですね。。
段落の始めの文は、何文字分空けて書き始める?
どこで段落が別れているのかを見やすくするために、(ポエム以外の)日本語の文章であれば、段落の最初は全角スペース1文字分空けて書き始めてください。英語であれば、Tabキー1回分空けて書き始めるのが一般的です。
文字の大きさやフォントは?
文字の大きさは12pt、フォントは日本語ならMS 明朝、英語ならTimes New Romanにしてください。異論は認めますが、これが一般的な論文のフォントです。Wordのデフォルトのフォントである「游明朝」は、文字の大きさを11pt以上にすると行間がダブルスペース以上に開く謎仕様ですので、使わないでください。(というか、なんでマイクロソフトさんはこんなフォントをデフォルトにしたのだろう。遊び心か?遊び心なのか??)
ちなみに、卒論以外のレポートを作成するときも、フォントは12ptくらいがちょうど良いと思います。若手の先生ならともかく、10ptくらいだとご高齢の先生は読みにくく感じるのです。ちなみに、吉永は遠視かつ眼精疲労気味のおっさんなので、12ptくらいがありがたいと思っています。
太字、イタリック、下線はどのように使い分けるべき?
このページは論文ではないので読みやすさを重視して使っていますが、論文では基本的にどれも特定の状況以外では使いません。太字(Ctrl+B)は、章や節のタイトル等で使う場合はありますが、本文中では使わないようにしてください。イタリック(Ctrl+I)は、本文中であれば英語の書籍や論文の名前を載せるときに、参考文献リストであれば英語文献のジャーナル名に使われます。下線(Ctrl+U)は、URLを記載する場合には使用しますが、強調のために使うことはありません。なお、通常の意味とは異なる意味で言葉を使う場合や、特定の用語を強調したい場合には、「」や『』を使うと良いでしょう。
略称の使い方は?
冗長な表現を避けるため、GDPやAAAなど、イニシャルで表現する事があると思います。こうした略称を用いる場合には、読み手の誤解を避けるために、必ず初出箇所でその正式名称を表記するようにしてください。英語の場合には、適宜日本語名称も併記する方が読者にフレンドリーです。
・例:GDP(Gross Domestic Product: 国内総生産)
ページ番号は入れるべき?
卒論は枚数が多いので、タイトルページと目次のページを除いて、ページごとにページ下部に付与してください。Wordであれば、「挿入」タブの「ヘッダーとフッター」にある「ページ番号」を押せば、ページ番号を入れられます。タイトルページや挿入タブを除いてページ番号を入れるには、目次ページの終わりに「レイアウト」タブの「区切り」にある「セクション区切り」を入れた上で、本文のフッターをダブルクリックして出てくる「ヘッダーとフッター」タブの「ナビゲーション」にある「前と同じヘッダー/フッター」のチェックを外すと良いでしょう。
図表はどうやって記載すれば良い?
図表を提示する場合には、図表番号と図表タイトルを入れましょう(例:図表1:〇〇)。もし図表を作成する際に何か引用・参考にしている場合には、出所も明記してください。また、図表を示す場合には、必ず文中でその図表の説明や解釈、読み方などを書き、図表をなぜ提示したのかがわかるようにしてください。
数字の表記はどうすれば良い?
固有名詞やデータの表記を除く文中の数字表現(例:「理由は3つあります/理由は三つあります」)であれば、漢数字と算用数字のいずれかに統一してください。算用数字を使う場合、文字と文字の間の間隔を一定にするために1桁であれば全角、2桁以上は半角にするという書き方もありますが、私は全て半角で表記しても構わないと思います。ただし、2010年など年を表す場合を除いて、売上高や統計的な分析結果の中で4桁以上の数字を書く場合には、読みやすくするために3桁ごとにコンマを打ちましょう。また、小数点以下の数字を表示する場合には、基本的に小数点第3位までが表示されるように四捨五入してください。
「述べる」が論文では不適切である理由
卒論を読む中でよく見られる言葉の代表例が「述べる」ですが、論文やレポートにおいて「述べる」という言葉は基本的に避けるべきです。理由は単純で、不明瞭な言葉だからです。
論文ではざっと読むと同じように見える動詞も、厳密に使い分けられています。分析結果や証拠によって客観的に信頼できる結果については「示している」、分析結果や言説の主観的な解釈であれば「示唆している」や「考えられる」が使われます。「述べる」は、どちらの場合でも使えてしまいます。そのため、どの程度文の内容を信頼して良いのか、わからなくなってしまうのです。