概説

セルナーダ語は地球で現生人類が使っている言語に似た言葉である。話者である生物が現生人類とよく似た身体構造と思考法、認識力を持つため、概ね人類の言語類型論が通用する。

強い膠着語的性質を持つ屈折語であり、対格言語である。

法は直接法、命令法の二つからなる。ただし、いわゆる法性、モダリティの極めて多用な表現が後置補助詞により存在する。

時制は過去時制および非過去(現在)時制の二つであり、多くの相で未来などの出来事を表現する。


品詞

品詞は名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、動形詞、動副詞、後置補助詞の八つに大別される。

名詞は物や事の名前を意味する。

【asro】炎、【suy】水、【sat】大地、【sewr】風、【no:va】闇、 【reys】男、【resa】女、【fa:ha】喜び、といったものが名詞である。


代名詞は広義では名詞に含まれ、特定の人称の人物、物体、場所などを総合的に表現する。

【az】彼、【sata】彼女、【to】あなた、【cod】これ、【jol】そこ、といったものが代名詞である。


動詞は物や事の動き、変化、状態などを表す。

【sxupir】寝る、【masure】食べる、【egar】動く、【ajure】歩く、 【nafar】考える、【ganure】悩む、などが動詞である。


形容詞は名詞を修飾する語である。

【asmin】温かい、【sobce】寒い、【e+tefe】痛い、といったものが形容詞に含まれる。


副詞は形容詞、動詞、他の副詞、あるいは文全体を修飾する。

【narum】大きく、【durum】小さく、【farum】速く、【dalum】ゆっくり、などが副詞とみなされる。


動形詞は動詞的な特徴を兼ね備えた形容詞である。

詳しくは後述する。


動副詞は動詞的な特徴をあわせもった副詞である。

これもまた詳細は後述する。


後置補助詞は日本語の助詞、英語の前置詞、助動詞などに似ているがさらに幅広い役割を持つ。

これもについても詳細は後述する。




語順

基本語順はSVOである。より厳密に言えばSVO AN NG POとなる。

つまり「主語、述語、目的語」の順で表記され、形容詞は名詞の前につけて修飾する、前置修飾である。属格詞は名詞の後ろにつき、後置補助詞を後置詞的に用いる。地球の言語でいえばフィンランド語に類似している。

ただし幾つかの例外的な状況によってはこの語順は変わりうる。



主語の省略

いわゆるpro-drop言語であり、主語が人称代名詞の場合、特に単数形のときは動詞の活用で推測が容易なため、省略される場合が極めて多い。



単数形と複数形

名詞の単数形を複数形に変えるには、以下の規則に従う。

まず語尾が子音であった場合、語尾にiをつける。

語尾が母音の場合、語尾に-riを添付する。

上記の規則は長母音にも同様に適用される。

ただし現在のセルナーダ語では名詞の単数、複数の区別はかなり曖昧なものとなりつつある。

すでに動詞の活用において、人称と名詞クラスは重要な要素となるが、単数、複数の違いは意味を失っていることからもこれは明らかである。



セルナーダ語のすべての名詞は、主格、属格、与格、対格、奪格、共格、処格、向格、具格の九つのいずれかの形をとる。

無標である主格いがいの名詞は、原則として末尾に適切な後置補助詞を接尾辞として加えなければならない。これは「格標識」と呼ばれる。

もととなる名詞の末尾が母音だった場合、またはts、ch以外の子音が連続していなかった場合、後置補助詞をそのまま接尾辞として加える。

ただし、他にも「通格」と呼ばれるものが存在するが、これについては後述する。



後置詞 主格 属格 与格 対格 奪格 共格 処格 向格 具格

なし ma le zo po cho nxe sa tse


もとの名詞の末尾ですでに子音が二つ連続していた場合、接尾辞の前にuを挟む。たとえば名詞【suyf】を属格にする際は、【suyfuma】となる。(ちなみにsuyfは魚を意味する)

また下記のような例でも、uが子音の間に挿入される。

属格の【zo】の前の名詞が-zで終わる場合。

奪格の【po】の前の名詞が-pで終わる場合。

共格の【cho】の前の名詞が-ch、-cで終わる場合。

向格の【sa】の前が-s,-t,-tsで終わる場合。

具格の【tsa】の前が-t、tsで終わる場合。

これらの規則は、子音の発音の変化を回避するためと考えられているが、それだけでは説明しきれない点もある。またこれはあくまで最も一般的な形であり、方言などによっては条件が変化する。


格の機能についての説明

主格は、主語になりうるもっとも基本的な形である。


属格は日本語の「の」に対応することが多く、後続する名詞を所有する、またそれが属格で示される語に属していることなどを意味する。ただし、単に名詞を接続させるために用いられることも多い。


与格は日本語の「に」に近いが、絶対的なものではない。「間接目的語」にあたる。


対格は日本語の「を」に対応していることが多く、動詞の目的語を意味する。「直接目的語」にあたる。


奪格は日本語の「から」に近い。移動を始める場所、なにかを得るときの対象などを意味する。


共格は日本語の「と」にある程度、近い。共同して共にある行為を行う対象に用いられる。


処格は行為が行われる場所を意味する。時間を意味することもあるが、詳しくは後述する。


向格は移動の目的地を意味する。日本語の「へ」に似ている。


具格は行為のための道具、方法、状況、状態の変化など、かなり多様なものを意味する。セルナーダ語では、具格で人が用いられることもある。



名詞クラス

セルナーダ語の名詞は必ず「火炎形」、「大地形」のいずれかに属する。

これは印欧語族などにおける「文法性」によく似た概念である。



代名詞


人称代名詞

以下がセルナーダ語で用いられる人称代名詞の表である。


一火単 一地単 一複 二人称 三火単 三地単 三火複 三地複

主格 vis va vo to az sata azi sati


属格 vim vam vom tom azom satom azim satim


与格 vel val vol tel azel sel azil satil


対格 viz vaz voz tuz azuz saz aziz satzi



他の格、つまり奪格、共格、処格、向格、具格の場合には、主格の後ろに後置補助詞をつける。たとえばvisを奪格にするときはvispo、toを共格にするときはtochoとなる。

また、一人称には火炎形単数、大地形単数、複数の三つが存在する。つまり日本語でいう「俺」「あたし」「私たち」のように一人称でも話者の性別による使い分けがある。ただし、一人称複数の場合、たとえばみな女性であっても火炎形として扱われる。

二人称は基本的には一つだけである。「あなた」「あなたたち」であっても違いはない。

しかし、実は他にもきわめて親しい相手にのみ使われる「親称」が二人称として存在する。これは【tufa】という形だが、主格以外の場合、たとえば属格では【tufama】、与格では【tufale】となるかなり特殊な代名詞である。

三人称には火炎形単数、大地形単数、火炎系複数、大地形複数の四つの形がある。これはそれぞれ「彼」「彼女」「彼ら」「彼女ら」を意味する。ただし、三人称大地形複数は相手が全員、女性でなければ使用しないため、使われる頻度はきわめて低い。


二人称親称についての補足

他の人称代名詞に比べ、二人称親称は明らかに異質である。これには幾つかの理由が考えられるが、次のようなものが一般的な説である。

一度、セルナーダ語からは通常の二人称と親称の区別が完全に失われた。なんらかの理由で死語化した二人称が再び使われるようになったが、残っていた形が主格のみだったため、他の属格、対格、与格の表現なども、さほど頻繁に使われない共格などのように、似たような接尾辞をつけるやり方が急激に広まった、というものである。この説にも異論はあるが、ここでは「二人称の親称だけは特別である」とだけ覚えれば問題ない。



位置代名詞

位置代名詞の表は以下の通りである。


近称 中称 遠称 不定称

col jol hal nal

ここ そこ あそこ どこ


位置代名詞の名詞クラスは、常に大地形となる。




指示代名詞


指示代名詞の表は以下の通りである。


近称 中称 遠称 不定称

cod jod had nad

これ それ あれ どれ

この その あの どの (左に表記されているものは形容詞となる)


指示代名詞の名詞クラスは、常に火炎形となる。


動詞の活用

セルナーダ語では動詞の活用が存在する。この活用には、主語の人称、名詞クラス、時制の三つの要素が関わってくる。単数、複数といったものは活用にはまったく関係しない点に注意が必要となる。

動詞には規則的に活用するものと、不規則に活用するものの二種類が存在する。

規則活用するものは、それぞれ元の形である「不定形」の語尾により、ar形、ir形、or形、ure形の四種類が存在する。

以下がその活用表である。一見すると複雑に見えるが、よくみれば形が変わっても全体としての活用はあまり変化していないことに気づかされるだろう。

なお、辞書には不定形のみが記載しているので、活用したあとの語で調べることは無意味である点に注意。

規則活用では、不定形の前の部分は変化しない。これを「語幹」と呼ぶ。この語幹に活用により定められたさまざまな接尾辞をつけて、活用を行う。


規則動詞の活用

一火 一地 二 三火 三地

噛む kag-ar -av -ava -ato -as -a 現在形

-ev -eva -ete -es -ega 過去形


熟考する nef-ir -iv -iva -ito -is -iya 現在形

-igiv -igav -ite -igi -iga 過去形


見張る men-or -ov -ova -oto -os -owa 現在形

-ogiv -ogav -ote -ogo -oga 過去形


奪う tok-ure -uv -uva -uto -us -uwa 現在形

-ugiv -ugav -ute -ugu -uga 過去形



不規則動詞の活用

不規則動詞の変化はまったく規則的ではなく、残念ながらすべての活用形を暗記する以外に習得方法はない。また規則動詞とは異なり、語全体の形が変化しうる。


一火 一地 二 三火 三地

である er erv erav eto ers era 現在形

evig evag ete erig ega: 過去形


いる(ある) yer yav yava yato yas ya: 現在形

yev yeva yete yeg ye 過去形


なる canar nav nava nato nas na: 現在形

nev neva nete neg ne: 過去形


欲する fovor fov fova foto fovs fowa 現在形

fogiv fogav fete feg foga 過去形


持つ avar av ava avto avas a:va 現在形

vev eva veto ves vega 過去形


行く alvar alv alva alvot alvis a:lva 現在形

elvig elva elvot elvog e:lga 過去形


来る vonir vov vava voto vos vowa 現在形

vegi vag vete vego vega: 過去形


食べる masure mav ma:va mato mas ma: 現在形

mev meve mete mego me: 過去形


寝る sxupir sxiv sxav sxuto sxus sxa 現在形

sxev sxep sxete sxego sxega 過去形


知る sxulure sxulv sxalva sxalto sxuls sxala 現在形

sxeliv sxelva sxelte sxelgo sxelga 過去形


得る titar tiv tiva tito tits tata 現在形

tev teva tete tets tega 過去形


作る sekar sakiv sakva sakto sekas saka 現在形

sekig sekiva segte sekgo sekga 過去形


与える jayor jayiv jayva jayto jays jaya 現在形

jeyiv jeyva jeyte jeygo jega 過去形


見る mavir ma+vi ma+va mavto mavs mava 現在形

mevi meva mevte mevgo mevga 過去形


生きる solor soliv solva solto solos sola 現在形

selev selva selte selgo selga 過去形


死ぬ zemnor zamiv zamva zamto zems zamna 現在形

zemev zemva zemte zemgo zemna 過去形


行う wognor woniv wonva wonto wons wona 現在形

wenev wegva wente wengo wega 過去形