授業料改定をめぐる、これまでと今後に向けての教職員有志の声明
山口大学の授業料改定手続きに対する山口大学教職員有志(11月14日付発出)
11月12日付で谷澤幸生学長からだされた「回答」を受けて、以下の声明を発出しました。相変わらずの論点すりかえや詭弁の多い回答ではありましたが、評価に値するところもあると思われましたので、そうした点をまとめた所感を発出し、また併せて、今後の我々の活動についての予告的な声明を出しました。
山口大学の授業料改定手続きに対する山口大学教職員有志(11月14日付発出)
11月12日付で谷澤幸生学長からだされた「回答」を受けて、以下の声明を発出しました。相変わらずの論点すりかえや詭弁の多い回答ではありましたが、評価に値するところもあると思われましたので、そうした点をまとめた所感を発出し、また併せて、今後の我々の活動についての予告的な声明を出しました。
山口大学学長 谷澤幸生 殿
山口大学教職員有志
授業料改定をめぐる、これまでと今後に向けての教職員有志の声明
我々山口大学教職員有志は、授業料改定をめぐって、これまで3度の声明を出してきました(10月17日・27日・31日)。また、授業料改定に関する学長記者会見当日に開催された抗議集会でもメッセージを発出し(10月30日)、改定決定が公表された後も、授業料減免措置等に関する要望を学長に提出してきました(11月4日)。
11月4日付「要望」に対しては、11月6日に「直接対面により対話をする形式で」回答をしたいとのメールが学長名で届きましたが、それに対しては、11月7日付「回答及び提案」にて書面での回答を再度要望し、併せて全教職員との対話の機会の設定を提案したところです。
この、11月4日付「要望」及び11月7日付「回答及び提案」に対して、11月12日に「授業料の減免措置等に関する山口大学教職員有志の要望等への回答」が学長名で(経営企画室小笠原義人氏を通じて)届きました。以下この11月12日付「回答」への、有志としての所感を述べます。
1. 評価できない部分
最初に、今回も期限内に回答をいただけたことについては感謝申し上げます。しかしその内容については、評価できない部分が多いと感じました。以下、評価できない部分を指摘いたします。
(1)「不公平」とは何か
我々は11月4日付「要望」で、総合型選抜と私費外国人留学生入試を経た合格者への授業料減免措置を求めました。
それに対し11月12日付「回答」では、「特定の入試区分によって取扱いが変わることは望ましい対応ではない」「入学後も納付する授業料に差異があることで、同じ学修環境(中略)を享受する同学年の学生間に不公平が生じることがないよう留意することが必要」とし、明記はされていませんが、我々の要望を拒否したと解釈できる回答となっております。
しかし本要望の原点に立ち戻ると、授業料改定の決定を、10月30日というタイミングで公表した貴職をはじめとした山口大学執行部の判断に既に「不公平」があったと我々は考えています。これまでにも指摘してきましたが、10月30日時点では、上記2区分の受験者は、既に出願を終えていました。
すなわち、この2区分を経た入学者は、授業料値上げ決定という情報を有した上で出願先を検討できる他の入学者との間に、既に「不公平」を背負わされているわけです。またこの「不公平」を生じさせた責は、授業料改定決定の公表時期を決めた、貴職はじめ山口大学執行部にあります。
自らが既に「不公平」を発生させておきながら、それを補うための「前向き」な要望を「不公平」であるとして拒否する論理は、これまでの経緯における自らの手続き的瑕疵を等閑視する、非常に後ろ向きで不誠実なものと思われます。
(2)論点ずらしや論点の隠蔽
また、今回の11月12日付「回答」も、これまでと同様、論点ずらしや論点の隠蔽が見られます。我々は11月7日付の「回答及び提案」において、
貴職(谷澤学長:引用者注)と我々有志との間のみに閉じられた「対話」ではなく、より開かれた「学内外の関係する人々との」「対話」の機会を設けること
を提案しました。この提案は具体的には、「全教職員を対象」とした対話の機会の設定です。にもかかわらず11月12日付「回答」では、
適時適切に本学ホームページ等を通じて、学生を含む学内構成員、さらには社会に対して情報公開を進めます。また、整備に当たっては、当事者である学生の声に耳を傾け、要望を尊重し、開かれた対話の場となるよう努めてまいります。
と述べておられます。既に10月27日付「声明」において我々は、「ホームページ等」による「情報公開を進め」るような一方向的なコミュニケーションは、通常は「対話」とは言わないことを指摘しています。また我々が提案した、「全教職員を対象」とした対話の機会の設定に対する、直接の回答はどこにもありません。これは論点ずらしであるとの批判を免れないものと考えます。
またもう1点、11月12日付「回答」においては、総合型選抜合格者への「相談を受ける旨」の個別連絡を行っていることが述べられています。しかし我々は、私費外国人留学生入試を経た合格者に対する措置も要望しています。にもかかわらず、11月12日付「回答」においては、私費外国人留学生入試の件は一言も述べられていません。意図的に論点を隠蔽しているのか、回答するのを失念しているのか分かりませんが、いずれにしても「回答」として成立しておりませんので、今後も続けて「回答」を求めていきたいと考えております。
(3)「丁寧」とは何か
11月12日付「回答」では、末尾の部分で「これまでにいただいたご質問等に対して丁寧に答えさせていただいてきたと考えております」と述べておられます。しかし以上に指摘してきたように、今回の「回答」においても、これまでの経緯における手続き的瑕疵を等閑視し、論点をずらしまた論点を隠蔽するといったものとなっていました。また、それ以前の「回答」等の不誠実さも既に指摘してきた通りです。この間の対応は、通常の感覚で言う「丁寧」とは、程遠いものであったと我々は考えております。
2. 評価できる部分
他方で、今回の11月12日付「回答」においては評価できる部分もあります。これについても以下指摘いたします。
(1)「不公平」を是正しようという意向は見られること
先に指摘した通り、「不公平」概念の扱いに不誠実さはあるものの、「同学年の学生間に不公平が生じること」を避けたいという意向があることそのものは見て取れました。
今回初めて知らされたところではありますが、総合型選抜の合格者に対しては「今般の授業料改定の決定に関する情報提供」等を行っておられるとのことです。であれば、「同学年の学生間に不公平が生じること」を避ける観点から、総合型選抜以外の入試区分の入学者全てにも、同様の手当てを行う用意があるということが論理的に導き出されます。でなければ、入学に向けての不安等の有無や多寡という「学修環境」の構成要素において、「同学年の学生間に不公平が生じること」になるでしょう。
以上のように、明言はしておられませんが、今後全ての入学者にも同様の手当てを行うと言外に示されたことは、評価に値すると受け止めております。今後これがどのように履行されるのか、注視したいと考えております。
(2)経済的支援枠について何かしようという意向は見られること
今回の11月12日付「回答」では、既に公表されている、「現行の授業料減免と同様」の減免措置に加えて、「基金等を活用した経済的支援の在り方についても必要性を認識している」と述べておられます。この点も今回初めて知らされたところではあり、具体的な内容は述べられておりませんが、「現行」のものでは不足しているとの認識がおありで、ゆえに「必要性を認識」しているということと解されます。
こうした意向を持っておられ、何かしらの拡充措置を取る「必要性を認識」しておられることは評価に値しますし、今後これがどのように具体化されるのか注視したいと考えております。
(3)「対話」をしようという意向は見られること
これも先に指摘した通り、貴職の言う「対話」という概念には通常のそれとのずれがあります。とはいえ、今回の11月12日付「回答」末尾では、「さらにご異議があれば、直接対面により対話をする形式で意見交換を行いたいと考えています」と述べておられます。「直接対面により」との文言があることから、ここは通常の意味での「対話」を行おうとする意向を示しておられるのだと解され、この点についても評価に値すると考えます。
3. 以上を踏まえた今後の予告
以上の点を踏まえて、我々としましては、我々有志も含めた全教職員と貴職との「直接対面」による「対話」の機会を設けていただくよう、今後改めて貴職に要望したいと考えております。「ご異議」があるかどうかをまず把握していただくためにも――我々の元に、有志に加わっていない多くの教職員からの声も届いている状況を踏まえると――、我々有志のみならず全教職員との「対話」や「意見交換」が必須となるでしょう。また、今回の11月12日付「回答」及びこれまでの「回答」等で、今後改善・実施するとの意向を示されたことが、実際にどのように履行されたのか適時確認し、その都度指摘や要望を行うといった「対話」の必要性も生じうると考えられます。
実際の「対話」の設定方式としましては、先般熊本大学が行ったような、学生も含めた全学対象の意見交換会方式(2025年11月11日付『熊本日日新聞』)も考えられますし、貴職をはじめとした執行部が各部局を巡回し、「対話」や「意見交換」を行う方式も考えられます。またあるいは、まずもって我々有志と「対話」をしたうえで、その後より開かれた方式での「対話」を行うことも考えられます。
上記のことも含めた具体的な日時や内容及び開催方式については、今後提案いたします。その折には、開かれた「対話」に向けての「前向き」なご対応をお願いいたします。
以上
2025年11月14日
山口大学
医学部、教育・学生支援機構、教育学部、経済学部、工学部、国際総合科学部、時間学研究所、人文学部、農学部、ひと・まち未来共創学環、理学部
教職員有志一同
呼びかけ人(50音順)
秋谷直矩 麻田玲 池田勇太 石田俊 上田由紀子 上道茜 川尻剛士 黒羽亮太 桑畑洋一郎 白岩洵 杉野弘明 竹中幸史 塚田広人 南雲泰輔 野坂昭雄 速水聖子 原田拓馬 真木隆行 Michel de Boissieu 村上龍 村田裕一 森朋也 森下徹 谷部真吾 山本冴里 脇條靖弘