「回答」を受けての再度の声明
山口大学の授業料改定手続きに対する山口大学教職員有志(10月27日付発出)
山口大学の授業料改定手続きに対する山口大学教職員有志(10月27日付発出)
我々教職員有志が10月17日付で発出した「山口大学の授業料改定手続きに対する山口大学教職員有志の声明」(以下「声明」と略記します)に対して、10月23日付(正式受領は10月24日)で谷澤幸生学長より「山口大学の授業料改定手続きに対する山口大学教職員有志の声明への回答」(以下「回答」と略記します)が出されました。この「回答」を受けて教職員有志としては以下の声明を再度発出いたします。
「回答」を受けての再度の声明
1.「回答」に対する我々の受け止め
まず、我々が提示した「回答」の期限である10月24日14時よりも前に「回答」を示されたことについて謝意を表したいと思います。この点については、「回答」を出していただいた谷澤幸生学長ならびに「回答」を実際に取り次いでいただいた経営企画室の小笠原義人氏に御礼申し上げます。
ただし、「回答」の中身に目を移すと、我々が指摘した問題点にきちんと応答するものでなく、従来の方法を全く変えないというものであり、我々は深い失望を感じております。
具体的に今回の「回答」の問題点を――今回の「回答」に真摯さが全くないがために、結局のところ先の「声明」で指摘したことの繰り返しになってしまうのですが――以下指摘させていただきます。
冒頭、今回の「検討及び公表のプロセスについて、情報公開や対話の機会が十分ではなかったこと」と、「決定・公表までの展開が急であった」との我々の指摘については「真摯に受け止めたい」と述べてはおられます。
しかしその後は、「既存財源だけでは、学生の教育研究環境の維持・改善や整備・拡充ができず、学生に不利益が生じると判断」したこと、「不可避かつ責任ある決断であること」への「ご理解」を求めるものとなってしまっております。我々が「声明」で指摘したことを「真摯に受け止めた」痕跡が全く見えない「回答」であると言わざるを得ません。
我々は、先の「声明」で、「検討プロセスが、学内に対してすらあまりに不透明」であり、「拙速かつ粗雑な検討に基づく決定」は許容できないと指摘しました。しかしながら「回答」では、プロセスも値上げ額の算定根拠も示されていません。「学生の教育研究環境の維持・改善や整備・拡充」について、それが具体的に何を指し、どのくらいの費用が必要で、授業料値上げによってそれがどれくらい補えるのか、またそれがどういった場でどのくらいの頻度と時間をかけて検討されてきたのかといったことが示されなければ、我々の指摘に応答したことにはなりません。
また、先の「声明」において我々は、「拙速」さも問題視しました。この点は「回答」内でも「急を要する決断」と述べられている通り、自覚しておられるようです。しかしながら、「物価高騰」「電気代の高騰や賃上げ」といった「社会情勢の変化」は、「昨今」いきなり始まったことではありません。「本学の厳しい財政事情」も、ご自身で「ここ数年ではなく、それよりも前から」始まっていたことです。「令和8年度総合型選抜の合格発表前までには(中略)決定・公表する必要があった」とも述べておられますが、入試に関するスケジュールも以前から分かっていたことです。この「回答」は、今回の拙速さの説明になっていません。
また、「回答」においては、関係者への情報公開の方法についても述べられています。しかしそれは、受験生や志願者に対しては「記者会見を開き、私(学長)自ら説明」し、その後「ホームページや入試ページを通じて」伝達するというものです。各高等学校に対しても同様で、「ホームページ」を用いるとのことです。また在学生に対しても、「学生説明会」を10月8日に開きその動画を後日公開したことが述べられ、教職員にも学内会議での配布資料をオンライン配信したことが述べられています。つまりは、従来の方法以上のことはせず、既に予定されている方法も変える気はないとの「回答」となっています。
我々は「声明」で、従来の方法や今後予定されている方法では不誠実であるために更なる時間と手間をかけ、説明をしていくべきであり、そうすることが「山口大学の使命」とされた「対話と合意」に基づくものであると指摘しました。「声明」と同趣旨の内容になりますが、アクセスの機会を十分に確保しないままの短時間の「学生説明会」や資料の「オンライン配信」、あるいは記者会見後――すなわち確定的なことが公表された後の――情報伝達のどこに「対話と合意」があるのでしょうか。一方向的なコミュニケーションは「対話」とは言えませんし、そこで「合意」が取られていないから現在のように多方面から懸念が提示されているわけです。
関連して、「回答」中で「各高等学校等を訪問して状況を説明し意見をいただいた上で検討を進めていくべき」と我々が指摘しているとされ、それに対し「既に検討した」と述べておられます。しかしこの引用部分は、我々の指摘の要点ではありません。「声明」中、引用部分と同じ段落には以下の文章があります。
説明責任は完全に授業料改定を決めた側にあります。にもかかわらず、山口大学は「ホームページや入試ページを通じて受験生にお伝えする予定」ですとか、「個別に高校を回って説明することは難しいため、ウェブサイト等を通じて迅速に伝えたい」といった方法で済ませようとしています。改定について「ご理解とご協力」をいただく立場にありながら、自身の労を厭うかのような安易な方法で――それも説明を届けるべき相手に届くかどうか確信の持てない方法で――説明を済ませてしまおうとするのは、山口大学に対する大きな不信を招くことになります。
ここが我々の指摘の要点で、「『ご理解とご協力』を求めるのであればもっとできることはあるはずなのに、それをやろうとしていないのは不誠実である」というのがこの指摘の主旨です。すなわち、今回の「回答」で今後も維持することが述べられた、従来のやり方や今後予定されているやり方の不誠実さは、「声明」で既に指摘しているわけです。この点においても、今回の「回答」が我々の指摘に対する応答になっていないことは明らかです。
2.再度の要望
以上のように、今回の「回答」は、我々の指摘を「真摯に受け止めたい」としておきながら、従来と全く方法を変えないことを縷々述べただけのものとなっており、「真摯」さのかけらも見て取れません。こうした「回答」では、山口大学が築き上げようとしている「ステークホルダー」との「信頼」は更に毀損されてしまいます。
そのためここで我々有志は、以下の2点を再度要望させていただきます。10月28日(火)17時までにご回答ください。今度こそ、「真摯に受け止めたい」という言葉を裏切らない回答をいただけることを期待しております。
(1)令和8年(2026年)4月に授業料を改定するというスケジュールをいったん白紙に戻してください。「回答」では、「令和8年度の入学者から(中略)より高いレベルの教育研究環境を提供するという方針」が述べられています。それは既定事項のようですが、他方で、今回論点となっている授業料改定については、「回答」においても「10月末を目途に改定内容を決定・公表する予定」とあり、決定していないようです。一度立ち止まって検討の時間を確保する労を惜しんで、これまで築いてきた山口大学への信頼を毀損する愚をおかさないでください。「ご理解」を得るためには、立ち止まることこそがむしろ近道です。
(2)その上で、学内外の関係する人々との十分な「対話と合意」の機会を設定し、正当性をもった決定を導いてください。こうすることこそが、毀損されつつある信頼を取り戻す上で必要なことです。
以上
2025年10月27日
山口大学
医学部、教育・学生支援機構、教育学部、経済学部、工学部、国際総合科学部、時間学研究所、人文学部、ひと・まち未来共創学環、理学部 教職員有志一同
呼びかけ人(50音順)
秋谷直矩 池田勇太 石田俊 上田由紀子 上道茜 川尻剛士 黒羽亮太 桑畑洋一郎 白岩洵 杉野弘明 竹中幸史 塚田広人 南雲泰輔 野坂昭雄 速水聖子 原田拓馬 真木隆行 Michel de Boissieu 村上龍 村田裕一 森朋也 森下徹 谷部真吾 山本冴里 脇條靖弘
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