戦争を止めたいしたくない」という

強い思いが原動力に…。


 侵攻開始から1年2ヶ月が経った現在も、戦争の終息のめどは見えません。この1年間、多くの時間を費やし取り組んできたこの「ウクライナ危機と私たち」も、実際の戦争を止めることにはほぼ無力です。

     しかし、侵攻開始間もない時期から私たちは、さまざまな情報や資料等を集め、皆で学びながら、また尊敬する研究者の方々の助言を得ながら、マスメディアの論調等に回収されない自分たちなりの見方を鍛え、言葉をつくろうとしてきました。

      企画準備会は紆余曲折で、なかなかまとまりませんでしたが、その記録を読むと、戦争に直面した市民たちが何を考え、どのような模索をしたのかを読み取ることができます。そして、16回の企画準備会と本番4回を行う原動力は、戦争を止めたい、戦争をしたくないという思いでした。

 また、この企画の大きな特徴として、戦渦を目の当たりにしたウクライナとロシアの当事者との交流を大切にしました。私たちの話し合いは、ややもすると国際情勢談義になりがちな中で、当事者の体験や思いについて話を聞き、その痛みや苦しみに思いをはせた時間が講座中で最も、参加者の心が一つになった時間だったように思います。

      為政者の言動に注目しがちなマスメディアに対し、その下で生きる市民の具体的な声を聞き取ることこそ、同じ市民としてとても重要なことでした。そして、「私とあなたの戦争じゃない」という言葉に象徴されるように、市民は戦争することを望んでおらず、いずれの当事者も自国が戦渦にあることに苦しみ、葛藤しながら生きていました。

 そして、その苦しみは、日本で生きる私たちにとっても対岸の火事ではありません。台湾をめぐる米中対立は深刻で、万が一台湾が戦場となれば、必ず日本も巻き込まれると言われています。日本国内でも軍備強化の世論が高まり、NATOとの連携も模索されています。

      私は戦争の被害者にも加害者にもなりたくありません。戦争で犠牲になるのはいつも、為政者ではなく市民、とりわけ弱い立場の人たちです。アメリカ議会等で積極的なロビー活動を行っている新外交イニシアティブの猿田佐世弁護士は、東アジアで戦争をしないために「一つの中国」「台湾独立の不支持」の再確認と行動実践が必要だと訴えます(※)。その訴えが、台湾の人たちの「正義」に適うのか。台湾の人たちも、自分たちの行く末に揺れています。また、戦争を避けるためとは言え、台湾の人たちだけが一方的に尊厳を踏みにじられても仕方ないとは、私は思っていません。

      しかし、今回の連続講座を通じて、「正義」は所与のものではなく、為政者らによってつくられるものであることも学びました。その上で、一市民として、本当に大切にしたいもの、守りたいものは何なのか。それを考える出発点になったのが、「ウクライナ危機と私たち」をめぐる一連の学びだったように私は思います。この学びと模索は今後も続きますが、ともにこの間の学びに係わり、ご尽力くださいましたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。

文責:佐治 真由子

※ 2022年6月18日に開催された安全保障関連法に反対する学者の会第6回オンラインシンポジウムでの猿田弁護士の発言より。