学習か、行動か、割れる意見の中で、
公開教室「ウクライナ危機と私たち」は
実現した…。
学習か、行動か、割れる意見の中で、
公開教室「ウクライナ危機と私たち」は
実現した…。
ロシアによる2022年2月24日のウクライナ侵攻から1ヶ月後の3月25日、テレビから流されるロシアとウクライナの戦闘報道に心を痛めた仲間たちがまなポート大原の会議室に集まりました。
それからほぼ6ヶ月間、16回にわたって企画準備会を開催し、いろいろな視点からいろいろな意見が発せられ、熱き討議を重ねて4回の連続講座の企画がまとまりました。
以下は、そうした企画準備会での議論の抜粋です。
高校生からシニアまでが
喧々諤々、16回・26.8時間に
わたって議論が白熱
突然のロシアのウクライナ侵攻は、日頃から戦争と平和について語り合い活動してきた<ひろがれ!ピース・ミュージアムいたばし>の仲間たちの心を揺さぶるに十分な衝撃ニュースでした。
連日メディアから流れでる生々しく痛々しい戦場の傷跡を目にして、誰もが「何かしなければ…」という気持ちで集まり、板橋の地でのアクションを模索したのです。
企画準備会としてスタートした話し合いでは、受験を控えた高校生から現役社会人や学識者やシニアが参加し、皆が持ち寄った情報を元に話し合ったもので、その回数は16回、26.8時間を費やしての白熱した議論でした。
学習で良いのか? 行動では?
今、私たちは「何をすべき」なのか?
企画準備会の冒頭では、私たちは「何をすべきか?」という問いかけに対して、真摯に議論が繰り返されました。仲間の中には、すでにいろいろな形でメッセージを発信したり、街頭に打って出てウクライナ支援やロシア抗議や即時停戦を呼びかけたアクションをした人もいましたが、この集まりとしては何をしたら良いかを時間をかけて討議しました。
特に「今、学習などしている場合なのか? 行動こそ大事では?」という意見の強さは無視できず議論は白熱しました。そして、行動の必要性や重要性を理解しつつ、この集まりではさらに情報を集めるとともに学びを深めて、行動につながる学習を進め、その成果を広く板橋区の皆さんにお伝えすることにしました。
私たちが学ぶべきこととは何か?
なぜ戦争が起きたのか? 防げなかったのか?
私たちにとっては、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした戦争については、理解が及ばない部分が多いため、まずはいろいろな情報を独自に集め、それをもとに議論を進めることにしました。
もちろん、その当時のメディアはどこもウクライナで起きている戦闘シーンや被害状況、ゼレンスキー大統領のメッセージや欧州をはじめ日本のロシア非難やウクライナ支援、等の報道で溢れかえっていましたが、私たちとしてはロシア側の主張や評論などについても目を配りました。
なんで戦争が起きてしまったのか?それは止めることができなかったのか?という検証を、歴史的な経緯や大局的な視点から議論を重ね、分析を行いました。
区民の共感を呼ぶ企画とは?
ありのままの私たちができること・したいことを話す
私たちの願いは、この戦争をいかに早く停戦させるとともに、新たな戦争を引き起こさせないことや、破壊された被災地の早期復興と避難者の帰還を実現させることでした。そして、さらに戦争をこの世から無くして世界を平和にしたいということでした。そうした思いを区民に発信して、一緒に学ぶ中で議論を進めることによる学習の上積みをしたいと考えていました。
しかし、当初の企画段階では死者に対する痛みとか、戦争のリアルなメッセージが薄かったことから、戦争現場のリアルな情報が伝え切れないのではないかという声も上がり、さらに議論を重ねて一人ひとりの心の奥底にある非戦の願いを浮き彫りにし、区民(市民)として何ができるか?というテーマ設定。
参加者の一人である男子高校生からは、「どうやって物事を捉え、それぞれの人がそれぞれの立場で捉えつつ、現実として未来に向けて何ができるのか。知見として何を残そうと大人たちは考えているのか。僕たちは何をバトンとして受け取ったらいいのかっていうあたりの話をぜひ聞きたい 」との声もいただき、より具体的な企画の見直しを図りました。
メディアはどこまで信頼できる…。
プロパガンダを見抜くための術とは?
私たちに伝わるウクライナとロシアの戦争報道では、マスメディアのほとんどはNATO側によった情報が多く、私たちは早くからそうした情報の偏りについての危険性を察知していました。また、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本に訪れ、国会で演説した際の一部野党を除くほとんどの国会議員の絶賛ぶりには、異様な空気を感じた方も多くいました。
そこで、私たちはマスメディア以外の情報ソースも含めての情報収集し整理することで、真実を見極める作業をしました。「ロシア非難・ウクライナ連帯」の声が強まる中で、もっと知らない情報が隠されているのではないかと、情報格差を埋めていくための学習も進めてきました。
湾岸戦争の時もイラク戦争の時も、ちゃんとした情報が得られたのは数年後だったという経験から、情報弱者として踊らされ、動員される対象の市民の自立を目指して、対話を重ねました。
実情を知るには当事者の意見も必要。
ウクライナ人とロシア人から話を聞こう
私たちが知っている情報は、どこまで真実なのだろうか? それは、マスメディアから流される市民の声や気持ちについても、同じように感じました。ウクライナの人たちは、ゼレンスキー大統領と同様に「ロシア憎し」と思って、徹底抗戦に賛成しているのか? ロシアについても、プーチンが決断したウクライナ侵略について、当然と受け止め、ロシア軍の勝利を願っているのか?
確証の得られない情報は知らせるべきではないだけに、自分たちの手でそうした疑問を晴らしたいとの気持ちから、本企画では日本に在住するウクライナ人とロシア人の双方から話を伺う企画を実現したいと、急遽、皆で手分けして人探しを行いました。
そうして実現したのが、第3回講座での「ウクライナとロシアの現地の声」でした。幸い、ウクライナから避難してきた母子とロシアからの留学生(大学生)を探し当て、お話ししていただくことの了解を得ることができました。
常盤台駅前ロータリーでウクライナの惨状を話すオクサナさんとグレゴリー君
寄り添うということとは何か?
いかに自分ごととして受け止めて考るか
議論を重ねる中で何度も出てきたのが、国家や人種などの単位ではなく、一人の人間の気持ちに寄り添ったところでの話し合いが必要ではないかという意見でした。
実際にそこに住んでいる人がどう感じて、どういう思いを抱いているのか?ということに関心があるという意見は多く、そうした人間がどういう思いなのかを知った上で、次に自分はどう行動すれば良いかを判断したいという意見でした。
まさに国家の権力者でもない一市民として、まずウクライナやロシアの土地で生きている市民の声や気持ちを知った上で、その背景にあるものを異国にいる私たち日本人が理解していけるのかということを勉強する。その気持ちや背景を理解しながら、ウクライナとロシアの間にある暴力をどういうふうに止められるかということと、日本においても過去、現在、未来の暴力、戦争を止めるということにつなげていけるか。課題の引き取り方、深め方、どこまで深めていくかということについても話し合いました。
不毛な対立ではなく、お互いに認め合う中で、
考え方の違う人と言葉を交わす瞬間が大事
対話をしなければ絶対にダメという強い気持ちは、仲間の全員が強く持っていました。誰かに聞いてもらうことによって自分の問題意識を鮮明にできるし、意見の違う人とも辛抱強く話すことで理解してもらい信頼を築くことができます。同じ考えの人とだけ話していても仲間の輪は広がらないし、相手が何を感じているかを知ることから生まれ出てくる考えもあります。
当初、今回の企画のテーマとして掲げていた「戦争をしない、させない、繰り返さない」という言葉一つを取り上げても、いろいろな思いを持った人たちの間で議論が積み重ねられ、言葉の裏にある思いに触れることができました。
皆それぞれがそれぞれの真実を持っていて、どの真実が一番正しいかということは、誰にも言えないのでしょう。今までに話したことがなかった人びとと、この講座をきっかけとして出会い、戦争や平和について話ができたら素敵だなと開催に胸を膨らませました。
市民にできることは何か?
戦争を止める力はないが、起こさせない力はある
本講座の着地点をどこに定めるかについては、一番長い時間をかけて議論を重ねました。そして、皆が皆、言葉は違えども、学習の成果によって市民として何ができるかという合意形成をはかり、次の行動に繋げていくことの大切さを確認しました。
対話では、同じことの確認はもちろんですが、違うことを確認することによって、自分にないものを知ったり、気付いたり、学んだり、理解し合うことができます。対話によって、私たちの目的である戦争を即時停止させること、新たに戦争をしないこと、戦争をこの世から無くすこと、世界を平和にするこということを共通認識にすることができれば、次の学習テーマも見えてくるように思いました。
※ロシア・ウクライナ戦争の構図と支援のあり方