臨床研究の適切な実施および推進に資する知識の習得を目的として、4つのテーマを基にセミナーを企画開催しております。
テーマ①:臨床試験デザイン
テーマ②:アカデミアにおける開発戦略
テーマ③:法令関係
テーマ④:トピックス
第7回「未来の医療に向けたバイオバンク・ジャパンの取り組み」
バイオバンク・ジャパン(BBJ)は、2003年に東京大学医科学研究所を中核として構築された、日本最大級の疾患バイオバンクであり、国内12医療機関と連携し、51疾患・約27 万人に及ぶ大規模な臨床情報と生体試料を集積してきた。SNPアレイや全ゲノムシークエ ンス(WGS)、メタボローム、プロテオームといった多層オミクス解析を統合的に展開することで、疾患感受性や薬剤応答、副作用発現に関わる分子基盤の解明を先導してきた。
現在進行中の第5期では、電子カルテ情報を活用した大規模かつ高精度な臨床データ基盤の構築と追跡調査を推進するとともに、Web審査による迅速な試料・情報提供体制を 実現し、研究者が即時に活用可能な環境を整備している。さらに、NBDCやCANNDsを通じたデータ公開に加え、統合データパッケージの提供により、多層オミクスと臨床情報を横断的に活用できる世界水準の研究基盤へと進化している。
今後は国内バイオバンク・コホートとの連携を加速し、100万人規模のゲノム研究基盤を構築することで、日本人に最適化されたゲノム医療と次世代創薬の実現を目指す。本セミナーでは、BBJデータの具体的な利用方法、これまでの代表的研究成果、さらに医療実装に向けた最前線の取り組みについて紹介する。
第6回「オンライン治験(DCT)による臨床試験の変革」
Decentralized Clinical Trial(DCT、分散型臨床試験)は、感染症領域のみならずがん領域や他の領域でも事例が増えつつある。がん領域ではパートナー施設と呼ばれる患者自宅近隣の医療機関に検査等を委託することで、患者が居住地によらず 遠方からでも臨床試験に参加できる形式のDCTが増えており、臨床試験へのアクセス改善、患者登録スピードの加速、モニタリングコストの削減といったメリットが存在することで、さらなる普及が期待されている。国立がん研究センター中央病院では医師主導治験、企業治験に対して、フルリモート型、ハイブリッド型のDCTを4試験に導入しており、さらに数試験で導入準備を進めている。最近では注射剤投与をパートナー施 設へ委託するモデルも登場しており、講演では様々なDCTの具体例に加えて、DCTの課題や未来像について解説する。
第5回「ドラッグロス問題についての課題と今後の取り組み 克服に向けた希少疾患領域での実例も踏まえて」
近年、日本における医薬品等へのアクセスの問題として、ドラッグラグおよびドラッグロス問題が 注目されています。ドラッグラグは、日本国内で新薬の承認・販売が海外に比べて遅れていることを指します。海外で先に開発されて、製薬企業が市場規模などを重視し、海外での開発を先行し、日本での開発、承認申請が後になることがあります。以前は、このドラッグラグにより、国内の患者が海外で利用可能な新薬の恩恵を受けられないという問題が話題となり、海外の臨床試験データの受け入れや、国際共同治験の実施なども含めて解決しようとしてきました。しかしながら、最近ではさらに 大きな問題となるドラッグロスが注目されています。ラグとは、遅れていることなのですが、ロスはそもそもないことを意味します。海外では開発され承認もされているのに、日本では開発さえ全く行われていない状況で、特に小児・希少疾患領域で顕著だと言われています。
これらの問題に対処するため、行政機関、製薬企業、我々アカデミアそして患者さんも含めて、まずはその原因や課題を理解し、最近の行政の取り組み、また演者の関与する領域での国内からの開発成功事例なども踏まえて、皆で解決する方策を考えたいと思います。
第4回「小児を対象とした臨床試験のゴール設定やプロトコル作成に必要なこと」
臨床試験は、科学的妥当性があり、倫理的に許容される範囲内で実施されるヒトを対象とした介入研究であり、新しい医薬品や新しい治療法などの有効性及び安全性を評価するための方法です。小児を対象とした臨床試験を行う場合でも、最初にゴール(医薬品の適応拡大なのか、エビデンス創出なのか)を明確に設定し、研究デザインを決定することが大事です。臨床試験の実施体制の整備と研究資金の準備も必要です。そこで今回は、小児を対象とした臨床試験をより適切に行うために、ゴール設定からプロトコル作成までの間に必要な手順と留意すべき項目についてお話させていただきます。本講演が、皆様が臨床試験の計画・実施する際の一助になれば幸いです。
第2回「臨床研究法の改正について」
平成30年4月1日に施行された臨床研究法(平成29年法律第16号。以下「法」という。) 附則第2条第2項における、法施行後5年以内の見直し規定に基づき、厚生科学審議会臨床 研究部会では、令和3年1月から検討を開始し、臨床研究等の施策全般の見直しに関する議論 を重ねるとともに、関係者及び関係団体からのヒアリングを実施した上で、令和4年6月3日 にとりまとめを公表された。
このとりまとめの内容を受け、令和6年6月14日に「再生医療等の安全性の確保等に 関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律 」(令和6年法律第51号。以下「改正法」と いう。)が第213回国会で成立し、公布されたところ。
今回、臨床研究法と改正内容について概説する。
第1回「人を対象とする研究倫理の基本理念と倫理的配慮」
研究者は、研究倫理の基本理念や研究倫理関連の法規制や機関内のルールに則って研究活動を行うことが求められています。臨床研究は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関 する倫理指針」の適用を受けるものがほとんどですが、その指針の規定を理解することは容易ではありません。また、責任ある研究者として、規定にある手続きに則って研究計画を作成し、 研究を実施することだけでなく、それら規定の根拠といえる研究倫理の基本理念を理解した 上で、どのような倫理的配慮が必要となるのかを知っておくことが大事です。
そこで今回は、研究倫理の基本を踏まえつつ、倫理的留意事項についてお話をいたします。 本講演が、皆様の研究活動の一助になればと願います。