検証:豊橋市の多目的屋内施設(新アリーナ)計画

市の強引な進め方(

12月市議会から


 このページでは、豊橋市議会2022年12月定例会での多目的屋内施設の整備計画に関する質問と答弁から判明した事実を整理、検証しています。


1.市は、「家屋倒壊等氾濫想定区域内の建物の建築に規制や制限はなく、現時点では引き続き豊橋公園内での整備を進めていきたい」と答弁するとともに、多目的屋内施設(新アリーナ)の整備範囲を「豊橋公園東側の北側エリア」から「豊橋公園東側のエリア全体」に変更しました


 昨年11月、多目的屋内施設(新アリーナ)の建設予定地としていた豊橋公園東側の北側エリアの半分ほどが、愛知県指定の家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)に含まれていることが判明しました。

令和3年3月に豊橋市が公表した「多目的屋内施設の基本計画策定に向けた基礎調査報告書」に掲載されている多目的屋内施設の整備検討エリアを示す豊橋公園の地図(図表6-1)に、朝倉川左岸の家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)を書き加えた地図

多目的屋内施設の整備検討エリアと家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)を記載した豊橋公園の地図

 すると、市は12月市議会で突然、新アリーナの整備範囲を「豊橋公園東側の北側エリア」から「豊橋公園東側のエリア全体」に変更しました。具体的には、これまで陸上競技場北側のテニスコートや武道館、豊橋球場北側の市民プール跡地等がある場所に整備するとしていたものを、豊橋球場や陸上競技場の再配置も含めて整備していく方針に転換したのです。


 おそらく市は、「広域防災活動拠点」として活用する新アリーナを、洪水時に地盤流出のおそれがある家屋倒壊等氾濫想定区域に建てることには市民の理解が得られないだろうと考えたのでしょう。

 ところが、既存施設をそのままにして豊橋公園東側エリア内に配置しようとすると、豊橋市が令和3年3月の基礎調査報告書の中で検討している下図のいずれの配置案(A案、B案、C案)を採用しても、家屋倒壊等氾濫想定区域にかからないように配置することはできません。

令和3年3月に豊橋市が公表した「多目的屋内施設の基本計画策定に向けた基礎調査報告書」に掲載されている多目的屋内施設の配置パタンを示す豊橋公園の地図(図表6-4)に、朝倉川左岸の家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)を重ねて表示した地図

多目的屋内施設の配置パタン(令和3年3月の基礎調査報告書の図表6-4)に家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)を重ねた豊橋公園の地図

 そこで、市は、氾濫想定区域の外にある野球場または陸上競技場を氾濫想定区域側(北側)に移設し、その跡地に新アリーナを建設しようと考えているのかもしれません。


 しかし、陸上競技場は2018年に8億円もかけたスタンド改修工事が完了し、2021年には走路の改修工事が完了したばかりです。豊橋球場についても、建て替えや移転が必要との話などこれまで聞いたことがありません。

 移設するとなると、新アリーナの整備費に加え、こうした既存施設を取り壊して更地にする費用と、再び新たに建設する費用がかかってしまいます。

 それに、野球場や陸上競技場は防災拠点として活用しないからといって、洪水時に地盤が流出するおそれのある場所に市民の財産となる公共施設をわざわざ移設するなど、まともな考え方ではありません。

 こうした本来必要のない既存施設の移転まで含めて新アリーナの建設に突き進もうとする豊橋市の暴走には、何かに憑かれたような異様さすら感じます。



.市民の意見を聞く説明会実施の必要性を問われた市は、建設予定地が家屋倒壊等氾濫想定区域にかかっている事実も含め、新アリーナ計画について今後市民に対する説明会は予定していないと答弁しました


 豊橋市は、浅井市政になった後、市民には何も知らせない中で昨年5月に突然豊橋公園での計画推進を公表しました。その後も計画について「広報とよはし」に掲載することもせず、市民に対する説明はありません。

 これまでに開催された唯一の市民向け説明会である昨年10月1日の八町校区説明会では、他校区の住民の参加を許さず、まだ多くの人が質問しようと挙手しているにもかかわらず、「時間が来た」と言って45分で一方的に質問を打ち切ってしまいました。「周辺住民に対して説明した」という事実を残すための形ばかりの説明会との印象でした。


 そして、昨年11月に建設予定地の半分ほどが家屋倒壊等氾濫想定区域に含まれているという重大事実が判明したにもかかわらず、市の文化・スポーツ部長は、市議会12月定例会の答弁で、判明した事実について「市内各所での説明会は予定しておりません」と答弁しました。


 建築費だけでも100億円以上かかる事業にもかかわらず、八町校区以外の豊橋市民は、市の説明を直接聞く機会も、市に直接質問する機会も与えられていません。

 豊橋市民に気付かれないように庁内でも情報共有を避けて計画を進め、計画推進の公表後も、ずさんな計画が広く知られて騒がれないように一般市民への説明会も設けないままに、後戻りできない事業契約の段階まで一気に進めてしまおうという市の意図が見て取れます。


 多目的屋内施設整備推進室が家屋倒壊等氾濫想定区域の存在に1年近く気付かなかったという呆れた事実は、市民に対してだけでなく、庁内でも計画推進を秘密裏に進めていたことを強く推測させるものです。

 豊橋市を揺るがしたあのユニチカ跡地問題の教訓が全く活かされていません。



.アクセス方法における課題を問われた市は、「公共交通と豊橋駅前駐車場の利用促進の啓発と誘導」と答弁し、市がいまだにアクセス性の悪さを問題点と認識していないことを露呈しました


 アクセス性の課題を問われた豊橋市の文化・スポーツ部長は、「何より鉄道やバスといった公共交通の利用を促すことが重要」と平然と答弁しています。では、一体どの鉄道、どのバスを利用しろと言うのでしょうか。


 本ホームページでも詳しく説明しているように、5,000人規模のアリーナの観客に対し、市電で輸送できる人数は最大でもわずか900人程度と見込まれます。現在、豊橋公園を通る路線バスはありません。必然的に、多くの人はJR、名鉄、渥美線、路線バスで豊橋駅まで出て、豊橋駅から新アリーナまでの約1.8kmを23分かけて歩くことになります。

 一方、会場に直接車で行くこともできません。新アリーナには来場者専用の駐車場をつくらないからです。


 市長や市の幹部は、来場者に中心市街地(まちなか)を歩かせることでまちなかを活性化させるという何の裏付けもない政策に拘泥し、思考停止状態に陥っています。

 アクセス性の悪い豊橋公園に建設すれば、来場者(公演アーティストのファンやBリーグのブースター)に過度な不便を強いることになり来場者数が伸び悩むというあたりまえの結末が待っています。


 そればかりか、もしこのまま建設すれば、興業開催のたびに豊橋駅周辺での激しい渋滞、市電沿線住民の長い乗車待ち、混雑に辟易した一般市民の郊外店舗への逃避、豊橋公園周辺の生活道路の大渋滞などが発生し、市民はこうした問題にこの先ずっと悩まされ続けることになります。