ワークショップ1.0との比較
データ収集および比較を考慮して、ワークショップ2.0(以下WS2.0)の内容はワークショップ1.0(以下WS1.0)から大幅に変更していません。WS2.0ではWS1.0同様、参加者は循環型デザイン戦略「Design for Disassembly」に基づいたデザイン課題に取り組みました。また、WS2.0でも実践的なプロトタイピングに重点を置いています。
WS2.0における変更点はプログラムの内容とスケジュールです。WS1.0のプログラムは、(循環型社会に関する予備知識をほとんど持たない)デザイン系の学部生を念頭に置いて設計しました。WS2.0には、循環型モデルやサーキュラーデザインについて、既に知識のある大学院生の参加者もいたため、学生の教育レベルや学習ニーズに合わせて、プログラムを少し変更しました。もう一つはスケジュールです。WS1.0は、春休みに開催したため4日間連続でワークショップを実施することができましたが、WS2.0は大学の授業との兼ね合いで、2回の週末に分けて行いました。週末に挟まれた5日間にも参加者は作業・制作できたため、その間も参加者同士、そして、主催者であるSalotとプロトタイピングのプロセスについて話し合う機会を2度設けました。以下に、ワークショップ2.0の内容を詳しく紹介します。変更点はハイライトで表示しています。
Contents
1日目
Lecture “What is Circular Design?”・循環のためのデザイン
サーキュラーデザインの基礎を学ぶ60分のレクチャー
内容
直線型と循環型の違い
循環型経済システム(バタフライ・ダイアグラムの説明)
サーキュラービジネス:プロダクトからサービスデザイン
サーキュラー・デザイン戦略
サーキュラー・ビジネス、デザインの実例紹介
デザイン課題の説明
実践
ラピッド・マテリアル・リサーチ
ラピッド・プロトタイピング
経過報告プレゼンテーション
[Day 2]
プロトタイピング
レクチャー「循環型ビジネス」
ゲスト講師:colourloop CEO, 内丸もと子さん
協賛のcolorloop CEO内丸もと子さんからカラーループの循環型ビジネスモデルに向けた取り組みや、同社の素材の研究開発についてご紹介いただきました。参加者にとって、テキスタイル・リサイクルの現状を知り、循環型モデルに取り組む必要性をより感じる機会になったようです。講演終了後、質疑応答が行われました。
「サーキュラー・フロー・マップ」(Circular Flow Map)を描いてみよう
(詳細はワークショップ1.0の内容をご参照ください。)
宿題「サーキュラー・フロー・マップVer2」を作成する。
[Midweek]
デジタル・ログブック
参加者は、週末のワークショップ期間中と平日作業時の各々の進捗をデジタル・ログブック(google slide)に記録するよう求められました。デジタル・ログブックには、日々の作業や考察をスケッチや写真、ビデオ、文章などで記録してもらいました。
大学でのプロトタイピング、制作とグループセッション
2度の週末に跨ったワークショップだったため、参加者は、平日に大学でプロトタイピングや制作を行うことができました。全員京都工芸繊維大学の学生だったため、レーザーカッターなどのデジタルファブリケーション機器や真空成形機など大学設備を利用し、colorloopのWFRPシート材を使った試作を行いました。この期間中にグループミーティングを2度設定し、参加者の進捗の共有や振り返り、参加者同士、Salotからの助言などを行いました。
[Day 3]
制作
記録と展示準備
製品は分解される運命にあるため、きちんと記録する。
展示会: 展示会は参加者が自身の作品を観客に向けて発表する機会を作ることで、作品の完成度を高め、プロセスや思考を整理することを促すことを目的とする。
プレゼンテーション
各作品
「 サーキュラーフローマップ」
来場者からのフィードバック
アフター・トーク
[Day 4]
分解
振り返り、グループディスカッション
ワークショップ前と終了時にアンケートを実施し、デジタルログブックにワークショップ中のプロセスを記録してもらいました。さらに、参加者との各日のグループトークや主催者による観察を短いレポートにまとめました。これらは、文章、写真、ビデオとして記録されました。データ収集の目的は、サーキュラーデザインと循環型経済に関する参加者の知識と経験のレベルの把握と評価、そして、参加者が循環型に取り組む際の課題を理解することでした。ワークショップ1.0とワークショップ2.0の大きな違いの1つは、ワークショップが開催される日程でした。これは、データ収集の方法に影響を与えました。WS1.0では4日間連続で行われたのに対し、WS2.0では2つの週末に跨って行われ、間の平日にも参加者は作業を行いました。その間の参加者の進捗を把握し、参加者自身で振り返りを行えるようにデジタルログがより積極的に活用されました。
WS2.0は、京都工芸繊維大学デザイン学部の学部生と大学院生を対象に参加者の募集を行いました。事前に行ったアンケートの結果、参加学生は全員、事前に循環型経済についてある程度知っていることがわかりました。また、過去にサーキュラーデザインの経験がある参加者も1名いました。ワークショップの内容で述べたように、参加者の知識、スキル、ニーズのレベルに合わせて、ワークショップのプログラムを変更しました。これらの変更は、WS2.0を開始する前から準備したものと、開催中に必要に応じて行われたものがあります。
例えば、二日目のレクチャーです。第1回目の「Design for Circularity」ワークショップでは、3日目にcolorloop代表の内丸もと子さんが展示会に参加され、colorloopのリサイクルテキスタイル素材を使って参加者が制作した最終作品を見て頂きました。その際に、colorloopのために開発した幅広い素材サンプルを持参してくださり、参加者や展示会の来場者に紹介してくださいました。参加者は内丸さんの素材研究やデザインの実践について詳しい質問をすることができた学びの多い時間だったことから、ワークショップ2.0では参加者がコンセプト作りやプロトタイピングをしている前半に内丸さんを招き、colorloopの素材研究や循環型ビジネスの展開について紹介していただくことにしました。 内丸さんのレクチャー「サーキュラービジネス」では、colorloopのサーキュラーデザインの実践や、テキスタイルリサイクルに関する詳細な背景を説明してくださいました。その後、参加者は内丸さんに質問をしたり、colorloopの幅広い素材サンプルを手に取って観察しました。本レクチャーはその後colorloopのWFRPシート素材を使った制作に大きな刺激となったようです。
WS2.0はワークショップ前半はレクチャーやディスカッションが多く、実践的な制作は平日に行われました。参加者が大学設備も利用しながら、素材の探索やプロトタイピングを行った活動の詳細はMidweek Reportにてご覧ください。