外来語、とりわけ英語から入ってきた言葉は、専門的な分野だけでなく、私たちの身近な日常生活にも広く浸透しています。例を挙げたらきりがないですが、「バス」「キッチン」「クラス」… 。
2002年、日本政府の働きかけにより、国立国語研究所に「外来語」委員会が設立されました。同委員会は、『「外来語」言い換え提案 -分かりにくい外来語を分かりやすくするための言葉遣いの工夫-』について議論を行い、176語の外来語に対して言い換えの提案を打ち出しました。[2006年外来語言い換え提案リストのリンク]
詳しくは、田中・相澤(2010)、相澤(2012)をご覧ください。この先生方は委員会のメンバーということで委員会設立の経緯や取り組みについて詳細に紹介されています。
私は、このような日本語に影響を与える外来語に対する日本政府のかつての取り組みを世界にもっと知ってもらいたいと思い、英語で論文を書きました(Nambu 2025)。そこでも紹介しましたが、言い換え提案にある176語のリストは実用的な観点からの「言い換え語リスト」ではなく、分かりやすい言葉遣いを促すための工夫、つまり、場面に応じた言葉選びを行い、必要に応じて説明を加えるなどの配慮を促すことが、提案の意図であったとされています(相澤 2012: 141-142)。
ちなみに、文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」でも外来語に関する調査結果の報告があります(リンク)。
文献
相澤正夫 2012. 「「「外来語」言い換え提案」とは何であったか」陣内正敬,田中牧郎,相澤正夫編『外来語研究の新展開』, 133-147. おうふう.
田中牧郎・相澤正夫 2010. 「難解用語の言語問題への具体的対応ー「外来語」と「病院の言葉」を分かりやすくする提案ー」『社会言語科学』13(1), 95-108.
Nambu, Satoshi. 2025. Reflection on Japan’s language policy for English loanwords: Policy aims and media usage analysis. English Today.