災害時要援護者を支援するには 平成 21 年度防災リーダー研修会(22/01/31)の講演から
講師 細川顕司氏(財団法人市民防災研究所事務局長兼調査研究部長)
災害現場で自治体の救助はあてにならない、先ずは自助、共助
・「水道が止まったら水をどうやって手に入れるか」と質問すると、「給水車」と殆どの人が答えます。テレビ で給水車から水を貰う被災者の映像を見ているからです。非常時に何処にも配置できるだけの給水車を常備 している自治体はありません。他の自治体から応援出動があっても、自分の所まで給水車は来ません。 各所に設置されている給水拠点に自分で容器を持参して貰いに行くのが基本政策となっています。
・阪神淡路大震災で生き埋めになって救助された人は、34.9%が自力、31.9%が家族、28.1%が隣人に救われ、 消防等の救助隊に救われたのは 1.7%です。消防隊は非常時対応の配置はしていないので手が回りません。 自助、共助が重要です。また地震が早朝に発生したので家族全員が家にいたため、家族による救助の比率が 高かったと言えます。発生が3時間後だったら家族はおらず帰宅も出来なかったでしょう。 ・自主防災組織の結成が阪神淡路大震災の経験を踏まえて推奨されることになりました。
災害での死者は高齢者が多く、女性の数が男性より遥かに多い
・阪神淡路大震災で死亡した人の 44%は 65 歳以上、うち女性は男性の2倍でした。女性の長寿が理由です。
・2004 年の新潟県豪雨災害では逃げ遅れた 65 歳以上の高齢者が多数犠牲になりました。この経験から避難遅 れを防ぐため、避難準備情報(早めの避難を促す)が出されることになりました。
地域の防災活動はチャンとやろうと思うな
・出来ることからやりましょう。50 点の状態から 51 点になれば前進です。防災に満点はありません。
・集まった人だけで直ちに必要な活動を始めましょう。既定の責任者が不在でも戻るまでは待てません。
防災活動は時と共に果たすべき機能は変化する
・最初の 3 日間は救助、その後は避難所の運営、1ヶ月後は町づくりの意見集約と重点が変わります。
・地元の意見が纏まらないと行政は手を着けません。地権者の利害で揉めて意見集約が遅れると復興事業は後 回しになります。
防災対策は男の仕事でも高齢者の仕事でもない、女性パワーを生かそう
・避難所での着替えスペース確保、トイレの整備は女性の目で決めないと血が通った対策になりません。
・西宮市の避難所でお婆さんが給水車で貰った水で洗濯をしたため騒ぎになりました。「貴重な飲み水を洗濯 に使うとは何たること」と言われ、お婆さんは「汚れた下着は着たくない、飲み水は我慢する」と答えます。 多様な価値観への理解、女性心理の汲み取りが大切です。
要援護者の支援
・障害者が避難所に行っても、もうスペースはなく、行き場がなくなって、さまよう事例が阪神淡路大震災で 多数見られました。
・国は「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を出しており、自治体も対策を策定しています。
①避難準備情報の発令、②災害時要援護者の情報の共有、③避難支援プランの策定、④避難所に於ける支援、 ⑤関係機関等との連携が骨子となっています。
・災害時要援護者の名簿作成は、登録方式(救助の希望を申し出る)、同意方式(民生委員の訪問や市から郵 便で意志確認をする)等の方法で行います。作成に当って、各人の緊急連絡先を記載する事が重要です。 これを関係部門で共有し、毎年更新して下さい。65 歳以上の高齢者は1年経つと3割に何らかの移動が生 じますから、更新しないと使いものになりません。
以上