家族の言語方針検討における医療専門家の影響
アメリカ手話と英語のバイリンガルを選択するまで
アメリカ手話と英語のバイリンガルを選択するまで
ボビー・ジョー・カイト(2020)家族の言語方針検討における医療専門家の影響ーアメリカ手話と英語のバイリンガルを選択するまで『学校心理』57, pp.402-417. DOI: https://doi.org/10.1002/pits.22324
近年、ろう・難聴児の言語発達や教育をめぐって、「どの言語環境を子どもに提供するか」という問題が世界的に議論されています。とりわけ、手話言語と音声言語の両方を用いるバイリンガル教育や、家庭内での言語選択のあり方は、子どもの言語発達、アイデンティティ形成、教育機会に大きな影響を与える重要なテーマとなっています。本稿では、ろう難聴児をもつ聴者家族がどのようにしてアメリカ手話(ASL)と英語を用いるバイリンガルの言語環境を選択し、家族としての言語方針(ファミリー・ランゲージ・ポリシー)を形成していくのかを、質的研究に基づいて検討しています。また、その意思決定の過程において、医療専門家や教育関係者から提供される情報や助言がどのような影響を与えているのかについても明らかにしています。
ろう難聴児の95%は聴者の家庭に生まれると言われており、多くの家族にとって、手話やろう文化に触れる経験は子どもの誕生後に初めて始まります。そのため、どのような情報や支援にアクセスできるかは、家族の選択や子どもの言語環境に大きく関わる重要な要因となります。本稿は、そうした家族の意思決定の実態を通して、ろう難聴児の言語発達を支える環境について考察しています。
本プロジェクトでは、この研究の日本語訳を公開することで、ろう難聴児の言語環境や家族支援のあり方について理解を深めるための一助となることを目的としています。本プロジェクトが、ろう難聴児とその家族を取り巻く言語・教育環境について、新たな視点から考えるきっかけとなれば幸いです。