現在一番を力を入れている研究テーマです.「生態系をデザインする」という設計科学の精神で研究をすすめる方法を構想中です.環境撹乱に対する生態系の安定性や頑健性を維持するための生態系管理の方法を模索中です.その第一弾として,「生物多様性減少の許容量」を設定するための研究を,比較ゲノム解析・数理シミュレーション・微小生態系実験・野外定期観測を組み合わせて進めています.その一つの成果は,以下のブログの記事としてまとめていますのでご参照ください.この研究テーマは近畿大学・松井一彰さん,JAMSTEC・横川太一さん,台湾大学の謝志豪さん,中央研究院の湯森林さんといっしょに進めています.
2014年の研究の紹介:生物多様性減少の許容量の設定は可能か?
2025年の研究の紹介:一杯の水・一掴みの土から生態系の壊れにくさを診断しよう ~細菌群集が担う生態系レジリエンス診断評価技術の開発~ | ニュース | 龍谷大学 You, Unlimited
また,微生物の生態系機能の定量化に必要な統計手法のチュートリアルを公開しています.
https://sites.google.com/view/cer-ecoplate/講義資料ecoplate解析
チュートリアルの内容は書籍の一部としても出版されています.
Rではじめよう! 生態学・環境科学のためのデータ分析超入門 - 共立出版
地球上すべての生態系は,一次生産系と分解系という二つの基本システムがその土台となって維持されています.これらの二つのシステムが物質循環を介して相互作用していることは良く知られていることですが、一次生産を行う種と分解を行う種どうしも複雑に相互作用しあって,維持されています.本研究室ではとくに,それらの種の多様性が物質循環の速度や安定性を決める機構に注目して理論的な研究を進めています.
このテーマに関連した日本語の解説としては以下の文献をご覧ください.
三木 健 (2006) 生物多様性と生物間相互作用からの物質循環研究: 新しい方法論の芽生え. 日本生態学会誌56巻:240-252
三木 健 (2008) 群集―環境間のフィードバック―生物多様性と生態系機能のつながりを再考する. 京都大学学術出版会(「生態系と群集をむすぶ」第5章(大串隆之・近藤倫生・仲岡雅裕 編))
これまでの生態系モデルにおいては伝統的に,微生物群集を,あらゆる環境に瞬時に対応できる万能の「機能袋」(あるいはブラックボックス)として扱ってきました.しかし近年では,この機能袋の中にどのような種の微生物がいるか,どれだけの多様性が含まれているかが、袋全体の機能を大きく左右している可能性が指摘され始めました.本研究室ではとくに,微生物食物網の中の微生物どうしの相互作用が物質循環の速度や安定性を決める過程に注目して研究を進めています.
関連する業績は以下の通りです.
粒子態有機物および溶存態有機物と細菌群集の相互作用に関する理論的研究 (業績3, 10, 13)
細菌・ファージ・原生動物の相互作用が物質循環に及ぼす影響の評価のためのモデル (業績4, 8, 15, 進行中)
細菌群集の構造と環境要因の関係 (業績24, 進行中)
水域生態系におけるファージの役割に関する総説 (業績9, 17, 18)
寄生性菌類が湖の食物網で担う役割の定量的評価をめざすモデル (業績22, 35)
微生物食物網のサイズ分布に関する理論的研究 (業績28)
このテーマに関連した日本語の解説としては以下の文献をご覧ください.
三木 健 (2007) 細菌群集の時空間分布と物質循環をつなぐ:細菌とメタ群集理論. 日本生態学会誌57巻:398-406
三木 健・松井一彰・横川太一・西田貴明・小林由紀・内井喜美子 (2007) マイクロビアル・プールと生物多様性. 日本生態学会誌57巻:424-431
三木 健 (2008) 細菌の系統的多様性が可能にする集団レベルの可塑的応答. 日本微生物生態学会誌23巻:51-57