第3回 「キツネザルの味覚を語る」

日時:2020年8月9日(日)13:30~14:20

講師:阿野隆平(日本モンキーセンター)、糸井川壮大(京都大学霊長類研究所)

内容について、こちらから動画をご覧いただけます。


オンライン講座での質問に対する講師からの回答は以下のとおりです。


Q1:ゴーヤは皮が硬いから食べないのでは?

A1:もっと硬いエサを食べた経験があるので、硬すぎてというよりは「食べ慣れてないもの」でなおかつ「ガッツく程のものではない」という雰囲気でした(阿野)。

サルが食べられないほどの硬さではないと思うので、苦味も食べない一因だと思います(糸井川)。


Q2:108種のキツネザルが交雑する可能性は?交雑した場合の味覚や食性への影響は?

A2:ライブで回答済み


Q3:キツネザルはレセプタが変異する事で食性がほかのサルから変わったのでしょうか?

A3:キツネザルの祖先で起こったレセプタ(苦味受容体)の変化で食性が変わったかは分かりません。現生のキツネザルは、いろいろな食性をもつ種がいますが、多くの種はアルブチンに苦味を感じない型なので、多くのキツネザルにとっては、感じられなくても困らないのでしょう。ただ、ワオキツネザルの場合は、いろいろな種類の苦味を感じられることが、生活するのに役立っているのかもしれません。


Q4:マダガスカルの固有種のキツネザルたちは、名前のような狐に似た形態に進化した理由を伺えると幸いです。

A4:嗅覚が発達していたり、鼻先が長く濡れていたりする形態、ということでしたら、これは霊長類の祖先的な形態だと言えます。霊長類の祖先は夜行性だったと考えられていて、嗅覚に頼った暮らしをしていたので、こういった形態を持っていたのだと思われます。キツネザルたちは今もご先祖様の形態を残している、というわけです。むしろ、ヒトを含むグループが視覚の発達に伴ってこういった能力・形態を失っています。実は、キツネザルの中でも、鼻先が長いものも短いものもいるので一概にキツネのような形をしているわけではありません。ちなみに、キツネザルは英語で「lemur」と言いますが、これはラテン語の「lemures」が語源で「幽霊」という意味です。


Q5:壁が低いと思うのですが逃げ出さないんですか?

A5:逃げ出すことはないです。ワオキツネザルの跳躍力では越えられない壁の高さになっています。


Q6:先ほどの交雑の質問に関連する質問で、交雑で生まれた子供は、新種になるのでしょうか。それとも、雑種という分類になるのでしょうか。

A6:雑種(交雑個体、ハイブリッド)という分類になります。自然界でも、キツネザル属(クロキツネザルやブラウンキツネザルの仲間)の中での交雑は複数例報告されています。


Q7:キツネザルも加齢によって味覚機能が低下することはあるのでしょうか

A7:ライブで回答済み


Q8:キツネザルは食べ物を求めて移動をしますか?一日にどのくらい移動しますか?

A8:移動距離は種や食べ物、季節によって変わりますが、果実を主食とするブラウンキツネザルやクロキツネザルの仲間では、1日に500m~1km程度を移動しているようです。


Q9:種類ごとの味覚の違いで住み分けをしていることもあるのでしょうか?

A9:動物たちは、様々な要因が合わさって住み分けをしていますので、味覚の違いだけで住みわけができるかはわかりません。ただ、味覚が関与して、近い仲間の動物と違う食性を持っている例としては、ハチドリがあげられます。鳥類は甘味受容体が壊れているので、一般に甘味を感じませんが、ハチドリの仲間は、旨味受容体を変異させて甘味を感じることができるようになっています。これが、花の蜜を食べて暮らすのに重要な能力になっていると言われています。


Q10:天敵はどんなものですか

A10:キツネザルの天敵は、マダガスカル最大の肉食哺乳類であるフォッサや猛禽類、大型のヘビ(ボア)があげられます。


Q11:飼育下のキツネザルのエサについて質問です。

野生のキツネザルの食べ物に近づけるためにどんな工夫をしてますか?

A11:ライブで回答済み


Q12:アルブチンが苦味を抑えるのは拮抗阻害のような仕組みですか?

A12:ライブで回答済み


Q13:アルブチンって美白の化粧品で聴いたことあるのですが、同じものですか?

A13:ライブで回答済み


Q14:サリシンとアルブチンを混ぜるとアルブチンが同質の苦味を抑えるとおっしゃっていましたが、苦味は体に良くないような食べ物に含まれるのに、アルブチンによってサリシンをマスキングしてしまうのは適応度的には悪影響ではないのでしょうか?

A14:ライブで回答済み


Q15:日本では1種なのにマダガスカルでは100種類以上。どうしてと考えられているのでしょうか?環境厳しいから?競争があるから?どう考えられているのですか?

A15:ライブで回答済み

補足:マダガスカルが周囲の大陸から孤立して、島になったのは白亜紀後期で、現代までの約7000万年の間一度も大陸と陸続きになったことがありません。マダガスカルに暮らす哺乳類は大きく分けて4グループ(キツネザル、テンレック、齧歯類、フォッサの仲間)いますが、アフリカ大陸から祖先が浮島に乗ってやってきたと考えられています。そのため、マダガスカルに進出できた哺乳類は少なく、競争相手が少なかったため、キツネザルたちは、大陸では他の霊長類・動物が暮らしているような環境にも進出できたと思われます。これが、キツネザルたちが高い多様性を持っている一つの要因だと思われます。すでに絶滅してしまいましたが、かつては体重160kgにもなるゴリラぐらい大きなキツネザルも生息していました。


Q16:クロキツネザルたちが先祖返りせずに他のサル達と違う苦味の感じ方になったのはどうしてでしょうか。(彼らが棲んでいる環境や食べ物などがワオキツネザルとどうちがうか知りたいです^^)

A16:ライブで回答済み


Q17:ニホンザルは渋柿なども食べられると聞いたことがある気がするのですが、本当でしょうか?味覚と関係があるのでしょうか?

A17:ライブで回答済み


Q18:先生は、じっけんするときに、さるにあげるエサを味見しますか?

A18:ライブで回答済み


Q19:動物園なのでワオキツネザルに与える餌として、アルブチンやサリシンが含まれる代表的な食材は何ですか?

A19:ライブで回答済み


Q20:昆虫は普段はあげないのですか?

A20:ライブで回答済み


Q21:先ほど,WAOランドでは個体によってはニガウリを食べるワオキツネザルがいましたが,飼育下のキツネザルと,野生でのキツネザルで,味覚の違いを感じることはありますか?

A21:ライブで回答済み


Q22:ワオキツネザルはなぜマダガスカルの南の方にしかいないのですか?(小三の子供の質問です)

A22:ライブで回答済み


Q23:ヒトの方がサリシンやアルブチンに対する感度が高いということでしたが、これはヒトの苦味受容体の数や種類が多いということでしょうか?

A23:ライブで回答済み


Q24:加齢による味覚の変化はキツネザルにも起こるのでしょうか?

A24:ライブで回答済み


Zoom終了後の会場からの質問

Q:飼育下だと甘いものをあげると思いますが、影響は?

A:甘いものは好んで食べると思うので、太りすぎてしまう可能性も。ワオキツネザルは太りやすい傾向がある。