第2回 「テナガザルの“歌”を語る」

日時:2020年8月2日(日)13:30~14:20

講師:石田崇斗(日本モンキーセンター)、香田啓貴(京都大学霊長類研究所)


内容について、こちらから動画をご覧いただけます。


オンライン講座での質問に対する講師からの回答は以下のとおりです。


Q1:飼育係の方は日々テナガザルと接していて歌の違い(意味や目的など)を識別されることはありますか

A1:歌声から識別することは出来ませんが、歌い始めた状況によって識別することはできます。例えば観覧者が多く集まってきたときや、別のペアが歌った後に歌うとき=縄張りの主張。自然に発生したとき=日課のデュエットなどです。


Q2:アボを呼んでいましたが、テナガザルたちはどのくらい言葉、呼びかけを理解してくれているのでしょうか?また、モンキーセンターで気をつけていることはありますか?

A2:単語を理解しているのかはわかりませんが、担当者の声は識別していると思います。特定の動作などをしてもらいたいときに、声による指示は担当者による差が出てしまうので、笛やクリッカーなどを使用したトレーニングをおこないます。


Q3:シュートさんが呼んだらお父さんが降りてきましたが、言葉を理解しているのでしょうか?

A3:Q2の回答を参照ください。


Q4:フクロテナガザルの寿命と成熟までの期間を知りたいです。

A4:野生での寿命については多くは知られていません。しかし、類人猿の仲間は長寿であることは知られており、小型類人猿に分類されるテナガザルの仲間も大変長寿です。飼育上では、40歳を超えることも珍しくありません。また、歌を綺麗に歌い、群れから移出して、自分の群れを作ろうとし始めるのは6-8歳ぐらいであろうと考えられています。


Q5:フクロテナガザルの喉袋は、解剖学的にどの位置についているのか知りたいです。

人間と同じ様に声帯があり、肺との間にあるんでしょうか?

A5:まず、喉袋は喉頭嚢と呼ばれている器官で、喉頭の内部、声帯が位置する上あたりから、「管」の様な構造、広がりを持ち、外部の目視できる位置・構造として広がる器官です。人の喉仏のあたりを触りながら、「あー」と声を出すと、震えていることがわかりますが、これは声帯が振動している物理的な運動です。喉仏のあたりが喉頭となります。同様な構造が、テナガザルを含め霊長類や多くの哺乳類で共通しています。復路テナガザルの場合は、この喉頭に追加される様な構造として、喉頭嚢が存在します。その機能については、声を大きくする共鳴器としての役割があると言われていますが、実際のところや成立の進化的経緯についてはわかっていません。