猿蟹合戦をどう研究するか
猿蟹合戦をどう研究するか
昔話を扱うときは、バージョン違いがいくらでもあるので、どれに準拠するのかが重要になる。例えば「日本昔話集成」において「猿蟹合戦」のなかでも「蟹の仇討ち」に分類される話として、この「殺された親の腹の下から子蟹が生まれる」というパターンが紹介されている 。しかし地域のバリエーションとしてそのような描写がない事例もたくさんあるし、そもそも蟹が登場しなかったり、蟹が追加戦士の立ち位置になっていたりする例もあるようだ。このような状況の中で「猿蟹合戦のカニは何か」という問いは、何がこの話の原型なのか、あるいは最も広く共有されている猿蟹合戦のパターンはどれか、ということも同時に問うてくるのでので、かなりややこしいことになる。
一方「猿蟹合戦」ほど絵本や翻案作品が多い作品は珍しく、ほぼ一つのテーマからどのようなカニのイメージが産み出されるかについて探求するには、これほど良いテーマはない。甲殻類受容の学問でもある文化甲殻類学とはとても相性が良い。
ちなみに猿蟹合戦の絵本にはサワガニ派とアカテガニ派がある(※)。このあいだ調べた感じではアカテガニ派が優勢だったが、まだもう少し事例数を増やしたいところ。どっちかを考えるよりは、どっちと考える人がどんな表現を出してくるのか、のほうが一応の答えらしきものを出せて個人的には面白い。
※猿蟹合戦の絵本化においては、サワガニ・アカテガニ以前に圧倒的多数の「カニだとわかれば良いや派」が存在することも、看過すべきではない重要な事実である。