【全国生徒会大会2025 イベントレポート】
2025年3月25日・26日の2日間にわたり、実行委員会・(一社)生徒会活動支援協会(以下「支援協会」)の共催で、全国生徒会大会2025が開催された。
全国生徒会大会とは、日本全国の生徒会役員有志によって組織される実行委員会が主催する、生徒会活動に関する意見交換・討論を行う全国最大規模の交流会で、2013年から毎年継続開催されている。各学校の生徒会活動の活性化および、役員としてのスキル向上を目的としている。
本大会のコンセプトは「『生徒会的』思考の訓練場」。一般的な生徒会交流会では、話題が技術的なスキルの共有に留まりがちであり、生徒会活動をする上で必須である論理的思考力の涵養は、あまり関心が向けられていない。
全国生徒会大会は、2日間かけて班内で徹底的に対話し、合意形成に至るまでのプロセス・ノウハウにつき、深く思考を求める形式をとっている。その中で、生徒会という一種の政治機構を運営するにあたり、利害調役として役員に必要な素養、すなわち論理的思考力を養うことを可能としている。この構造を活かし、各校の生徒会に本質的な還元がなされるよう、企画全体が設計された。
本大会には、1都1道2府22県の96校から計230名(生徒・生徒会関係教員・実行委員合算)が参加した。参加者毎の属性は下表を参照されたい。
大会1日目は東洋大学白山キャンパスにて、2日目は国立オリンピック記念青少年総合センターにて実施された。
【大会コンセプトについて】
大会コンセプト:「『生徒会的』思考の訓練場」
政治機構としての側面を持つ生徒会――
政治とは「ある社会の対立や利害を調整して社会全体を統合するとともに、社会の意思決定を行い、これを実現する作用」(松村明監修,小学館国語辞典編集部編,小学館『大辞泉』,小学館,2012)と定義されます。
では、実際に自分たちが調整役に立った時、どのような形で場をまとめ上げ、全体の利益を最大化するでしょうか。 その思考を体系的にガイドしてくれるのが「論理」です。要するに、物事の本質を見失わず、獲得情報をいかに分析し、筋道の通った結論を出すか、という能力が、生徒会という民主主義的自治組織の幹部として、必要な素養となっているのです。特に近年、ルールメイキング等が活発になる中で、ステークホルダーの意見を集約し交渉事にあたる必要性は増しているほか、その能力は学術研究、就活、ビジネス、政治活動等、生徒会役員の卒業後も有用です。
本大会は「『生徒会的』思考の訓練場」と位置付けられ、立場も生活環境も経歴も異なる全国の生徒会役員が集まる刺激的な状況下で、チーム一丸となり、想定状況に対する立論として「最高の企画書」を作成するアウトプットコンテンツを通じ、リーダーシップ・情報整理能力・論理的思考能力の涵養を目指します。
(大会参加者配布資料より引用)
【企画一覧】
①実行委員会企画 −最高の企画書作成−
フェーズ1 情報収集
…班ごとの企画書作成に先立ち、ワールドカフェ形式で、複数校の参加者が混ざり合い、各テーブルのテーマに沿い情報交換を行うセッション
フェーズ2 立 論
…各班に課せられた課題への解決策を、フェーズ1で得た情報や各自の知見をもとに、企画書(上限:A4用紙2枚)に論理的にまとめるセッション
フェーズ3 推 敲
…フェーズ2で作成した企画書を、同一の課題に取り組む他4班と読みあい、論理構造や説得力等、改善点を見出すレビューセッション
②支援協会主催企画 ―「新しい生徒会」教員プログラム―
…今後の生徒会の可能性や社会的意義について、グループワークや、現職国会議員をはじめとする有識者による講演・質疑応答による対話を通じて、多角的に議論する企画
③支援協会主催企画 ―「新しい生徒会」の実現を考える―
…有識者4名による講演と、参加者間のグループワークを通じ、教員の立場から生徒会活動の活性化に向けた課題や方法について議論する企画
【1日目|3月25日】
フェーズ1:情報収集
大会初日の午後には、「最高の企画書作成」フェーズ1が実施された。27のテーマごとにブースが設けられ、参加者は自身の関心に応じたブースを3回ローテーションし、20分間ずつ、それぞれのテーマに関する自校での取り組みや、他校の状況、自分の意見等について、対話を行った。
この過程では普段おかれている環境の違いから、自校では「当たり前」と思っていたことが実はそうではないこと、一つの問題に対しても様々なアプローチがあることを知り、声をあげて驚く、そんな場面も見受けられた。
《テーマ一覧》
① 生徒会活動の「見える化」/② 学校全体の理想像・あり方/③ 地域との関わり方/④ 効果的なマニュアルの書き方/⑤ 制服・服装の規定について/⑥ 校則について/⑦ 「民主的」な意思決定のプロセスとは/⑧ 生徒会の存在意義/⑨ 生徒会実務の役割分担/⑩ 財務・予算の取り扱いについて/⑪ 広報の手法/⑫ 文化祭について/⑬ 後輩役員の確保・育成方法について/⑭ 学校史の保存・編纂について/⑮ 生徒会が取り扱う企画について(※文化祭を除く)/⑯ 生徒会の組織体系について/⑰ 学校と生徒会中央の関係性/⑱ 学校生活・生徒会活動とICT/⑲ 生徒会関係資料の書式と保存方法/⑳ 生活環境の向上に向けての取り組み/㉑ 生徒会活動の「限界」/㉒ 生徒会の社会貢献活動/㉓ より効率的な生徒会実務に向けて/㉔ 選挙システムについて/㉕ 生徒会役員が大事にすべきもの/㉖ 生徒会活動のモチベーションを向上させるには/㉗ 生徒会活動と人間関係について
フェーズ2:立論
フェーズ2では、班ごとに、架空の学校の生徒会で発生している特定の課題に対する、企画書・提案書作成を行うフェーズ2が行われた。班ごとに論点を整理し、実現可能性や説得力を重視した立案がなされた。
企画書の課題は6種類あり、各課題の詳細は下記より閲覧可能である。各課題では「エピソード」として、解決しなければならない課題等、「想定」として当該校の生徒会組織体制等が記載されている。
本大会では企画書の書式を「A4用紙2枚分」、内容については「立論(論拠)は3つにまとめること」と制限を加えた。論理的に情報を取捨選択し、説得をコンパクトにまとめる力を要求したためである。加えて、フェーズ2は2日間の会期全体を合算しても3時間しかないので、手際よくグループ内の意見をまとめ上げる力も求められる。
架空の学校の話題なので、普段生徒会活動を進める上でとらわれがちなステレオタイプ、あるいは自明性が通用しない世界で、いかに状況や対立する利害を客観的に整理し、納得できる解決策を提示できるか、様々なバックグラウンドをもった生徒会役員が一堂に集う、この全国生徒会大会ならではの視点で議論ができたようだ。いずれの班も大変熱のこもった議論が繰り広げられた。
支援協会主催企画 ―「新しい生徒会」教員プログラム―
実行委員会企画のフェーズ2と同時に、参加教員向けに、支援協会が25年3月に刊行した『「新しい生徒会」の教科書-学校を変え、社会を変えるためのヒントー』にもとづく講演やワークショップを行った。
詳細は支援協会運営「生徒会.jp」の記事を参照されたい。
夜間:宿泊・自由交流
和気あいあいとした雰囲気の夕食後、参加者は宿泊会場・2日目会場の国立オリンピック記念青少年総合センターへと移動し、ユニット毎に宿泊。就寝までの間、自由交流会場を設け、班・ユニット内での交流を深めた。
タイムスケジュール(1日目/3月25日)
12:00~ 開会式
12:30~ 実行委員会企画「最高の企画書作成」フェーズ1(情報収集)
14:10~ 休憩
14:25~ 実行委員会企画 「最高の企画書作成」フェーズ2(立論)
16:30~ 宿泊ガイダンス・写真撮影
17:00~ アンケート記入・夕食・自由交流
18:00~ 宿舎移動(各班順次)
〜20:00 移動完了
23:30 消灯時間
【2日目|3月26日】
アイスブレイク ー大会パンフレットからのクイズ大会-(協力:株式会社baton様)
朝食を済ませて迎えた大会2日目は、まずアイスブレイクとして、大会パンフレットを出題範囲とするクイズから始まった。
クイズ運営に用いたシステムは、本大会にご協賛をいただいた株式会社baton様が提供されている、「Quiz Pitcher」である。参加者はQRコードを読み込むことで、手元にあるスマートフォン等からクイズに参加可能だ。
大会パンフレットには本大会の企画内容のほか、参加校の情報(都道府県分布・生徒会の組織構成・活動内容・意見の集約方法・引継ぎ方法 etc.)、実行委員紹介等が記載されており、大会終了後も自校の生徒会活動改善に向けてご活用いただけるデータブックのような位置付けである。
この中から、「××高校が生徒総会で取り入れた方式」、「**高校の昭和時代より続く伝統的な引継ぎの方法」等、参加各校のユニークな取り組みをご紹介する形で4択問題を出題し、参加者全体に楽しみながら学べる時間をご提供した。
フェーズ2:立論
午前中の前半は前日に引き続き「最高の企画書作成」のフェーズ2が行われた。立案したものを企画書としてまとめあげ、考えをまとめた。結果的に提出期限が大幅に遅くなったものの、各班最後まで良質な討論が交わされていた。
フェーズ3:推敲
午前中の後半はフェーズ3(推敲)が行われた。同一の課題に取り組む他班とのピア・レビューを通じ、論理構造や説得力等、相互に改善点を学びあうセッションである。同じ課題であっても、アプローチ、企画書の書式、結論も多種多様。しかし枠にとらわれず、付箋に記載されたコメントは深層的かつ俯瞰的な批判的考察も多く見受けられた。新しい視点に触れることで、思考の射程はさらに広がったことだろう。
最後は他班からのコメントをもとに、更なる企画書のブラッシュアップに努めた。
なお、本フェーズで用いた企画書、およびコメントが記載された付箋は、大会終了後運営にてスキャンし、電子データで参加者全体へ共有した。自校内での企画等に活用されることを強く期待する。
⽀援協会主催企画 ―「新しい生徒会」の実現を考える―
昼食後、(一社)生徒会活動支援協会主催による企画「『新しい生徒会』の実現を考える」が実施された。今後目指すべき「新しい生徒会」の要素として、「生徒主導の校則を見直す仕組みづくり」等、4つのテーマにつき、実現課題や解決に関するグループワークを行ったほか、支援協会構成員や現職国会議員をはじめとする有識者の方による講演・質疑応答による対話を通じて、今後の生徒会の可能性や社会的意義について多角的な議論が交わされた。
閉会式
全日程終了後には閉会式が行われ、正副実行委員長および各部署長の挨拶、高橋亮平氏(生徒会活動支援協会 理事長)からの挨拶があった。最後に参加者全員での写真撮影が行われ、全国生徒会大会2025は幕を閉じた。
タイムスケジュール(2日目/3月26日)
7:30〜 朝食(オリンピックセンター内「カフェテリアふじ」)
9:00〜 アイスブレイク
9:30〜 実行委員会企画「最高の企画書作成」フェーズ2(立論)
10:40〜 実行委員会企画「最高の企画書作成」フェーズ3(推敲)
12:30〜 昼食
13:30〜 ⽣徒会活動⽀援協会主催企画「『新しい生徒会』の実現を考える」
15:30~ 閉会式・写真撮影
16:00 解散
【謝辞】
本大会の開催に際し、全国各地から足を運んでくださった参加者の皆様、ご協賛いただいた各社様、会場を提供してくださった東洋大学様ならびに国立オリンピック記念青少年総合センター様、(一社)生徒会活動支援協会等、関係各位に、実行委員一同心より感謝申し上げる。
本大会が、全国の生徒会にとって新たな視点と活力をもたらす場となったことを願うとともに、参加校における生徒会活動が今後一層豊かなものになることを祈ってやまない。
文…水政 文杜(全国生徒会大会2025実行委員会広報部長)・近藤源樹(同実行委員会副実行委員長)