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2018.12末より機械式ミシンの修理をはじめる。はずみ車を回すと直ぐに何かが噛み込んで回らなくなる故障で、ミシン上下にある軸を連結するタイミングプーリーのプラスティック製の歯が破断してタイミングベルトの歯にうまく噛まない状態であった。
この修理記録は、分解して組み立てる際に手順を誤らないようPCに書き留めた備忘録を元に構成したものです。
プーリーは20歯 L037の汎用品が合うのでモノタロウで片山チエンのK20XL037BF及び幅9.5mm 山間0.2" 95歯のタイミングベルト三ツ星190XL037を手配。同時に後部天びん・針駆動カムロールピンを抜くためにピンポンチE-8 2.5mm 3.0mm 4.0mm 4.5mm 6.0mm 8.0mmも同時に発注する。
軸径は約12.8mm 1/.2インチであるためアリエクスプレスよりインチのドリルビット30本組も手配する。ピンポンチは現用品がくたびれてきたためこの機会に買い換え、インチドリルは以前より買いたかったもので、この工具類が余分な出費となった。
モノタロウ発注¥3.491 アリババ発注$23.99 ¥2.620 合計6.111円が修理のための費用
上部軸は筐体の前後フランジを貫通しているため、プーリーを抜き出すためには軸をプーリーの抜ける幅だけ後部に抜き出してプーリーとベルトを外すか、前部に完全に抜き出して交換するかだが、前部に抜くと軸を貫通しているカム・ウォーム・アダプター及び後部の天びん駆動カムまで全て抜き出さなければならない。このため最初はアダプタ・ウォームの止めネジを緩めてずらし、はずみ車を取り外して軸を後部に抜き出すことを考える。
上写真右端に見えるのがはずみ車。当初は通し軸にセットで固定されているたけだと思ったのだが、さらにその下にアダプタがついていて、こちらは通し軸に目くらピンを打ち込んで滑らないように固定されている。
はずみ車を固定するアダプタは盲ピンを叩き込んで固定されているため、ドリルでアダプタにかかっている盲ピンを削り落として無理やり引き抜く。最初から前途多難。
なんとかはずみ車を取り外し、後部のパーツをバラしに掛かる。後部カムの前にある部品を皆取り外さないとカム軸を必要なだけ引き出せない。
1.針ロットピンの止めネジを外す。逆ネジのため要注意
2.針横行アームの止めピンを抜くため側面のセットを緩め止めピンを引き抜く。アーム抜けドメのスナップリングも外し、溝にドライバーを掛けて梃子で抜くと良い。横行アームのロッドは内部でカム側のスリットに刺さっている。
後部カムを取り外すため、まず針上下軸の取外し
3.針軸ガイドを前方に回転させ、後部カムを左右に動かしていると針ロットのシリンダーから針軸側のピストンが抜けて、針ガイド軸を上にあげることができる。
針ガイド軸の取外し
針ガイド軸の下部が筐体内にスライドしている部分にはスプリングが入っているので要注意。
針ガイド軸上部のスナップリングを外すとガイド軸は簡単に取外すことができる。
布押え軸の取り外し
布押え軸は、上部に筐体に固定されて外すことが無理な押圧調整ダイアルがあり、ダイアル軸の内部を通して抑え軸が下まで通してある。軸の下部には釜があって下には抜き出せないため、上に引き抜く以外ないのだが、スプリングの上部にアルミの遊動環があり、軸に切られた溝に沿ってスライドするため、溝が切れる位置より下には下がらない。
このため、布押えガイドセットビスを緩めて押え軸を目一杯下まで下げてやると、筐体上部に固定された調整ダイヤルの下部との間に僅かな隙間ができるので、その隙間から遊動環を取外す。
遊動環が外れると、軸は調整ダイアルのシャフトを通して上に引抜くことができる。
取り外した後部部品 針駆動軸ピストンはセットで軸に固定されるがセット中心の周囲に首振り運動できる。
上部貫通軸ウォームギヤの移動
後部の部品を取外す当初の目的は、上部の貫通軸を後方にずらす際、後部の天びん駆動カムが部品と干渉するのを避けるためだった。しかし貫通軸のウォームギャを前方にスライドさせて軸を後方にズラそうとしたのだが、ウォームが僅かの距離しか動かずロック状態で固着してしまう。
当初は軸の傷程度に考えて耐水ペーパーで軸研磨したのだか一向にはかどらない。#800 #400 #240 #180まで順次下げて2日以上研磨するがウォームを前方にずらすと3cm程先で確実に止まってしまう。
研磨量からみて、軸が0.1mm以上は痩せていると思われるのでここに至って軸径が前後で0.2mm以上差があると考えないわけにゆかなくなった。
軸が深くてノギスの口が届かず軸径を正確に測れないことが判断を狂わせた要因の一つだが、貫通軸を前後でテーパーにするなどとう考えても不合理であり、想像さえしなかったことだ。
結局後部部品をすべて外しプログラム用のカム駆動ウオームを後方にずらせて上部軸をはずみ車側の前部に引き抜く以外手だてがないと考え至る。
後部 天びん駆動カム取り外し
天びん駆動カムは4mmのロールピンで固定されている。当初これを抜く目的でピンポンチを揃えたのが役立った。外す前にカムと軸に合いマークを入れ4mmのピンポンチでカムの厚みのある方の穴からロールピンをたたき抜き出す。 (打ち込む際もこの位置から挿入して打ち込む)
カムが外れると、貫通軸は前方にわけなく抜ける。軸に固定されているストッパー代わりのアダプタ、ウォーム、下部布送り板駆動カム及びタイミングプーリーのセットビスを外して、軸を前方に抜く。
後部天びんカム、下部布送り板駆動カム及びタイミングプーリーの位置は全て連動しているから合いがあり、当初はその合い位置を記録しておいたが実際にはミシンの動作は極めて微妙で、実際の動きを見ながら最適になるように合わせる以外ないことがわかった。
タイミングプーリーの穴加工
プーリー軸の穴径は12.85mm 当初1/2インチと見て中華通販よりインチサイズのドリルビットのセットを買入れる。30本組最大径1/2インチで1月6日に届いたため早速穴加工をする。
新品のプーリーの下穴は8mmのため、手持ちのドリルで12.5mm前後まで広げたが、細かくサイズアップしすぎて、0.2mm程も偏心した。多分10mm・12.7mmと二段階ほどで開けたほうが良かったかもしれない。
ただし、偏心した分はヤスリでこまめに削り込んで最終的には0.1mm以下の偏芯に抑え込めたと思うので良しとすべし。
最後に届いた1/2インチのドリルで穴を広げるが、軸径はまだ0.05mm程度太い様子で、ヤスリとルーター及びペーパーを使って整形する。
このレベルでは、僅かに削り込んだだけでも、ゴソゴソになるので慎重に削り込み、ほほ正確な軸径にまで整形できた。後はセットビスのタップを立てて完成。セットは4mmと3mmの二本とする。
軸の組み込みで特に問題となる点はなかったが、プーリー、布送りカム、針上下カムの同調は当初書き留めてあった位置で固定したものの、実際には動きを見て調整しなければ使い物にならない。調整法は後述する。
軸の固定位置は後部カムの面位置で決め、アダプタでメタル軸を挟み込んで固定する。遊びがない程度に固定して軸が軽く回れば問題ない。後部カムの位置決めする際は、天びんの動きを規制するコンロットの軸受と筐体側の軸もセットするので、これらの部品は十分清掃して組み込む。
プーリーとともにタイミングベルトも交換。下部軸のタイミングプーリーは下部軸の端面についているので架替えは楽だが、この結果テンションガイドを目一杯緩めても張りがきつすぎるため、ガイドのサイドに鉄片を溶接してガイドの案内溝を広げ適正な張力とする。
布押え軸取り付け
すべての部品をオイルで清掃の後組み立て。軸に部品を通し、軸を最下部まで下げて押し圧調整用の遊動環を装入す。布押えガイドの固定位置は、布押えを下げた位置で適度に圧の掛かるところで固定した。後からでもいかようにも調整可能で特に問題ない。
針駆動軸ガイドの取り付け
針駆動軸ピストン部は、針上下位置調整セットを中心に首振り運動をするため、可動部をペネトンで洗浄しゴミを除去する。各部品のピストン、シリンダ部も十分に洗浄清掃してから組み込む。
針駆動軸ガイドの下部には、針横行用のアームが偏芯ピンによって固定される。偏芯ピンの位置調整は、全てセットし終わった後、本体前方上部にある針位置調整ダイヤルをMにした状態で、針位置が布押え板の中心線と一致するように合わせれば良い。
後部針・天びん駆動カムの回転位置と、針位置の合いは針位置に対して2ケ所のカム位置が有るが、どちらでも同じで針と天びんの上下運動は同調するようだ。
針駆動軸がついたら、はずみ車を回して、布送り板駆動カムの位置調整を行う。大雑把にははずみ車を回して糸送りアームが最上部に来る辺りに止め、カムのセットビスが軸の上部に来るように仮止めする。後は布送り板の動きを見ながら針位置と、布送り板正しく同調する位置にカム位置を調整してセットを
布送り板の動きは、針が布に刺さっている間は、板が沈んだ位置にあって布を送らず、針が上がった位置に来たときに、送り板も上昇して布送り動作するようにカム位置を調整する。
針が抜けきらないうちに布の移動が始まると、針に引っかかって布送りが阻害されるので、布の厚みがあっても針が抜けきってから送り動作をさせねばならない。
釜の剣先と針の同調
垂直回転釜では釜の剣先は針が一往復上下する間に2回転する。ミシンのはずみ車と釜の回転方向は、どちらも同じで反時計方向となる。はずみ車の一回転により天びん・針駆動カムも一回転するから、はずみ車一回転で針一往復、釜は2回転する。
まず針位置が最下点から上昇に転じ、針の刳り部分が剣先の回転位置と一致する位置で針を停止させる。この時筐体に対するはずみ車位置に合いマークし、このエグリ部分に貼りの剣先が通過するよう釜位置を調整する。
釜の剣先と針の動き
針位置が最下点から上昇に転じ、針の刳り部分が剣先の回転位置と一致する位置に来た時、剣先がえぐり部分に回転してきて糸を引っ掛けて、ボビンの有る内釜の周りを一周して、下糸を引っ掛けて引き上げる。
内釜は前面のストッパーで回転しないように止められていて、外釜に彫られた溝の円周をスライドして、針穴の有る面が常に上になる。
内釜はスライド溝の一部に切り欠きがあり、剣先に引っ掛けられた糸がこの切り欠き部分まで回転してくると切り欠きの中に落ち込み、釜の回転と共にボビンを一周して下糸をくぐるようになる。
下糸を引っ掛けてボビンを一周した上糸は、ボビンストッパーと内釜との間の隙間を抜けて、布面に引き上げられる。ここでストッパーと内釜の間に、糸が自由に通過するだけのスペースがないと、糸がストッパーに引っかかってしまうので注意がいる。
以上で今回のミシン修理はひとまず終了。上糸と下糸の張り調整などは実際に糸をかけてそれぞれの糸で調整するので、プーリー交換に伴う機械的な整備、調整は以上でまずは完成とする。