神々の扱う、物理法則などを無視した非自然的な技法のことを魔法と呼ぶ。魔法は神々に向けてデザインされた技法であり、人間がそのまま行使することはできない。
しかし神々が扱う魔法を独自に分析、発展させ、その力の一部を扱うことができるようになった人類がいた。人々は呪物を用いて人が使う魔法を「魔術」と呼び、それを扱う人類のことを「魔術師」と呼ぶようになった。
魔術師はその技術を持ってこれまで神々と対峙し、時には交渉までも果たして来た。しかし現代においては一般的な倫理観から乖離した存在であるため、数を減らし身を潜めている。彼らの多くは基本的には単独で活動しているが、中には小さなコミュニティを築いたり、子孫にその技術を受け継がせる者たちもいる。
系統魔術の条件
数百年単位に渡り維持されている
知識だけでなく、その感覚やシステムも含めて完全な状態で保存されている
神と直接対峙し、交渉することができる(あるいはできた)
系統魔術の多くは古代に神によって直接技術を授けられた場合がほとんどであり、現在新たな系統魔術が生まれる可能性はほぼないとされる。一方で現代社会においては魔術そのものが秘匿されやすいため、ここに記載されている系統が全てとは限らない。
系統魔術と異なり、歴史の浅いものや個々人の裁量によって得た魔術をここでは個魔術と呼称する。
ピンキリが存在し、その能力や知識も使用者によってまちまちである。また、寿命を延ばし数千年単位で修行を積むことのある系統魔術師と比べると基本レベルは低い。脳と脊髄を使う杖の作成方法すら知らない場合がほとんどである。
しかしきちんと魔術として扱えるのであれば、現代社会においては充分に強力な力を発揮することができる上、定命であるならばこちらを極めた方が最終的な能力は系統魔術を極めるよりも高くなる。
神として目覚めようとしたものの、何らかの原因によって神になり損なった者を半神と呼ぶ。半神は神々の知識に一度触れているため、魔術師をはるかに凌ぐ力を持つことが多く、熟練の系統魔術師すらねじ伏せる。彼らがなぜなり損なったのかは、人間としての意思が神々に抗ったから、未熟な状態で孵化してしまったから、そもそも奇形だったなどの様々な説が唱えられている。
一方で神になりかかっているため、その思考や感覚は人間的なそれを逸脱している場合が多く、また神の影響をどの程度受けたかは半神によって違うため、社会・コミュニティを形成しにくいという特性を持つ。さらに神からの干渉が激しく、神々の世界へ強制的に連行される場合もある。
魔術や世界の真理について知る人間は少ない。以下は一般的な情報レベル。
何も知らない。神がいるのか、そうでないのかもわからない平和な一般人。一番幸せ。一番母数が多い。
ファンタジー現象に遭遇してしまった人たち。常識が一度崩れてしまうので、ここで精神を病んでしまう事も。でもその方がまだマシかもしれない。
それぞれのやり方で魔術のやり方を覚えた者たち。魔術の素材が人間である事は知らないが、なんだかんだ自分を含めて無意識的に人を材料にしている。
倫理的な部分で悩むことも多いが、真理からは遠い者が多いため、最も魔術の恩恵を受けやすい。
魔術の真理を体系的に学んだ者たち。組織あるいは師弟関係の中で魔術の知識を共有し深めているため、個魔術師より力を持つ場合が多い。精神と寿命を一致させることができる術を持っている者も多く、理論上は永遠に生きられる。
しかし大体は自分が行なっていることに耐えられなくなったり、狂気に陥って仲間に処分されるため、本来の寿命より早逝する。
系統魔術師として人の寿命を超え、身内への情愛を断ち切り続けてなお人類の尊厳のために戦い続けた者。最早そう易々と死ぬことはないが、それは同時に自分の命が自分だけのものでなくなっている状態である。彼ら一人が命を落とすだけでも。人類の戦力は大幅に削れてしまうのだから。
真理に最も近く、神と対峙した経験もある彼らは、ともすると死ぬ機会を失ったと捉えることもできるかもしれない。
人の身で神になりかかった者達。どんな魔術師も、半神に力技で勝つことはできない。それだけ「思い出してしまった」彼らは圧倒的な力を持つ。
しかし彼らはいわば未熟児の状態で割れてしまった卵、来世を持たず、神になっても神にはなりきれない。そして、人に戻ることもできない。今を変える代わりに、未来を失った者達である。